<W解説>「人災」と結論付けられた韓国・梨泰院の雑踏事故(画像提供:wowkorea)
<W解説>「人災」と結論付けられた韓国・梨泰院の雑踏事故(画像提供:wowkorea)
昨年10月に韓国・ソウルの繁華街、イテウォン(梨泰院)で起きた雑踏事故をめぐり、韓国の特別捜査本部は13日、捜査結果を発表した。管轄の自治体や警察、消防など、法令上、安全予防や対応の義務がある機関が事前の安全対策を怠るなど、事故の予防対策を取らなかったために起きた「人災」と結論付けた。特別捜査本部は今回の調査結果の公表を受けて捜査を終える方針。

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事故は昨年10月29日、ハロウィーンを前にした週末でごった返す梨泰院の通りで起きた。現場は幅3~4メートルほどの狭い坂道で、一部の人が転倒した後、次々に折り重なるように倒れる群衆雪崩が起きた。事故では日本人2人を含む159人が死亡した。犠牲者は10代、20代の若者が多い。高校生ら約300人が犠牲となった2014年の旅客船セウォル号沈没事故以来の惨事となった。

事故を受けて、警察庁は11月1日に約500人で構成する特別捜査本部を発足。警察庁や消防庁に捜索に入るなど74日間にわたって捜査を進め、梨泰院を管轄するヨンサン(龍山)警察署のイ・イムジェ(李林宰)前署長や龍山区のパク・ヒヨン(朴熙英)区長ら23人(逮捕6人)を業務上過失致死などの容疑で送検した。

一方、行政安全部(部は省に相当)のイ・サンミン(李祥敏)長官やソウル市のオ・セフン(呉世勲)市長、警察トップのユン・ヒグン(尹熙根)警察庁長らは人出の危険性に対する具体的な注意義務があったわけではないとして、「嫌疑なし」とした。事実上、現場に責任を限定した形で「警察のお手盛り捜査でトカゲのしっぽ切りだ」との批判も出ている。

13日に捜査結果を発表した特別捜査本部は、事故当時の状況について、現場付近では1平方メートル当たり最大で12人を超える過度な密集状態となり、自分の意思で身動きが取れない状況だったとした。多くの人が死亡した坂道では、事故の前後に1平方メートル当たり最大で10.74人、坂道の上にある通りでは最大12.09人の過度な密集状態になっていたとしている。坂道に当時いた人には平均224~560重量キログラム(kgf)の力がかかっていたと推定され、一般的に、1平方メートル当たり7人程度が密集すると、窒息する恐れがある。事故発生時間前の1時間以上前から、現場付近では自分の意思で身動きが取れない状況となっていたことがわかっており、同時多発的に人が倒れたところにさらに人が押し寄せたことで、多くの人が窒息などで死亡したとみられている。

一方、事故の数時間前から緊急性を訴える通報が相次いでいた。昨年11月には、事故が起きる約3時間半前から続いた悲鳴も混じる11件の通報内容を警察庁が公開。「圧死しそう」、「大事故になる一歩手前」、「早く来てほしい」など、通報者からの切迫感ある訴えが相次いでいたことが分かった。

特別捜査本部のソン・ジェハン本部長は記者会見で、ハロウィーンを前に「多くの人出による事故が予想できたにも関わらず、対応すべき機関が予防措置を取らず、事故発生後も適切な措置を取らなかった」と指摘。事故は「人災」によって引き起こされたと結論付けた。

遺族らからは旧正月前に捜査を終わらせようと急いだ捜査本部に対する批判も出ている。韓国紙のハンギョレ新聞によると、捜査本部の関係者は今月3日、「旧正月前に終わらせるために捜査のスピードを上げている。事故原因に対する捜査は終わっており、追加の立件者はほとんどいないとみていい」と発表した。捜査本部のこうした姿勢に、事故で息子を亡くし、遺族会「梨泰院惨事遺族協議会」の代表を務めるイ・ジョンチョル氏は、同紙の取材に「おそらく私たちが世論にもっと訴えれば、ソウル警察庁長までは捜査対象に含まれると思います。だけど、それ以上はないでしょう。問題はこのような発表をなぜ国政調査も終わっていない状況で行うのかということです。事前にマスコミに流して反応を見て追加の捜査をしようとしているのではないかと思います」と話した。

特別捜査本部の捜査は、13日の捜査結果の発表をもって終結した。

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