<W解説>ソウル雑踏事故、韓国憲法裁が閣僚弾劾を棄却=判断理由は?(画像提供:wowkorea)
<W解説>ソウル雑踏事故、韓国憲法裁が閣僚弾劾を棄却=判断理由は?(画像提供:wowkorea)
韓国の憲法裁判所は今月25日、昨年10月に韓国・ソウルの繁華街、イテウォン(梨泰院)で起きた雑踏事故の責任を問われたイ・サンミン(李祥敏)行政安全部(部は省に相当)長官の弾劾訴追を棄却した。裁判官の全員一致による決定。職務が停止されていた李氏は、長官職に復帰した。

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事故は昨年10月29日、ハロウィーンを前にした週末でごった返す梨泰院の通りで起きた。現場は幅3~4メートルほどの狭い坂道で、一部の人が転倒した後、次々に折り重なるように倒れる群衆雪崩が起きた。事故では日本人2人を含む159人が死亡した。犠牲者は10代、20代の若者が多く、韓国では高校生ら約300人が犠牲となった2014年の旅客船セウォル号沈没事故以来の大惨事となった。

この事故では警備体制の甘さや警察や消防の対応の不備が指摘された。新型コロナの行動制限がない中で迎えるハロウィーンということで、多くの人出が予想されていたが、警備に動員された警察官らの人数は不十分で、また、事故発生の数時間前から「人が多すぎて圧死しそうだ」などといった通報が警察や消防などに多数寄せられていたにも関わらず、適切な対応を取らず、これらが事故を招いたとの批判が噴出した。

警察庁の特別捜査本部は今年1月、捜査結果を発表。管轄の自治体や警察、消防など、法令上、安全予防や対応の義務がある機関が事前の安全対策を怠るなど、事故の予防対策を取らなかったために起きた「人災」と結論付けた。

事故の捜査は終結したが、不十分だと考える遺族は多く、遺族会などはユン・ソギョル(尹錫悦)大統領の正式な謝罪や、李長官の罷免などを求めてきた。

行政安全部は日本の総務省と警察庁に相当する韓国の中央行政機関だが、そのトップの李長官は事故発生直後、「警察官を通常より多く配置したとしても解決できる問題ではなかった」などと発言し、遺族の反発を招いた。

今年2月、野党が多数派を占める韓国国会は、李長官の弾劾訴追案を可決した。韓国の国会では、大統領だった故ノ・ムヒョン(盧武鉉)氏、パク・クネ(朴槿恵)氏の弾劾訴追案が可決されたことはあったが、閣僚の弾劾訴追案の可決は韓国の憲政史上初めてのことだった。最大野党「共に民主党」は可決時、「悲惨な事故が起きても反省しない尹錫悦政権の『非常識』と『無責任』を改める第一歩だ」とした。李長官の弾劾訴追案が可決されたことには当時、事故の犠牲者の遺族からも「国会が役割を果たした」と評価する声が上がった。

一方、大統領室は当時、「明確な理由もなく長官の弾劾に踏み切ったことは、巨大野党の暴挙だ」と反発した。

審理では李長官が▲事故を予防する義務を果たしたか▲事故後に取った対応は適切だったか▲同部長官として国家公務員法が定める、誠実であり品位を維持する義務を守ったかが争点となった。

憲法裁判所は25日、李長官について、「災難(災害)安全法や国家公務員法に違反し、国民を守る憲法上の義務を果たさなかったとは言えない」とし、弾劾訴追を棄却した。憲法裁は判断理由について「惨事の原因などに関する発言は国民の誤解を招く余地があり不適切」としながらも、「発言で罷免を正当化できるほど災難安全管理の行政機能が傷つけられたとは断定しがたい」と説明した。

職務が停止されていた李長官は職務に復帰する。

憲法裁が棄却の判断を下したことを受け、韓国大統領室の高官は聯合ニュースの取材に「巨大野党による弾劾訴追権の乱用は、国民の厳しい審判を受けることになるだろう」と指摘。弾劾訴追性は自由民主主義憲法の秩序を守るための制度だが、李長官に対する弾劾訴追は目的と要件に合っていない「反憲法的な振る舞いだ」と批判した。

一方、「共に民主党」など野党は憲法裁の判断に反発。同党の選任院内代表として弾劾を推進してきたパク・ホングン議員はSNSに「憲法裁の判断が李長官に免罪符を与えたと考えるなら大きな誤算だ。国家システムの不在と責任転嫁が繰り返されている災難の原罪は李長官にある」と主張した。

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