【ソウル13日聯合ニュース】北朝鮮・開城工業団地で3月30日に拘束され13日まで138日間にわたり抑留されていた現代峨山社員が解放された。ひとまず南北関係の第1の障害物が解消されたとみることができる。
 今回の事件が、先に解放された米国籍女性記者2人の拘束事件とともに長期化したのは、調査がそれだけ長くかかったというよりも、北朝鮮に対南政策レベルでの思惑があったためという認識が大勢だ。今回の解放は厳密に、南北関係にプラス要因が生じたのではなく、マイナス要因がなくなっただけとみるのが妥当だ。
 一方で、政府がこれまで民間訪朝にブレーキをかけ、民間レベルでの人道的対北朝鮮支援まで制約してきたのには、北朝鮮の核実験とともに、この現代峨山社員抑留問題が重要な要因として作用していたことに注目する者も少なくない。
 現在も北朝鮮状況に変わりはないものの、今回の社員解放を機に、民間訪朝制限や人道支援団体の物資搬出制限の緩和など、政府の対北朝鮮政策に運針の幅が生じるとの見方だ。今後、開城工業団地活性化も可能になるのではとの分析も出ている。
 ただ、今回の件だけで自動的に南北関係の全面改善が後に続くとみるのは困難だ。先月30日に東海(日本名:日本海)北方限界線(NLL)を越えたため北朝鮮にえい航された韓国漁船の船員4人の解放と、昨年の金剛山韓国人観光客射殺事件など、乗り越えるべき山はまだ残っている。これら懸案に関しては、早ければ13日中と予想される玄貞恩(ヒョンジョンウン)現代グループ会長と金正日(キム・ジョンイル)総書記の会合で、金総書記が肯定的なメッセージを伝えるかが、第一の鍵となる。
 また、核実験を受けての対北朝鮮制裁が厳然と発動されるなか、「非核・開放3000」を掲げる韓国政府が北朝鮮へのアプローチを本格化するには、北朝鮮が6カ国協議に復帰するなど、核問題に進展がなければならないというのが、専門家の見方だ。
 金剛山事件では、真相究明と再発防止策の確立が宿題として残っている。国連安保理決議により北朝鮮の武器開発資金源がせき止められている状況で、現金を与えることになる金剛山観光を再開するのは、容易なことではないだろう。依然、南北関係の発展の前には、「北朝鮮が非核化に誠意をみせなければならない」という重要な前提条件が横たわっている。韓国政府が今回のことを機に生じたモメンタムを活用し、南北関係を解決していく上でどれだけ積極性を見せるかも、南北関係改善に重要な変数となる。
 東国大学のキム・ヨンヒョン教授は、今回の社員解放が南北関係にかなりの肯定的な影響を与えるとみられるものの、「北朝鮮が韓国側にボールを渡した」と見ることができると指摘する。李明博(イ・ミョンバク)大統領が、光復節(15日、日本植民地支配からの独立記念日)のことばを通じ、どのような対北朝鮮メッセージを出すかが重要になると話した。 
 北韓大学院大学の梁茂進(ヤン・ムジン)教授は、今回の解放劇が現代と北朝鮮間の交流協力拡大、当局間の交流協力拡大というナジー効果を生むことになるだろうが、重要なのは、韓国政府の対北アプローチの意思だと主張した。南北関係の改善を通じ核問題の進展に寄与できるという形の認識の転換がなければ、そのシナジー効果は微々たるものに終わるとの見方を示した。
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