映画の終盤部でシネ(チョン・ドヨン)が髪を切るシーン。人物を照らしたカメラは徐々に床に移り、一筋の光を凝視する。それは我々が普段、何も感じないまま過ごす風景だ。カーテンの間に映る朝の光ほどには、印象派の画家たちの絵の中に剥製された光ほどには美しくない。だが見方を変えれば、日常に隠れていて捕らえることの難しい、人生の希望かもしれない。フランス・カンヌのリュミエール大劇場で24日(現地時間)に試写会が行われた『シークレット・サンシャイン』。一言で定義しづらい作品だ。同日、国内でも公開されたこの映画は、女性が人生の傷を癒していく、恋愛下手な男女の風変わりなラブストーリーだ。それだけでなく、宗教的な“救い”と“許し”について問いかける映画でもある。イ・チャンドン監督は、意図的に途中途中のつなぎ目を曖昧にし、結末を問いかけたままにした。ストーリーの指向点とメッセージを親切に伝えない。そのため、映画を見たあとポイントをつける部分が各自異なるであろう。

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そう容易く捕らえられないストーリー、これが『シークレット・サンシャイン』(原題:密陽)の魅力だ。平凡な中に秘密を隠した映画タイトルもこれに通じる。まさに秘密の光(Secret Sunshine)の“密陽”が持つ姿だ。

映画は密陽(ミリャン)に来たシネが、子供を誘拐された後に経験する様々な心理的変化を追いかけていく。シネは元夫の故郷であるこの地で新しい人生を始めようとするが、現実はそううまくは行かない。1人で子供を育てる女性に冷たい密陽は、大韓民国の縮小版のような場所だ。子供を失ったシネは、希望と絶望、救いと裏切り、自虐と願望といった両極を行き来しながら苦しむ。カーセンターの社長ジョンチャン(ソン・ガンホ)はシネのそばについているうちに、その力に吸い込まれていく。

映画に様々な事件が登場し、主人公の心理は揺れ動くが、全般的なトーンは静寂だ。監督はロングテイクを多く使用し、BGMを極力減らし、映画の流れを制御した。様々な意味と事件が混在した空間として、“現実”を見せることに力を注いだためだ。これはチョン・ドヨンの迫真の演技と鮮明に対比されながら、よりリアリティ溢れるドラマになった。そのため映画は、日常をそのまま表してスクリーンに移したかのように現実的だ。

『シークレット・サンシャイン』は公開前から多くの話題を集めた。『オアシス』以降、4年ぶりに現場に戻ってきたイ・チャンドン監督の新作であり、チョン・ドヨン、ソン・ガンホという2人のトップスターの出演で期待を集めた。さらに<第60回カンヌ国際映画祭>の本選に招待されその成果に注目が集まった。チョン・ドヨンの演技に好評が続いている。


<b>“女優”チョン・ドヨンとは?</b>
チョン・ドヨンを“カンヌの女王”にさせた『シークレット・サンシャイン』は、彼女が出演する10作目の作品だ。映画ごとに性質がまったく異なる配役をうまく演じこなしたことから、ついたあだ名は“八色鳥”。彼女が最初の“色”を観客に見せたのは、ハン・ソッキュと共演した『接続』(1997年)だ。1990年、化粧品モデルとしてデビューした後、ドラマ『われらの天国』『総合病院』などの出演を経て、女優としての可能性を見せたのは映画だった。彼女は『接続』で<百想芸術大賞><青龍映画賞><韓国映画評論家協会賞>などの新人賞を総なめにした。またパク・シニャンと共演した『約束』(1998年)の興行的な成功によって、さらにその地位を固めていった。

映画の中で彼女は、計り知れないほどの変身を繰り返した。イ・ビョンホンと共演した『我が心のオルガン』(1999年)では純朴な田舎の娘に、チェ・ミンシクと夫婦で出演した『ハッピーエンド』(1999年)では、不倫をする型破りなキャラクターを熱演した。ペ・ヨンジュン、イ・ミスクと共演した『スキャンダル』(2003年)では、相対的にキャラクターが弱いスク夫人役を好演し、全体的な比重をうまく合わせたという評価を得た。

映画での彼女の動向はまだ止まらない。1人2役に挑戦した映画『初恋のアルバム~人魚姫のいた島~』(2004年)では、母親と娘の役で20年という歳月を行き来しながら客席を映画に引き込み、翌年公開された『ユア・マイ・サンシャイン』(2005年)を通じては、改めて彼女の価値を再発見したという評価を得た。HIVに感染した女性の純粋なラブストーリーは、純愛映画最多の320万人を劇場に呼び集め、チョン・ドヨンのパワーを見せつけた。

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