<W解説>韓国・SKハイニックスが成し遂げた世界初の偉業=238層NAND型メモリーとは?(画像提供:wowkorea)
<W解説>韓国・SKハイニックスが成し遂げた世界初の偉業=238層NAND型メモリーとは?(画像提供:wowkorea)
韓国の半導体大手SKハイニックスは今月3日、世界最大容量で最小サイズの次世代型半導体、238層NAND型フラッシュメモリーの開発に成功したと発表した。来年上半期には量産開始を計画している。

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 NAND型フラッシュメモリーはスマートフォンやパソコンなど、電子機器に搭載されるデータ保存用の半導体で、データ保存空間をいかに高層に積み上げるかが技術力の指標となっている。同社のチェ・ジョンダル(崔正達)副社長は「今回の238段はコスト、性能、品質の面で世界トップクラスの競争力を備えている」と自信を示した。

 SKハイニックスは韓国内でサムスン電子に次ぐ2位の半導体メーカー。主力製品は半導体メモリの一つDRAMとNAND型フラッシュメモリー。韓国財閥の現代グループの電機部門として創業し、1997年のアジア通貨危機後半導体の製造に特化してきた。財閥企業であるLGグループの半導体事業と経営統合を果たすも、2001年に経営破綻し、政府系金融機関からの資金援助を受け、債券銀行団の管理下に入った。その後2011年に通信大手のSKテレコム傘下に入ることとなり、2012年3月にSKハイニックスに社名変更した。

 NAND型フラッシュメモリー分野の技術力を確保するため、1990年代から東芝と技術提携を進めてきたが、2014年には東芝の変動帯に関する研究データがSKハイニックスに漏洩した東芝研究データ流出事件が発生。不正競争防止法違反容疑で逮捕されたのは東芝のパートナー企業の元技術者だった。元技術者は2007年から2008年にかけてNAND型フラッシュメモリの微細化に関する研究データを不正に持ち出し、SKハイニックスに提供していたとされる。東芝はSKハイニックスと元技術者に対し、1090億円余りの賠償などを求めて訴訟を起こしたが、その後、SKとは和解が成立。和解を受け両社は、記録用半導体の製造技術を共同で開発するなど協力関係を拡大していくことで合意した。2017年には東芝メモリ(現・キオクシア)の買収に参画した。

 2010年代後半は半導体不況が続いたが、SKハイニックスは果敢な設備投資を決行。その結果、過去10年間のSKハイニックスの時価総額は16兆ウォン(約1兆6253億円)から昨年末現在で95兆ウォンに膨らんだ。チェ・テウォン(崔泰源)SKグループ会長はかつて「ハイニックスを世界的な半導体メーカーに成長させるため、当グループの力と私個人のネットワークを駆使して総力戦で挑む」と公言したことがあるが、NAND型フラッシュメモリーでは世界3位の地位にあり、公言通り、世界的な半導体メーカーとなった。

 SKハイニックスは2020年12月に176層NAND型フラッシュメモリーを開発しており、それからわずか1年8か月で238層NANDの開発に成功した。大容量化、高性能化を図ったNAND型製品をめぐっては、米マイクロンが先月下旬、232層製品の量産開始を発表した。現在、200層を超えるNANDを発表したのはこの2社のみ。

 238層NANDは従来品(176層)と比べデータ転送速度が50%高速化した。また、チップがデータを読む時に使うエネルギー使用量を21%削減することに成功、電力消費面でも成果を上げた。同社は「特に今回の238層NANDは、世界最高層を最小サイズで実現したことが意義深い」としている。

 SKハイニックスは先月末、2022年4~6月期の連結決算を発表した。同期の売上高は13兆8110億ウォンで過去最高を記録。営業利益は4兆1926億ウォンで前年同期比55.6%増だった。

 絶好調の同社だが、喜んでばかりもいられない。同社は7月以降のメモリー半導体の業績について、減速するとの見通しを示している。世界的なインフレ進行や景気悪化に伴い電化製品の出荷量が減っているためで、2023年の投資は下半期の在庫に応じて慎重に判断するとしている。

 また、ロイター通信は今月1日、米国政府が中国長江存在儲科技(長江メモリーテクノロジーズ、YMTC)など、中国内のメモリー半導体メーカーに128層以上のNAND型フラッシュメモリーを作るために使う米国製半導体製造装置の輸出を制限する案を検討中だと報じた。ロイター通信は「この措置に踏み切れば、サムスン電子やSKハイニックスが打撃を受ける可能性がある」とも伝えた。SKハイニックスは中国・大連にNAND工場、無錫にDRAM工場、重慶に後工程工場を稼働している。

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