今年の夏は『ウェルカム・トゥ・トンマッコル』と『親切なクムジャさん』という双頭馬車が、ハリウッドブロックバスターたちを追い払い、いち早く劇場街を占領した。こうした中、第2の全盛期と呼ばれる韓国映画の好調が、秋まで持続するかどうか、関心が集中している。すでに本年最高の興行記録を打ち立て、『ブラザーフッド』を見下ろしている『ウェルカム・トゥ・トンマッコル』に続き、今秋公開される韓国映画の成績はどうだろうか。韓流スターペ・ヨンジュンを掲げ、外信の関心を集中させた『四月の雪』と、『NOWHRE 情け容赦なし』でずば抜けた演出力を見せたイ・ミョンセ監督の新作『刑事Duelist』が、今秋の劇場街を占める韓国映画2トップとして挙げられる。

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『刑事Duelist』は純制作費だけでも78億ウォンという、イ・ミョンセ監督の大作。撮影の99%がセットで行われ、とくに映画導入部に出てくる市場は2,000坪規模のオープンセットで、このように作られたセット数だけでも20余個に達する。映画はこうした完璧なセットに支えられ、見どころを提供する。

長く伸びた昔の石段と、つきあたりの路地のように見える石垣道、まるで宮中のような、悪党一味の宴会など映画は飽きる暇を与えない。

左捕廳の捕校(※当時の刑事)であるアン捕校(アン・ソンギ)とナムスン(ハ・ジウォン)は、偽金が流通し、その出所を探すなか謀反を企む一味とその刺客“スルプンヌン(悲しい目)”(カン・ドンウォン)が犯人であることを知り、追跡を始める。しかしナムスンはスルプンヌンと何度か会ううちにある感情が芽生え、敵として出逢った2人の悲しい恋が始まる。

この映画には『NOWHRE 情け容赦なし』で印象的だった雨が降る日の“泥水が跳ねるほど”戦う現実的な戦をなくす代わりに、赤・黒・白をバックに舞踊を踊るような対決を追加。リアリズムの代わりに叙情性と華麗さを選んだ。最大限、体を密着させて舞い、タンゴのワンシーンを連想させるようなハ・ジウォンとカン・ドンウォンの対決シーン、光と影の間を行ったり来たりしながら火花を散らし刀を振る回すシーン、赤・黄色・緑の様々な色感など、ビジュアル的な面でも韓国映画が一層アップグレードしたという点を感じられる。

しかし、このようなビジュアルにも関わらず、映画はドラマの劇的要素や敵同士で出逢った男女の切ない恋が与える感動は大きく押し寄せてこない。物語はぎっしり詰まって隙もないというよりは、ゆるく予測可能な内容だけで構成されており、細かな説明なしに飛ばされている。

ドラマ『チェオクの剣』で恋の感情を持つ刑事役を演じたハ・ジウォンに、あくたれ小僧のようなナムスンの役が無理矢理のように見え、スルプンヌンのカン・ドンウォンは第2の『砂時計』イ・ジョンジェを誕生させることが出来たが、カリスマが弱く見える。


映画『四月の雪』が注目を浴びる理由は“ヨン様”のためだけではでない。むしろ映画人にとっては『8月のクリスマス』『春の日は過ぎゆく』で、ずば抜けた感受性で人々の心を打ったホ・ジノ監督の新作という理由の方が大きい。

妻の交通事故の知らせを聞いて三陟(サムチョク)に向かったインスは、病院で妻と一緒に事故に遭った男の妻ソヨンに出逢う。2人は不倫関係にあり、お互いの配偶者に嘘をついて遊びに行く途中、事故に遭ったという事実を知ったインスとソヨンは、裏切られたことにもがき苦しむ。このように似たような状況の2人は痛みを分け合い、ある瞬間恋に落ちる。

映画は不倫という素材を、指をさされ非難を受ける対象ではなく、愛の延長で胸を痛める状況に見せるのに集中している。『春の日は過ぎゆく』で、変わるはずのない愛が変わる過程を細密に描いたように、今回は配偶者の不倫を責め、罵っていた2人が、ある瞬間同じような行動をするしかない様子を描こうとした。

しかし、『冬のソナタ』のチュンサン(ペ・ヨンジュン)は、まだ不倫を犯す段階ではなかったようだ。切ない恋の様子が表われるべき場面で、ふわふわ漂うトップスター“ヨン様”のオーラは、チュンサンのそれに近い。その上“涙の女王”ソン・イェジンは、30代の成熟した女性の恋と涙よりは、20代女子大生の淡い恋と別れの方が似合いそうである。デートをする2人がすぐにホテルに入る姿に首をかしげる観客は、突然過ぎる彼らの恋が切ないという言葉に、共感する余地を探すことができない。

以前のロングテイクからはいくぶん脱し、人物にもっと近づこうとした監督の欲は、そうした意図とは異なり、むしろ感情をより遠ざけている。彼らの感情の変化に賛同できない観客は、彼らの恋を幼い子供の火遊びとしては見ないが、かといって彼らが止めることのできない切ない恋を煩っているとも見られなくなる。

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