<W解説>韓国人窃盗団に盗まれた対馬の仏像の所有権めぐる控訴審、注目される来月の判決(画像提供:wowkorea)
<W解説>韓国人窃盗団に盗まれた対馬の仏像の所有権めぐる控訴審、注目される来月の判決(画像提供:wowkorea)
韓国人窃盗団が2012年に長崎県対馬市の観音寺から盗んだ仏像を保管する韓国政府に対し、韓国中部のチュンチョンナムド(忠清南道)ソサン(瑞山)市のプソク(浮石)寺が所有権を主張して引き渡しを求めた訴訟の控訴審判決公判が来月1日に開かれる。判決公判を前に、浮石寺側は25日、仏像を同寺に引き渡すよう命じた一審判決を支持して、検察の控訴を棄却するよう裁判所に要請した。

観音寺が所蔵していた長崎県の指定有形文化財「観世音菩薩坐像(かんぜおんぼさつざぞう)」は2012年10月、韓国人窃盗団によって盗まれた。翌2013年に窃盗団が韓国警察に逮捕され、像は押収されたが、現在も日本に戻ってきておらず、中部テジョン(大田)市にある国立文化財研究所に保管されている。仏像の中からは「1330年ころ、ソジュ(瑞州)にある寺院に奉安するためにこの仏像を製作した」という内容が記録された文書が発見された。瑞州は瑞山の高麗時代の名称。瑞山に位置する浮石寺はこの記録文書を根拠に「像はもともと自分たちのもので、日本に略奪された」と主張。同寺は2016年に韓国政府を相手取って、仏像の日本への返還差し止めを求める訴訟を起こした。同寺の提訴は、仏像を日本に返す方向で動いていた韓国政府にとっては寝耳に水のことだった。

韓国の裁判所は、一審で仏像の中から見つかった前述の記録文書の内容と、1330年以降、5回にわたって倭寇(日本の海賊)が、瑞山地域に侵入したとする高麗史の記録などから、仏像が略奪などによって浮石寺から持ち出されたと判断。2017年、「仏像は浮石寺の所有と十分に推定できる」として、仏像の同寺への引き渡しを命じた。

一審の判決には当時、韓国の専門家などからも疑問の声が上がった。対馬にある朝鮮半島仏像を研究してきた韓国教員大学の故チョン・ヨンホ名誉教授は、一審判決が出た2017年に韓国紙ハンギョレ新聞に寄稿。チョン名誉教授は「仏像が略奪品だとしても、それをまた別の略奪(韓国人窃盗団による窃盗)というやり方で返してもらうことは正当化できない」とし、「日本が浮石寺から略奪したという直接的な証拠もない」と指摘した。

国連教育科学文化機関(ユネスコ)が1972年に定めた文化財不法輸出等禁止条約では、加盟国で条約の効力が発生した後に盗まれた文化財は返還することになっている。韓国は1983年に、日本は2002年にそれぞれ批准(ひじゅん)している。

そのため、仏像が倭寇による略奪によって日本に渡ったか否かということとは関係なく、仏像は条約批准後に韓国窃盗団によって盗まれたものであることから、条約に従ってまずは観音寺に返還されるべきだが、観世音菩薩坐像をめぐっては条約が守られていない。一審判決後、韓国政府は仏像と浮石寺との関係が十分に証明されていないとして控訴し、大田市の大田高裁で2審の審理が続けられてきた。

昨年6月には、観音寺の住職が「補助参加人」として裁判に初めて出席した。韓国の民事訴訟法第71条は、利害関係がある第三者が、一方の当事者を支援するために訴訟に参加できることを規定している。韓国政府は2020年12月、外交ルートを通じて観音寺に裁判への参加を促す書類を送付。観音寺は一昨年11月、韓国政府の参考人として出廷する意向を伝えていた。裁判に出席した住職は「仏像は盗まれて違法に韓国に持ち込まれたという本質に立ち返るべきだ」と主張。「既に10年という月日が流れている。一日も早く、われわれの手元に戻ってくることを強く望んでいる」と訴えた。

2審は先月14日、結審し、来月1日に判決が言い渡される。これを前に、浮石寺側は25日までに、裁判所に対し「仏像を1日も早く浮石寺に奉安できるよう、控訴を棄却してほしい」として、一審判決を支持し、検察の控訴を棄却するよう要請した。

来月1日の判決が注目される。

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