オンラインの波に新型コロナウイルスまで重なり次々に閉店する町内書店 = 韓国(画像提供:wowkorea)
オンラインの波に新型コロナウイルスまで重なり次々に閉店する町内書店 = 韓国(画像提供:wowkorea)
「図書流通市場がネット書店に移って久しく、リアル書店は、ネット書店に比べ高い価格で本を仕入れています。変わった形の図書流通構造に新型コロナウイルスまで重なり、賃貸料さえ手に負えないレベルです」ソウル・ドボン(道峰)区の町内で書店を運営するキム代表はこのような思いを口にした。

 町内の書店が崩壊している。読書人口の持続的な減少、大型書店とネット書店による顧客離れなど、構造的な要因に加え、最近は新型コロナウイルスの長期化により、なんとか持ち堪えていたが閉店したり、首の皮一枚で営業しているところもある。町内の書店の活性化に向けた政策当局の支援もやはり、現実に合わない机上の空論のような行政で物議を醸しており、二重の足かせになっているという点が挙がっている。

構造的な要因に新型コロナウイルスまで加わり、瀕死状態

 昨年9月、ソウル・ウンピョン(恩平)区で25年間営業を続けてきた、プルガン文庫が閉店し、業界に衝撃を与えた。関係者は「力をふりしぼりなんとか頑張ろうと思ったが難しかった。大型書店がこの地域に出店したことで地域書店の置かれている状況はさらに悪化し、形だけの図書定価制では傾いた図書流通構造を立て直せなかった」と説明した。プルガン文庫が地域文化の拠点としての役割を果たしていただけに、地域住民の落胆も大きかった。住民たちは区役所にプルガン文庫の廃業を防いでほしいと自発的に訴えたり、閉店を迎えた日には常連客たちが「子供の頃の思い出が歴史の中に消える」と、書店の前に長い列を作り、別れを惜しんだ。

 一部の書店は負債により廃業さえもできず、首の皮一枚で営業しているケースも少なくない。ヘファドン(恵化洞)の本屋イウムは新型コロナウイルス以後、売り上げが半分以下と急減した。賃貸料や人件費など、毎月の固定費用だけでも450万ウォン(日本円でおよそ45万円)になるが、これすらままならないのが現状だ。イウムのチョ・ジンソク代表は「マイナスが続き、廃業も考えたが、負債を一括で返済する必要があり、仕方なく賃貸料がもっと安い町に移転した。昨年のオンライン書店の売り上げはむしろ増えたと言うが、二極化はさらに深刻になっているようだ」と話した。

 韓国書店組合連合会が全国の自治体別に町の書店数を分析した結果、2003年に547店だったソウル地域の書店数は、19年には324店と40.8%減少した。同期間、全国の書店が2247店から1976店へと12.1%減少したことを見れば、ソウル地域の減少速度は全国平均の3倍を超えているわけだ。書店組合連合会は今年発表する「2021年統計調査」ではこうした傾向がさらに見てとれると予測している。関係者は「ここ2年間は新型コロナウイルスによりオンライン市場が成長し、クーパンまで図書市場に進出し、リアル書店はさらに難しくなっている」と説明した。

政府の政策支援は「見掛け倒し」

 町の本屋が次々と閉店したことを受け、ソウル市は2016年、地方自治体として初めて「地域書店活性化に関する条例」を制定した。書店の起業相談、コンサルティング、教育、広報などを支援するだけでなく、公共機関が地域書店の図書を優先購入するよう取り組んでいる。

 しかし、条例制定から6年が経過しているが、実効性がないという点が挙がっている。年間の関連予算がおよそ3億ウォン(日本円でおよそ3000万円)とかなり不足しているのはもちろん、他の小商工人との公平性を保つため、賃貸料や人件費などの現実的な支援は難しいからだ。チョンノ(鐘路)店組合のチョ・ジュヒョン組合長は「町の書店活性化事業といっても、広報イベントや作家を招いたイベントに数十万ウォン(日本円でおよそ数万円)の支援にすぎない」と語った。匿名の町内書店代表は「公共の図書館が本を仕入れる時、無料配送は当たり前で、10%割引に5%の積立まで要求する場合も多く、実際に残るものはほとんどない」と打ち明けた。

 これについて、ソウル市の関係者は「結局は、町の書店も小商工人のひとつなので特別に支援することは難しく、限界がある」と説明した。

 本と社会研究所ペク・ウォングン代表は「地域書店は地域住民にとって文化の中心として、確かな役割があるが、コロナ禍などで崖っぷちに立たされている。賃貸料や人件費などに対する直接的な支援は難しくても、町内書店活性化のための多様なプログラムに現実的な支援を行い、町内書店を助ける必要がある」と述べた。
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