<W解説>石川県の高級ブドウ「ルビーロマン」は韓国で商標登録できるか?(画像提供:wowkorea)
<W解説>石川県の高級ブドウ「ルビーロマン」は韓国で商標登録できるか?(画像提供:wowkorea)
石川県が開発した高級ブドウ「ルビーロマン」が韓国に流出したとみられる問題を受けて、石川県は、韓国の特許庁に商標の登録を出願した。今月6日には馳浩知事が特許庁を訪れ、韓国での商標登録実現に向け、協力を要請した。

 ルビーロマンは、石川県砂丘地農業研究センターが14年かけて開発した品種で、2008年に初出荷された。粒が大きく、鮮やかな紅色が特徴で、7月の今年の初競りでは1房150万円の値が付いた。出荷には1粒20グラム以上、糖度18度以上、均一な着色といった厳しい基準が設けられている。

 ルビーロマンをめぐっては、昨年8月、輸出していないはずの韓国で「ルビーロマン」とうたうブドウが販売されていたことが分かり、海外流出の可能性が浮上した。その後、「ルビーロマン」の名称が、韓国で2019年に英語、2020年にカタカナとハングルで商標登録されていたことも判明した。

 県は今年8月にソウル市内のデパートで3房を購入。農研機構でDNA鑑定した結果、韓国で販売されていたブドウとルビーロマンの遺伝子情報が一致した。県は韓国に苗木が流出したとみている。

 しかし、ルビーロマンの苗木が韓国に持ち出され、栽培された後に韓国内で販売されていても、厳密には違法ではない。ルビーロマンの名称を使った韓国産ブドウの販売や、韓国から第三国への輸出を阻止するためには、韓国で品種保護の出願をする必要がある。しかし、登録は「自国内で苗の譲渡開始後6年以内」と期限が定められており、県は期限内に出願していなかった。このため、韓国では誰でも申告すればルビーロマンを生産・販売できる状態となっており、前述のように第三者によって商標登録もされている。

 もはや打つ手なしの状態となっていたが、韓国の種苗会社が韓国の第三者による「ルビーロマン」の商標登録の無効を訴えたところ、韓国の特許庁は今年8月、「日本の高付加価値品種の名前と認識されていたとみるのが妥当で、消費者を欺く恐れがある」と会社側の訴えを認めていたことが分かった。訴えた種苗会社について、県ブランド戦略推進室は日本農業新聞の取材に、「ルビーロマンの名称を独占的に使用された場合、何らかの不利益があり、行政訴訟を起こしたと考えられる」との見方を示した。

 韓国特許庁が「ルビーロマン」の商標登録を無効としたことを受けて、県は今月4日、商標の登録を出願した。認められれば、韓国で「ルビーロマン」の名称は石川県のみが使えるようになる。しかし、今後の審査結果は韓国の当局次第で、認められるかは不透明。

 馳知事は6日に特許庁を訪れ、観光での商標登録実現に向け協力を要請した。その後、報道陣の取材に応じ「(登録が認められなかった)場合をあまり想定したくないが、品質勝負だと思っている。生産者の皆さんも誇りを持って厳しい基準・規格を作っているわけだから、そのことを訴えていくことが必要」と強調した。

 日本の品種の海外流出は以前から繰り返されてきた。その代表例が農研機構が30年以上かけて開発した高級ブドウ「シャインマスカット」だ。日本では2006年に品種登録をしたものの、海外での登録は行わなかった。当時、シャインマスカットの輸出を想定していなかったことがその理由という。種子が韓国に持ち込まれ、栽培された「韓国産シャインマスカット」はベトナムや中国、米国などに輸出されている。このため、日本のシャインマスカット農家は大きな輸出機会の損失を被ることとなった。

 日本では昨年4月、改正種苗法が施行した。改正法は、登録品種のうち権利者が持ち出し制限をしたものについては、持ち出す行為自体を禁じている。しかし、ルビーロマンもシャインマスカットも既に広く国外に流出してしまっている。長い年月をかけて生み出されたブランドを、もっと手厚く保護すべきだったことが悔やまれ、改正前の種苗法は穴があったと言わざるを得ない。

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