(画像提供:wowkorea)
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先週、ソウル中央地方裁判所は日本国家・政府を相手に取って損害賠償を求めていた元慰安婦被害「呼訴人」ら12人に対して原告全面勝訴の判決を言い渡した。

 このニュース、事件については多くの報道がなされ、日本国内の所謂「左派」・「進歩系」のメディアにおいても、ごく一部を除けば、「主権免除(主権国家は他の主権国家の裁判権に服さない)」という国際法上の原則を無視した地方裁の判決だと問題視している。

 しかしながら言わせてみれば、識者・解説者を始めとした日本人がこの判決に驚いているのが、驚きだ。そもそも論だが、こうした判決が出されるには、当然、背景と文脈がある。

 即ち、元慰安婦被害「呼訴人」らの全面勝訴は、日本政府の法的代理人の出廷如何とは無関係に、2018年10月末に韓国の大法院(最高裁判所)が新日鐵住金に対して元労働者らへ一人当たり1億ウォンの「慰謝料」支払いを命じた判決が判例として確立してしまい、これに基づいているに過ぎないのだ。つまり2018年の最高裁判決・判例が根本、出発点となっており、これに対する日本の対応が失敗であったのだ。

 2018年の韓国の最高裁判決・判例を振り返れば、以下三つの要点からなる。
1)不法な植民支配・侵略戦争に直結した、反人道的な不法行為の「慰謝料」の請求権であり、原告らは未払い賃金や補償金が焦点ではない。
2)1965年の日韓請求権協定は「不法な植民支配」に対する賠償ではなく、植民地支配の不法性に直結する請求権まで含むものではない。
3)日韓請求権協定は勿論、今日に至るまで日本政府は植民地支配の不法性を認めないまま強制動員被害の法的賠償を否認している。

 従って、1905~10年の三次に渡る日韓協定の法的正当性・正統性の如何を始め、日本の朝鮮支配そのものを、ジェノサイド(集団虐殺)、奴隷制度、人道に対する罪等の国際社会全体として絶対に破ることが許されないルールを犯した行為であると見ているのだ。つまり「強行規範」が適用されれば片方の国が一方的に破棄しても許されると主張しているのだ。

 事実、先日の判決でも「日本帝国によって計画的、組織的、広範囲に行われた反人道的犯罪行為であり、国際強行規範に違反した」と言及されたが、発生時点で合法であっても、また事後的に二国間で締結された条約でも、「主権免除」を否定して”例外的に”韓国側に裁判権はあるとした。

 もう少し簡潔にまとめると、(1)1910年の韓国併合・統治は不法な占領だ、従って(2)占領(強制占領)中の日本の行いは全て反人道的な不法行為だ、と言うのだ。

 こうした判例が定着確定した結果、元NHKソウル支局長だった池畑修平氏は、「被告席に座るのが日本側なら、何をしても構わない」とでも言わんばかりに、日本の統治によって「精神的な苦痛を受けた」として、日本政府を相手取った訴訟の濫発の可能性を指摘する。

 また極端な話と断りつつも、「学びたくもない日本語を学ばされた」として慰謝料請求が成立する可能性にまで言及した。付け加えれば、強制徴用被害「呼訴人」と元慰安婦被害「呼訴人」の裁判同様、その強制日本語学習被害「呼訴人」の“遺族”であっても同様の訴えが可能なのだ。つまり韓国民全員が原告になりえ、全員が日本から慰謝料を受けうるのだ。

 従って2018年の最高裁判決の際に、日韓両国が対応を間違えたのだ。つまり日韓が徹底的に話し合い、判決の処理を迫らなかったことが惜しまれる。また日本による強制、制裁の有無にかかわらず、外交的にも、また国際社会の一員としてこの判決によって苦境に立たされるのは韓国も同様だ。

 だがこうなってしまうと、今回の最高裁判決と日本の主権免除を無視した正当化の根拠となった、イタリア・ギリシャがドイツに対して国際強行規範違反を根拠に、ドイツの主権免除を認めず、イタリア・ギリシャの裁判所で対独賠償請求を確定させた事例を持ち出さざるを得ないだろう。

 つまり独伊両国は最終的には国際司法裁判所において(ギリシャは参加したものの当事者になることは求めなかった)、イタリアによる国際強行規範違反の訴えを退け、ドイツの主権免除を認めた判決に服したのだ(2012年2月)。

 現行の日本国憲法や約70年間の間に培われてしまった「平和主義」によって、日本が韓国に徹底的な制裁を加え、その意思を強要するのは、法的云々以前に、政治的に難しいだろう。であればこそ、韓国政府が被告として応じるか否かとは無関係に、2018年の段階で日本企業の韓国国内における不利益の回避と回復のために、韓国最高裁の判決の撤回を求めて国際司法裁判所に提訴すべきであった。

 こうすることで韓国に対してのみならず、国際社会において日本の国益を守る、すなわち日本と日本の朝鮮統治は国際強行規範の対象ではないと訴えておくべきだったのだ。放置した場合、韓国国内のみでなく第三国での資産差し押さえや現金化にもつながりかねないからだ。

 従って遅きに失したものの、今からでも日本は2018年の判決も含め、韓国最高裁の判決の処理を求めて国際司法裁判所に提訴すべきであろうし、またこれ以外に、日本国家と企業の利益を守る手段はないだろう。これが長期的に国際社会において韓国の国益を守ることにもなるのだ。

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