軍艦島は世界文化遺跡になったのに、慰安婦記録物は?(画像提供:wowkorea)
軍艦島は世界文化遺跡になったのに、慰安婦記録物は?(画像提供:wowkorea)
ユネスコの遺産に登録されるということは、人類がともに保全すべき普遍的価値を公に認められたという意味に解釈される。しかし、ユネスコの遺産への登録をめぐる各国のし烈な競争は、“文化を通した国際社会の協力”という目標の実現がほど遠いように感じさせる。むしろ「歴史は勝った者によって記録される」という言葉が示すように、ユネスコの遺産登録もまた、各国のし烈な遺産外交の産物に他ならない。

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◇2022年12月1日、日本の履行報告書をめぐり第3戦を予告
 日本の『明治日本の産業革命遺跡 製鉄・製鋼、造船、石炭産業』の23か所のユネスコ世界遺産登録も同じだ。この中には端島炭坑など、日本による植民地時代に韓国の人力が強制動員された7つの施設が含まれている。2014年に日本政府が『明治日本の産業革命遺跡』の施設を世界遺産に申請すると、韓国政府は該当遺跡の一部の施設で行われた非人道的な強制労働の歴史を無視して日本が世界遺産登録を申請したことは世界遺産の基本精神に反すると強く反発した。

 韓国の反発にもかかわらず、2015年7月に世界遺産委員会は『明治日本の産業革命遺跡』の世界遺産登録を決定した。遺産の登録は、日本と韓国を含む21の世界遺産委員会の委員国の全会一致で行われた。ただ、日本政府代表団の発言録と注釈(footnote)という2つの段階を経て朝鮮人強制労働の事実が反映され、日本政府はこれを充実に解釈戦略に反映すると公言した。

 韓国政府が『明治日本の産業革命遺跡』の遺産登録に反対しない代わりに、日本は“強制労働”という歴史的事実を事実通り反映し、被害者に対する追悼を行うことを約束したわけだ。当時、これは両国間の極端な対立を避け、対話を通して問題を解決しようという肯定的な合意とも解釈した。

 しかし、その後の日本の行動はこのような和解の精神を完全に無視するものだった。日本が約束した産業遺産情報センターは近代産業施設からも数千キロ離れた場所に2020年3月に設立された。さらに、展示された内容には「日本が徴用令を下したという事実は認めるが、端島炭坑で朝鮮人に対する差別はなかった」という内容の証言が展示され、日韓両国間の葛藤が増幅する結果となった。

 2021年7月23日、ユネスコ世界遺産委員会は『明治日本の産業革命遺跡』に多数の韓国人らの強制労働の事実や日本政府の徴用政策について知ることができる措置などが足りないことへの修正を要請する決議案を全会一致で採択した。現在、世界遺産委員会の委員国には日本と韓国は含まれていない。当事国が含まれていない決議案採択の背景には、水面下で激しい外交戦があったことをうかがわせる。

 まだ戦争は終わっていない。決議案採択後も日本政府は2015年に約束した措置を誠実に履行しているという立場を崩していない。履行報告書の提出締切期限の2022年12月1日まで、このような日本の立場と韓国政府、さらに世界遺産委員会間での激しい外交戦が繰り広げられるだろう。韓国政府は「東京情報センターのような具体的な措置履行現況を注視しながら、日本側に今回の委員会の決定を迅速かつ忠実に履行することを求める」と明らかにした。

◇慰安婦記録物の登録、さらに遠のいたのか
 日韓両国がユネスコの遺産をめぐって対立する問題はもう一つある。慰安婦に関する記録物の記憶遺産選定だ。各国の中央政府が登録申請をする世界遺産(World Heritage)と違って、「世界の記憶(Memory of the World)」は個人、地方政府、市民団体など非政府機関(NGO)が申請するものだ。その後、ユネスコ本部内の小委員会の予備審査を経て隔年で開催される14人の文書管理専門家で構成された国際諮問委員会(IAC)を通して審査を行い、IACの勧告によってユネスコ事務総長が選定を決定する。

