<W解説>日韓関係改善に向けた動きの中で、依然解決されない慰安婦像設置の問題(画像提供:wowkorea)
<W解説>日韓関係改善に向けた動きの中で、依然解決されない慰安婦像設置の問題(画像提供:wowkorea)
ドイツ中部の州立カッセル大学敷地内に設置されていた慰安婦像が今月9日、撤去された。像は昨年7月に、同大の学生らがドイツの韓国系市民団体「コリア協議会」と連携し設置したもの。韓国紙のハンギョレ新聞は「撤去の背景には、日本政府の絶え間ない圧力があったとする主張が出ている」と伝えた。

韓国内や韓国系市民団体が慰安婦問題を訴える目的で設置した慰安婦像は、今や、世界各地に広がっている。慰安婦像が初めて設置されたのは2011年12月のこと。元慰安婦支援団体の挺身隊問題対策協議会(挺対協、現・日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯)によって、ソウルの日本大使館前に置かれた。同団体が慰安婦問題の解決を訴えるために毎週水曜日に行う集会(水曜集会)の通算1000回目の開催を記念し設置した。挺対協は当初、日本大使館前に慰安婦の記念碑を立てたいとソウル市チョンノ(鍾路)区の区長に要望。当時の韓国メディアの報道によると、区長は記念碑の場合、道路専用許可が必要だが、像ならば芸術品とみなすことができるため問題ないとの見解を示したとされる。

しかし、公道に建造物を設置することは韓国の法律に違反するのみならず、日本大使館前に設置することは外交公館の威厳や機能を保証するウィーン条約にも違反する。日本政府は当時から像の設置に遺憾の意を示しており、これまで繰り返し韓国政府に撤去を求めてきた。

2017年に鍾路区は「都市空間芸術条例」の改正案を可決し、慰安婦像を「公共造形物」として区の管理下に置いた。これにより、像を移設、または撤去する場合、区の都市空間芸術委員会の決定に従わなければならなくなり、現在も像は撤去されていない。

その後、像は韓国内にとどまらず、現地の韓国系市民団体らによってドイツや米国など国外にも設置されるようになった。

ドイツ・カッセル大のキャンパス内にも昨年7月、慰安婦像が設置された。学生の団体が設置したい旨をコリア協議会に伝えたところ、韓国の彫刻家が像を寄贈した。像には「戦争中の性犯罪の犠牲者の苦しみを追悼する記憶の空間」などとドイツ語で刻まれた。

しかし、この像をめぐり学長側が昨年9月、撤去するようコリア協議会に通知を出した。同月、韓国の市民団体が像の後援者名簿を届けるため現地を訪れた際、コリア協議会は学長からの撤去通知の背景には日本政府の撤去要求があったと主張した。

像は今月9日、撤去された。同大は声明で「設置の期限が終了したため」と撤去理由を説明した。像の設置期限は、当初の予定より7か月延長されていたという。

韓国の元慰安婦支援団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」は10日に報道資料を出し、像の撤去の背景には日本政府の圧力があったと主張し、日本政府を糾弾するとの立場を示した。

ドイツではベルリン・ミッテ区の公用地でもコリア協議会が中心となり、2020年9月に慰安婦を象徴する少女像が設置されたが、新たな記念碑が建てられるまで存続する見通しとなった。この像をめぐっては、岸田文雄首相が昨年4月の日独首脳会談の際、ショルツ首相に撤去に向け協力を求めたことがある。首相自らが像の撤去を直接要請したことは極めて異例のことだった。しかし、このまま像の設置を欧州の主要国であるドイツで許せば、誤った歴史が国際社会に根付くことになりかねないという日本政府の危機感が背景にあったものとみられている。だが、像の管轄はミッテ区で、ドイツ政府として介入できる余地は少ないことから、ショルツ首相の反応は芳しいものではなかった。

この像は2020年10月にミッテ区長が一旦は撤去を命じたが、「この像は戦時下における女性への性暴力をテーマとしたもので、日本に特化したものではない」と主張するコリア協議会側の激しい抗議を受け、命令は撤回された。同区は1年間の像の設置許可を出した後、2021年8月にも設置期間延長を決定。日本政府は区などドイツ側に抗議し、早期に撤去するよう求めている。

慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した2015年の日韓合意では、国際社会での非難や批判を相互に控えるとしている。日韓の歴史問題をめぐって、韓国政府は今月6日、元徴用工訴訟問題の解決策を発表。今月16日にはユン・ソギョル(尹錫悦)大統領が来日して日韓首脳会談が行われた。日韓関係の改善に向けて大きく前進したが、日韓の間には徴用工問題のみならず、像の設置も含む慰安婦問題など、依然、多くの懸案が残されている。

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