<W解説>日韓首脳会談と今後の展開、両国の有識者はどう見る?(画像提供:wowkorea)
<W解説>日韓首脳会談と今後の展開、両国の有識者はどう見る?(画像提供:wowkorea)
今月16日に行われた日韓首脳会談。両首脳は、首脳間の相互訪問の枠組み「シャトル外交」の再開などで一致。「戦後最悪」とも言われてきた日韓関係は修復へ大きく前進しそうな様子を見せている。今回の首脳会談について、有識者の評価はさまざまだ。

韓国のユン・ソギョル(尹錫悦)大統領と岸田文雄首相の日韓首脳会談は、尹大統領が来日して行われた。韓国政府が今月6日、日韓最大の懸案である元徴用工問題の解決策を示したことを踏まえて設定された。韓国大統領が日本を訪問して首脳会談を行うのは国際会議にあわせたものを除けば2011年以来、約12年ぶりのことだった。

岸田首相は会談で「私と尹大統領が将来に向けて日韓関係の新たな章を共に開く機会が訪れたことを大変うれしく思っている」と述べた。これに対し尹大統領は「韓国と自由、人権、法治と言った普遍的価値を共有する日本は、安全保障や経済、グローバルアジェンダで協力すべきパートナーだ。自由民主主義の価値が重大な挑戦に直面している今、両国の協力の必要性はますます高まっている」と述べた。

両首脳は夕方に共同記者会見に臨んだ。会見で岸田首相は「長い冬の時期を抜けて、2国間訪問としては約12年ぶりに韓国の大統領を日本にお迎えした」と述べた上で「1965年の国交正常化以来の友好協力関係の基盤に基づき、日韓関係をさらに発展させていくことで一致した」と説明した。首相はまた、元徴用工訴訟問題をめぐり、韓国政府が解決策を示したことについて「非常に厳しい状態にあった日韓関係を健全な関係に戻すためのものとして評価している」とし、「日本政府は1998年10月に発表した日韓共同宣言を含む歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいることを確認した」と説明した。

尹大統領は「今年は過去を直視し、相互理解と信頼に基づいた関係を発展させるため、1998年に発表された『金大中・小渕共同宣言』(日韓共同宣言)から25年になる年」とした上で、「宣言の精神を発展的に継承して両国の不幸な歴史を克服し、韓日協力の新たな時代を開く一歩となった」と強調した。

今回の首脳会談について、韓国の内政・外交安全保障政策などに詳しい法政大の伊藤弘太郎特任講師は毎日新聞の取材に「今回の日韓首脳会談は2015年の慰安婦問題に関する合意から翌16年の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)締結時にかけてあった関係改善の機運が戻る契機となり、両国の従来よりも踏み込んだ安全保障協力の実現につながるのではないか」との見方を示した。その上で伊藤氏は「東アジアの安全環境は悪化しており、両国が接近するのは双方の危機感の表れだ」と分析。「日本は今年の主要7か国(G7)議長国として、5月に広島で首脳会議(サミット)を開く。基本的価値を共有する西側諸国の連帯に向け、リーダーシップを発揮するためにも、韓国の存在をないがしろにすることはできない。不安定な世界では、いがみ合うより協力した方が互いに良い役割を果たせる」と指摘した。

元外務事務次官の杉山晋輔氏は共同通信の取材に「日本を取り巻く安全保障環境や国際情勢が激変する中、岸田文雄首相と韓国と尹錫悦大統領は今回の首脳会談で、懸案の元徴用工訴訟問題を解決し、関係正常化させることで合意した。日韓関係を先に進めることができれば、両国だけでなく、国際社会全般にとって極めて望ましいことだ」と評価した。その一方で杉山氏は「2国間の課題は他にもある」とし「慰安婦合意の着実な履行、それこそ島根県・竹島をめぐる問題もある。これら一つ一つ、粘り強く話し合いで解決していく努力が双方に求められる」と指摘した。

一方、韓国のセジョン(世宗)研究所のチョン・ミエ客員研究員は、韓国の公共放送KBSの取材に、今回の首脳会談の成果について「想定内だった」とした上で、「徴用問題の解決策と関連して、日本の誠意ある謝罪はなかった」と指摘した。しかし、シャトル外交の再開については評価し、「韓日関係を改善するためにはまず会うことが重要だ」とした。

北韓大学院のチョ・サンリョル教授は同じくKBSの取材に、尹大統領が元徴用工訴訟の原告への賠償問題の解決策として示した「第3者による肩代わり」に対して求償権を請求しない考えを示したことについて「民法上、求償権の時効は10年で、尹政権の任期が終わった後にも6年残っている」として、政権交代などによって、問題が再燃する可能性があると指摘した。

Copyrights(C)wowkorea.jp 3