 2016年に韓国、中国など8カ国の市民団体と英国ロンドンの帝国戦争博物館が慰安婦記録物2744件を「世界の記憶」に申請し、2017年2月、ユネスコの小委員会は慰安婦記録物2744件を「唯一かつ代替不可能な資料」だと評価した。しかし、同年10月、IACはこれについて「対話のための延期」(postponement pending dialogue)を決定した。日本の「「慰安婦の真実」国民行動」、「日本再生研究会(ハナミズキ)」、「なでしこアクション」、「放送政策研究会」の4つの市民団体が相反する内容の慰安婦記録物を登録申請したためだ。これに対して、現在、ユネスコ事務局は対話のためのファシリテーター(促進者、facilitator)を任命した後、NGO間の対話を推進しているが、円滑に行われていない状況だ。

 これとは別に、「世界の記憶」は審査制度に対する改善作業が行われているということも慰安婦記録物の選定を防ぐ要因となっている。「世界の記憶」は世界遺産と違って政府が記憶遺産などの登録過程に直接関与する過程がなく、審査過程が非公開であるため、個別の国が望まない記録が登録されるとしても該当国の政府がこれに対する影響力を行使できない構造だ。しかし、2015年に中国が申請した「南京大虐殺」が「世界の記憶」に登録されると、日本は関連資料の信憑性と事実に対する疑惑を提起されたにもかかわらず非公開審査で登録が決まったと反発した。

 さらに、日本は2015年のユネスコ日本分担金の一時的な納付停止やユネスコ「世界の記憶」事業の審査制度の改革を主導した。審査制度の改善作業が行われている間、新しい記憶遺産の登録が暫定的に中止され、最近まで記憶遺産の登録審査が中止となっている。

 ただ、今月4日に「世界の記憶」制度改革案がユネスコの執行委員会で承認され、審査が再び本格化する予定だ。新制度は記憶遺産に対する申請資格を各国政府に制限し、登録を申請した遺産に90日以内に各国が異議を申し立てることができるようにした。また、異議申し立てに対して当事国間の合意に達しない場合には記憶記録の登録ができないようにした。慰安婦記録物の登録の壁がさらに高まったわけだ。

 韓国政府は、2016年に記憶遺産への登録を申請した慰安婦関連の記録物は今回変更された手続きの適用対象ではないという立場だ。2017年10月に開かれた「第202回ユネスコ執行委員会」で慰安婦記録物が含まれた申請物は従来の規定に則って手続きを進めると決定したのだ。しかし、日本政府は“慰安婦記録物”も新制度の適用を受けるべきだと主張している。

◇日韓間の歴史認識乖離(かいり)…「共感領域の拡大が根本的な解決策」
 このようにユネスコの遺産は非政治的な美しい和合の遺産ではない。歴史に対するある見解が反映されるという点で、歴史書を使用したし烈な外交戦争と言っても過言ではない。韓国・国会立法調査処のパク・ミョンヒ立法調査官は「2020年~2021年のユネスコ正規予算で、日本は中国に続いて2番目に多くの予算を分担している」とし、「韓国の国家外交力量を単純に予算だけで判断することはできないが、日本の外交予算が韓国の3倍である点を考慮すると、韓国の外交力量強化はもちろん、日本との差別化された公共外交戦略を模索しなければならない」と強調した。

 最も根本的な問題は日韓両国の歴史に対する乖離が大きいということだ。日韓間の葛藤となっている歴史事案に対する具体的な学問または市民次元での共同学術委員会を構成し、史料を共有して両国間の共感領域を拡大することに貢献できる。

 パク調査官は「ユネスコ遺産外交は諸刃の剣のようだ」とし、「国家的な見方で自国の観点を拡散させるには効果的だが、葛藤関係にある国との和解の可能性を侵食させる恐れがある」、「長期的な眼目での対応が必要な理由だ」と述べた。

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