韓国では5月31日の放送で第20話が終わった『テバク』。主役テギルを演じるチャン・グンソクにとって、このドラマを選んだ成果はどのようなものだったのだろうか。(写真提供:news1)
韓国では5月31日の放送で第20話が終わった『テバク』。主役テギルを演じるチャン・グンソクにとって、このドラマを選んだ成果はどのようなものだったのだろうか。(写真提供:news1)
韓国では5月31日の放送で第20話が終わった『テバク』。いよいよクライマックスに向けて、物語は最大の佳境を迎えていく。主役テギルを演じるチャン・グンソクにとって、このドラマを選んだ成果はどのようなものだったのだろうか。

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■視聴率は初の7%台

 書きたいことは山ほどあるが、ネタバレにつながることは控えたい。まだ『テバク』を見ていない人にとって、ストーリーをばらされることほど面白くないことはないだろう。けれど、これだけは書いておきたい。脚本のご都合主義のことだ。

 脚本を担当するのはクォン・スンギュ氏。過去に『ペク・ドンス』と『火の女神ジョンイ』の脚本を書いており、大がかりなストーリー設定に定評がある。

 実績がある脚本家の作品であることは確かだが、今回の『テバク』を見ていて違和感を持つ場面が何度かあった。

 たとえて言うと「引っ張るだけ引っ張っておいて、最初の設定が違っていたと急に言われるような展開はいかがなものか」ということ。『テバク』の視聴率は第19回で7.7%という初の7%台まで落ちたが、その原因は脚本がご都合主義に陥ったからだと推測する(視聴率は韓国ニールセンの全国統計)。5月31日に放送された第20回で視聴率が8.1%に上がったのがせめてもの救いなのだが……。


■俳優人生を左右する

 ことしの1月、チャン・グンソクの次回作が『テバク』に決まったとき、心が躍った。彼はすばらしい作品にめぐりあったのではないか、という期待感も高まった。

 それは、本人が一番感じていたことだろう。

 3月24日にソウルで行なわれた『テバク』の制作発表会で、主役のテギルを演じるチャン・グンソクはこう語った。

「目を閉じてジッとしているときも、もし自分がテギルならどんな表情をするのか、そんな好奇心が生まれました。この作品を逃したくない、ぜひやってみたいと考えました」

 この言葉にチャン・グンソクの本心が凝縮していた。彼は「この作品を逃したくない」と強調し、さらには「今までのものを捨てて、(『テバク』が)新しいものを身につけられる作品になるのではないかと思います」と付け加えた。

 過去の成功を捨てて新しく生まれ変わるという宣言なのだ。

 それほど、チャン・グンソクにとっても『テバク』は俳優人生を左右するほどの重要な作品だった。

 撮影が始まると、チャン・グンソクの俳優魂に火がついた。まさか、本物のヘビに食らいつくとは思わなかった。そこまでやりきることが、この作品にかけるチャン・グンソクの心意気だったのである。


■名優たちの存在感

 演技がうまい俳優の必須条件に「勘の良さ」がある。

 どんなにセリフを頭にしみこませても、どんなに練習を重ねても、勘の悪い俳優は視聴者の肥えた目を納得させることはできない。

 逆に、勘のいい俳優は、その持ち味を存分に発揮して視聴者をうならせる。チャン・グンソクの場合も、天性の勘の良さを持っている。特に、表情が極端に変わる場合(喜怒哀楽が激しく変化するとき)の切り替えが見事である。

 子役時代からの経験も生きていると思うが、それ以上に大きいのは、生まれ持った表現力だ。

 演じたテギルは苦難の中で生き方が縦横に変わっていったが、その変化をチャン・グンソクは的確に演じ分けていた。

 その演技力は大いに評価されていい。

 ただし、今回の『テバク』を見ていると、チャン・グンソクが目立たないこともしばしばだった。

 主役なのに、なぜ目立たなかったのか。

 それはやはり、チェ・ミンスやチョン・グァンリョルといった名優たちの存在感が際立っていたからだ。


■時代劇の主役という重圧

 見る人が見れば、誰もがわかる。『テバク』に関して言うと、チェ・ミンスとチョン・グァンリョルが登場する場面と、若手俳優たちが出てくる場面とでは、演技の質という面で明らかな違いがあった。

 それは当然のことなのだ。経験の差、というものはどの分野にもあるからだ。

 ただし、チャン・グンソクに関していうと、今までに同世代(あるいは後輩世代)との共演が多すぎて、長老クラスの俳優と火花を散らすような経験が少なかったのではないか。たとえば、『美男<イケメン>ですね』にしても、共演者はみんな年下でチャン・グンソクが最年長という状況だった。

 しかし、今回はまったく違う。

 本格派の時代劇で、共演者には年上の大物が顔を揃えている。その中で主役を張るというのは、どれほどの重圧だろうか。

 韓国の視聴者の反応を見てみると、チェ・ミンスとチョン・グァンリョルは激賞されている一方で、チャン・グンソクの相手となったタムソ役のイム・ジヨンは演技上で多くの批判を受けていた。

 そうであるならば、チャン・グンソクに対する評価は?


■第20話が終わった段階

 韓国ドラマの多くが「スター中心主義の制作スタイル」になっている。特に、韓国以外でも人気がある韓流スターが主演するときはその傾向が顕著だ。

『テバク』もその一つだ。チャン・グンソクは朝鮮王朝時代の男子であれば必須の髭を生やさず、言葉遣いも現代口語になっている。

 つまり、彼だけ特別扱いなのである。

 これがチャン・グンソクにとって良かったのか、そうでなかったのか。

 私(康熙奉〔カン・ヒボン〕)は、特別扱いはチャン・グンソクのためにならないと思っている。

 生まれ変わろうとする者は、自らの力で殻を打ち破らなければならない。誰かに殻を破ってもらったのでは、真に生まれ変わることはできない。

 チャン・グンソクは制作発表会で「今までのものを捨てて、新しいものを身につける」と言った。これは、『美男<イケメン>ですね』の成功を捨てて、新しい自分に生まれ変わるという明確な意思表示であった。

『テバク』がその契機になる作品と思われたが、視聴率で苦戦し、チャン・グンソクも新しい姿を見せられたとは言えない。

 テギルを選んだことは正しかったが、思ったほどの成果は得られないかもしれない……第20話を終えた段階では、率直にこう思えてくる。

 ただし、まだ最終話まで4話残っている。『テバク』の今後の展開に期待したい。


文=康 熙奉(カン ヒボン)
(ロコレ提供)

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