韓国は5月28日に新型コロナウイルスのワクチン接種率が10%を超えたと報じられた。韓国内で1回目の接種を受けた人は、同日に累計523万3963人となり、全人口の10.2%となった。

この報道に、ムン・ジェイン(文在寅)大統領は29日、SNSで「この速さなら『6月までに1300万人以上接種』という目標は達成できるだろう」との見通しを示した。

韓国で接種が始まったのは2月26日。経済協力開発機構(OECD)加盟37か国中、最も遅いスタートとなった。医療従事者や療養施設の入所者などを対象に始まり、4月1日からは全国の75歳以上の高齢者を対象に接種。さらに今月27日からは65歳以上に対象を拡大した。

これまで韓国政府は「ワクチン確保が遅れた」と批判にさらされ、なかなか接種が進まない状況にムン政権に対する国民の不満は日に日に高まっていた。

しかし韓国紙・朝鮮日報が29日、「コロナワクチン接種の速度戦が本格的に始まった」と報じたように、韓国はここに来てワクチンの接種ペースを上げている。27日には1日の1回目の接種人数がこれまでで最高の65万7192人だった。1回目の接種率は26日が7.8%、27日が9.1%、28日が10.2%と、毎日1ポイント以上増やしている。

韓国では今、接種率を上げようとさまざまな取り組みに着手している。

保健当局は26日、接種を受けた人に対する制限の緩和措置を発表した。接種を受けた人を対象に、現在8人以内に限定されている家族で集まる際の人数制限をなくすほか、7月からは2回目の接種完了者について、屋外でのマスク着用を不要とする。

また接種完了者には、国立公園や古宮など公共施設の入場料を割引するといったインセンティブも提示し、接種を呼び掛けている。

余ったワクチンを無駄なく使って接種率を高める取り組みには、IT(情報技術)に強い韓国らしさを発揮している。政府は27日、接種予定者にキャンセルが生じた際、スマホアプリを通じて残余ワクチンを持つ医療機関を地図上に公開、希望者が最寄りの医療機関で代わりに接種できるシステムの試験運用を始めた。
 
また大企業では、ワクチン接種を受けた社員に対し、接種当日から数日、有給休暇を付与する「ワクチン休暇」の導入を検討する動きが広がっている。韓国国会の与党議員からは、この休暇導入を中小企業にも拡大するよう求める声も上がっている。

ワクチン接種率を加速させるため、官民挙げて取り組んでいることがうかがえるが、韓国紙・毎日経済は29日、「韓国のワクチン接種率179か国中87位、インドより低く日本より高い」との見出しで記事を掲載。ムン大統領がSNSに「わが国のワクチンの接種が加速している」などと投稿したことを紹介した上で、「韓国の接種率は他国に比べればはるかに低い水準だ」と指摘している。

政府は9月末までに人口の約70%にあたる3600万人の1回目の接種を終えることを目標に掲げているほか、11月までに「集団免疫」の獲得を目指している。

来月7日には接種対象が60歳以上を対象に拡大する。今後、接種がさらに本格化する中、韓国政府はこれまでの遅れを払しょくできるほどの成果を上げることができるのか注目される。

但し、文大統領がこの成果を無事に達成するためにはクリアーしないといけない制約がある。文政権が大量に確保できているのはアストラゼネカ(AZ)社のワクチンだけだ。まれに血栓形成の副反応が報告されているAZワクチンは韓国で忌避される傾向がある。

だからこそ、文政権は米韓首脳会談の時、「ワクチンスワップ」など少し奇怪な言葉まで作り上げながら米国に協力を求めていた。副反応が少ないmRNA方式ワクチンの供給は米国が主導権を持っているからだ。

日本の場合、厚生労働省がAZワクチンに対しても薬事承認はしたものの、世界各国で報告されている副作用を勘案し実質保留の状態である。mRNA方式のファイザー社ワクチンやモデルナ社ワクチンを大量に確保している日本であるからこそ出来る運営方法である。

文政権は経済の失政にも新型コロナ防疫を「K防疫」と名付け、予算をかけてそれを宣伝し、去年の4月には見事に国会議席の60%を確保した。今年の4月にはmRNAワクチンの大量確保に失敗したこともあり、ソウル・プサン(釜山)など自治体の選挙で敗退した。来年の大統領選挙のため、今年年末までは「集団免疫の達成」を「K免疫」として大々的に宣言したいことは分かる。

しかし、そのためには米国バイデン政権の積極的な協力が必要となる。今回6月にイギリスで文大統領がバイデン大統領と再会する時は、またも「ワクチンスワップ」の話が出てくると予測される。来年の退任後の安危がかかっている件でもあるからだ。

前政権の全てを「悪」にし、「反日」で容易い支持率アップを狙った文政権。2015年12月の「慰安婦問題日韓合意」の約束を破り、4年間も日米韓の三角同盟を蔑にしてきた文政権に、米国が協力することになるのか、注目されるところだ。

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