俳優ユ・アイン(提供:OSEN)
俳優ユ・アイン(提供:OSEN)
俳優ユ・アインをうまく説明する単語は「反抗」だ。彼の出世作を思い浮かべると、演じたキャラクターは体制に反旗を翻すような人物だ。KBSドラマ「トキメキ☆成均館スキャンダル」のムン・ジェシン、映画「ワンドゥギ」のド・ワンドゥクもそうだ。JTBCドラマ「密会」のイ・ソンジェも制度から脱した愛に強烈にとらわれていた。それでも全て善の意志を持った人物であり、ユ・アインの「反抗」は「純粋」に置き換えられた。

ユ・アイン の最新ニュースまとめ

 韓国で今月5日に公開された映画「ベテラン」の財閥3世チョ・テオは、正反対の人物だ。ひたすら瞬間的な楽しさのために動いていく。父親ら一部を除いては眼中にない。“小さな子どもが虫を苦しめるように”何も考えず他人を苦しめ、暴力を振るう。彼が賃金滞納で1人デモをしていたペ記者(チョン・ウンイン)を相手に残忍な行為を起こす理由も特別にない。それによってチョ・テオは広域捜査隊のソ・ドチョル(ファン・ジョンミン)のターゲットになる。

 初の悪役に挑戦だが、ユ・アインの評価は肯定的だった。狂気と天真爛漫さを行き来する憎らしい悪役として映画に面白さを加えたという反応を得た。彼がどれほど役に没入したのか、制作陣は撮影現場で“彼のみぞおちを強く殴りたい”と思うほどだったという。そんなユ・アインに、悪役挑戦について聞いてみた。


<b>―一昨年の釜山国際映画祭でリュ・スンワン監督がキャスティングしたと聞きましたが…</b>
監督は、その時に控えめに提案なさいました。監督のお話だから全部いいと思ったんです。一緒に撮影しながら、その方法に感嘆しました。機会があれば、ぜひまたご一緒したいですね。まず撮影現場がとても明るい。遊んでいるのか、撮影中なのか分からないくらいでした。そんな雰囲気の中でみんなが気を抜かないんです。その姿を見ながら、こうして働くものなんだと思いました。ひどく力まずに愉快な雰囲気の中で自分ができることをしっかりこなす姿を見ながら、多くのことを学びましたね。本当にプロの世界でした。

<b>―公開後、肯定的な評価を得ていますね。</b>
感慨無量です。友人に自慢しました。いいお話に安堵しながら「これは監督のおかげだ」と思いました。僕が演じたわけですが、そういったキャラクターを作ったのは監督だからです。演じながら迷ったこともあったけど、監督がそういった部分を削りながらいい所だけを残してくださいました。おぶって踊りたい気持ちです。マスコミ試写会が終わって監督にハートの絵文字をメールで送りました。

<b>―難易度の高いアクションシーンが出てきますが、一番つらかったシーンはどこですか?</b>
女性たちをむやみに相手するシーンが簡単ではありませんでした。男性の先輩たちとのアクションよりも注意が必要でした。それに図々しくならなければならなかったんです。女性を叩いたり、子どもに残忍に振る舞ったりするシーンはチョ・テオの悪の部分を極大化させるからです。後半のユ・イニョンさんとのシーンでは、自分でも見るのがつらかったです。観客の皆さんの立場で没頭して見てしまうほどでした。

<b>―ユ・イニョンさんとは今作が初めての共演ですね。</b>
そうですね。初めて会って一緒のシーンを撮りました。一緒に出たパク・ソダムさんも混乱したと思います。撮影の順序としては、最初の撮影だったからです。二人には負担に思わず思い切りやるように言いました。本当にありがたかったです。オム・テグさんも同じです。スパーリングシーンを撮影中に本当に顔を殴ってしまったんです。振り向いて打つシーンだったのですが、距離の調節を間違えてしまいました。子役の子たちもそうだし…申し訳ないと思う人たちが多い作品です(笑)。

<b>―映画の中ではチョ・テオがどうして歪んでしまったのかなど細かな説明がなく、ただ“悪いヤツ”として描かれているだけですね。</b>
映画が持つトーンとムードがあります。テオだけでなく、全てのキャラクターについて説明していません。人物が置かれた環境を見せたりして、ディテールや雰囲気で人物がなぜこのような性格になったのか推測できるように作られています。キャラクターを表現する洒落た方法だと思います。多くの俳優は、自分が演じる悪役について「理由がある」と説明します。小さい時のトラウマや、仕方なくそうなってしまったとか。だけどテオは深く入り込みません。その代わりに父親のチョ会長(ソン・チャンウイ)がテオに接するシーンで見せるんです。チョ会長がテオの過ちに対して責任を問わないけど、そのシーンでなぜテオが怪物になるのか見当が付きます。

<b>―リュ・スンワン監督から注文されたポイントはありますか?</b>
「子どもが虫を苦しめるように何の考えもなく悪い行動をするように表現できたらいい。」とおっしゃいました。それは無邪気とも言えるけど、何も考えていないということです。普通の人が持つ他人への配慮が全くない人物なんです。ひたすら強者の父親と競争相手の兄と姉を意識しているだけで、あとは全て眼中にないんです。

<b>―前作のJTBCドラマ「密会」と今作の撮影期間が一部重なったが、正反対の役なので混乱しなかったですか?</b>
善良な役は楽で、悪役は面白いですね。「密会」のソンジェと、「ベテラン」のテオは、天使と悪魔とも言えるほど正反対でした。二人とも非現実的とも言えるけど、現実的だと思っています。ソンジェを演じる時は、ものすごく楽でした。いつもしてきた好きなスタイルの演技でしたから。そういった演技をする時は台本を二回以上読みません。練習するほど野暮ったくなるんです。一方、テオはすごく難しかったです。悪役は初めてだったからか、緻密に精密にテオという人物に近づいていきました。「密会」の終わりを撮影していた時期に、「ベテラン」の現場に入りました。ソンジェに入り込んでいる状況でテオに移っていくので、初めはガタガタする感じでした。必死に隠そうとしていたんです。「ベテラン」の方が先にキャスティングされて、「密会」のキャスティングは後だったので、「ベテラン」の方に迷惑をかけてはいけないと思っていました。集中できずに中途半端な演技をしたなんて言われてはいけないので、より一層頑張りました。善と悪を行き来するのは、刺激があって楽しかったです。

<b>―これまでは主に生き生きとした役を演じる“若手俳優”でしたが、今作でそれも卒業ですかね?(笑)</b>
僕は素直で弱々しい感じではないですよね。反抗的なイメージがあるので、テオを選んだということもあります。一般試写会の反応を見たら、女性がこんな僕を嫌がりませんでした。最近は俳優自身と役柄を混同して石を投げられるのではないかとこともあるんですが、今作では「ユ・アインが新しい顔を見せてくれたな」というふうに思ってくださったようです。

<b>―いつまで“若手俳優”でいたいですか?</b>
可能な限り長く、そんなイメージが残ったらいいですね。20代には早く年を取りたいと思っていたけど、今は時間がもったいないと感じます。いつまで“若手”でいられるのかって考えたら、制服もまた着てみたいですね。以前は20~30代の俳優が制服を着ると「なぜ着るのだろうか」と思ったのですが、今は制服を着たいです。それが俳優の特権ではないかと思うようになりました。映画「二十歳(ハタチ)」を見ながら、うらやましく思っていました。重たい役をたくさんやってきたので、明るく愉快な若者の話をやってみたいですね。



<インタビュー後編>に続く





映画「ベテラン」メイン予告編




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