<W解説>「マンガ大国」日本に荒波、韓国発「ウェブトゥーン」の急成長(画像提供:wowkorea)
<W解説>「マンガ大国」日本に荒波、韓国発「ウェブトゥーン」の急成長(画像提供:wowkorea)
韓国紙の中央日報は今月12日、「日本のマンガ産業がデジタル時代に合わせて登場した韓国のウェブトゥーンに遮られてその輝きを失っている」とする英国の時事週刊誌「エコノミスト」の記事を紹介した。韓国生まれのデジタルマンガ「ウェブトゥーン」は今や韓国はもとより、日本を含む世界で人気を博している。

 中央日報によると、10日付のエコノミストは「韓国ウェブトゥーンに遮られる日本のマンガ」と題する記事を掲載。それによると、昨年、マンガ出版市場の規模は2650億円で2.3%減となった一方、世界のウェブトゥーン市場の規模は既に37億ドル(約5070億円)に達し、2030年には56億ドル規模に成長する見通しだという。

 ウェブトゥーンは韓国生まれの縦スクロールのデジタルマンガで、ネットに掲載されているという意味の「Web」と、漫画「Cartoon」を組み合わせた造語だ。Webでの掲載という特性を生かして、作品は縦スクロール、全編カラーであることが特徴。コメディーやラブストーリー、ファンタジーなど、さまざまなジャンルの作品がある。2000年代初めに登場し、スマホやタブレット端末の普及により、今や韓国のみならず、日本や米国など海外でも多くの作品が翻訳され、人気を集めている。

 また、ウェブトゥーンはマンガ家の育成にも変化をもたらした。それまで、マンガ家は出版社のマンガ雑誌や、著名なマンガ家の見習いとしてキャリアを積み、デビューを目指していたが、ウェブトゥーンにより、自らホームページを運営し、短編のマンガなどを連載する新しいタイプのマンガ家が登場するようになった。アマチュアマンガ家にはプロを目指す上での門戸がより開かれるようになったといえる。

 今年7月、「マンガ界のアカデミー賞」とも呼ばれる「アイズナー賞」の授賞式が米国で行われた。同賞の「ベスト・ウェブコミック部門」で受賞したのは韓国のネイバーウェブトゥーンで連載の「ロア・オリオンポス」だった。

 また、来年1月に開かれる第50回アングレーム国際マンガ祭には、韓国人作家のマンガ2作品がノミネートされている。フランス・アングレーム国際マンガ祭は「マンガ界のカンヌ映画祭」とも呼ばれる。

 コンペティション部門にノミネートされているチェ・ギュソクさんの「錐」(きり)はフランス系大型マートを背景に職員を不当解雇するように指示を受けた課長と労働運動家が対立する過程を描いた作品だ。2013年12月から、毎週火曜日にネイバーウェブトゥーンに連載された。読者や専門家から高い評価を受け、2014年には「今日の私たちのマンガ 韓国マンガ家協会長賞」を受賞した。2015年にはドラマ化された。

 前出の「エコノミスト」は、ウェブトゥーンが急成長を遂げている一方で、日本のマンガ産業の衰退を指摘。「1960年代以降、従来の方式を守ってきたマンガ産業の保守的な構造がこのような対照的な状況をつくり出した」とした。

 一方で、井上雅彦氏の「バガボンド」や三浦建太郎氏の「ベルセルク」などの作品を挙げ、「マンガは複雑なストーリーを伝えることができる構造、繊細な絵などの強みを守ってきた」と評価もした。

 ウェブトゥーンの人気ぶりは世界のマンガ市場で「絶対強者」だった日本でもとどまるところを知らない。市場調査会社のMMD研究所がスマホ、タブレット、パソコンのいずれかを所有する15~69歳の男女約1万4500人を対象に先月行った調査では、コミックアプリ・サービス利用者の4割以上がウェブトゥーンの閲覧経験があることが分かった。

 日本での人気は韓国初のウェブトゥーン製作会社YLAB(ワイラボ)の創設者、ユン・イナン(尹仁完)氏も驚きを隠せない。尹氏は今年8月、中央日報の取材に「(ウェブトゥーンが)他の国でも通用しても、出版マンガ市場の強い日本だけは通用しないと思っていた。ところがあっという間に流れが変わり、今では韓国のウェブトゥーンが日本のマンガのエコシステムを破壊している面もある」と語った。

 ウェブトゥーンの急成長に、「マンガ大国」である日本は今後、どう対応していくのか注目される。

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