<W解説>来年5月に韓国・釜山で国際観艦式を開催=「旭日旗論争」再燃の懸念
<W解説>来年5月に韓国・釜山で国際観艦式を開催=「旭日旗論争」再燃の懸念
韓国海軍が来年5月に南部のプサン(釜山)で国際観艦式を開催する見通しとなり、韓国の聯合ニュースは「自衛艦旗である旭日旗を掲げた日本の海上自衛隊の艦艇も参加するものとみられる」と伝えた。韓国では、旭日旗に関して「日本の侵略を受けた韓国などに歴史の傷を想起させる明白な政治的象徴」との主張があり、嫌悪感を抱く人もいる。2018年に南部のチェジュ(済州)で開催された国際観艦式の際は、韓国側は日本の海上自衛隊を招待したが、旭日旗である自衛艦旗の掲揚自粛を要請。海自はこれを受け入れず、結局、参加を取りやめた。来年5月の国際観艦式でも、この問題が再燃することになるのか。

観艦式は、国家元首が自国の艦隊を観閲する行事で、隊員の士気を高めることに加え、国際親善や防衛交流の促進などを目的に開かれている。聯合ニュースなど韓国メディアによると、韓国海軍は来年5月、韓国海軍創設80年に合わせ、釜山で国際観艦式を開く予定で、来年度(1~12月)の国防予算案には、国際観艦式の関連予算約40億ウォン(約4億3500万円)を計上した。

韓国海軍が国際観艦式を開催するのは、2018年に済州で開かれて以来、7年ぶり。観艦式は友好国などを招待して開かれ、同年の観艦式に当時のムン・ジェイン(文在寅)政権は日本の海上自衛隊も招待。しかし、前述のように、参加の際は海自の艦船に旭日旗の自衛艦旗を掲げないよう要請した。国連海洋法条約は「軍艦」に対し、所属を示す「外部標識」の掲揚を求めている。海自艦にとっては自衛艦旗が外部標識で、自衛隊法などは航海中、自衛艦旗を艦尾に掲げることを義務付けている。韓国側からの要請に、自衛隊制服組トップの当時の統合幕僚長は「海上自衛官にとって自衛艦旗は誇りだ。降ろして行く(参加する)ことは絶対にない」と述べた。結局、日韓双方の主張に折り合いがつかず、日本側は海自艦艇の派遣を取りやめた。

2022年11月に海自が相模湾で開催した国際観艦式の際、海自は事前に韓国に対して招待状を送ったが、当時の文政権は参加するか否かの結論を出せなかった。当時、日韓関係が冷え込んでいたことに加え、韓国の将兵が旭日旗の自衛隊旗に向かって敬礼することへの懸念があったためだ。日本側が招待状を送付した当時の文政権から、同年5月、日韓関係改善に意欲を示すユン・ソギョル(尹錫悦)政権に変わり、韓国軍は熟慮の末、参加を表明。海軍の軍事支援艦「昭陽」を相模湾に送った。「昭陽」の乗組員は、視察に訪れた岸田文雄首相が乗った自衛隊の護衛艦「いずも」に敬礼した。

昨年5月に韓国南部の済州島沖で行われた韓国政府主催の多国間訓練の際には、海上自衛隊の護衛艦が旭日旗の自衛艦旗を掲げて南部の釜山港に入港した。前述のように、自衛隊を含む軍艦艇は国籍を示す「外部標識」を掲示する必要があるという国際ルールがあり、2018年の国際観艦式の時と打って変わって、韓国国防部(部は省に相当)は「国際慣例に従う」として容認。入港が実現したことから、日本では、韓国による自衛艦旗への対応が、国際ルールに沿った形に戻ったと解釈された。

韓国海軍は来年5月、国際観艦式を釜山で行う予定で、日本のほか、米国やオーストラリア、中国、カナダ、英国、インド、インドネシア、シンガポールなど数十カ国を招待する見通しだが、国防部は「どの国が参加するかは決まっていない」としている。

前述のように、2018年の済州での国際観艦式には、自衛艦旗の掲揚をめぐって日韓で折り合いがつかず、海自が参加を見取りやめた。聯合ニュースは、来年の国際観艦式をめぐって「自衛艦旗の掲揚が再び問題になる可能性がある」と指摘する一方、「ただ、韓米日および韓日の安全保障協力を重視してきた尹錫悦政権は、旭日旗をめぐる論争が起きても、自衛艦旗を掲げた日本艦艇の参加を受け入れるものとみられる」と予想。「前政権の時のように、自衛艦旗の掲揚が韓日の安保協力の障害にならないようにするのが現政権の方針だという」と伝えた。
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