4年前の1月31日に裁判「五輪金メダリストに惚れ込んだ中学教員による実母殺害依頼事件」を振り返る=韓国(画像提供:wowkorea)
4年前の1月31日に裁判「五輪金メダリストに惚れ込んだ中学教員による実母殺害依頼事件」を振り返る=韓国(画像提供:wowkorea)
4年前の2019年1月31日。韓国・ソウル南部地裁の法廷に女のA(当時31歳)が泣きながら被告人尋問を受けていた。

 Aに公訴が提起された容疑は、尊属殺害予備罪だった。便利屋に母親を殺害してほしいと依頼した容疑だ。便利屋の経営者Bが初めからAから金だけを受け取ろうとしていたため、実際に犯行には至らなかった。

 幼い頃に父親が亡くなった後、母親一人に育てられたAは幼いころから結婚後まで母親から細かく規制されてきたという。

 Aは2018年10月、事実婚関係にあった男と別れ、内縁の夫と新たに始めようとしていた。当時Aの内縁の夫は、ショートトラックの五輪金メダリストのキム・ドンソンだ。

 2018年4月、キム・ドンソンに初めて会ったAは優しい彼に惚れこんでしまい、積極的にアプローチした。当時Aにはもちろん、キム・ドンソンにも配偶者がいた。

 Aはキム・ドンソンにカンナム(江南)にあるマンションの登記簿謄本まで見せるなど財力を誇示しながらアプローチを続けた。交際期間中にAがキム・ドンソンに渡した金品は、アストンマーティンの乗用車やロレックスの時計を含めた5億5000万ウォン(約5800万円)相当だった。

 キム・ドンソンとの再出発を考えていたAは母親の存在が邪魔になると思い、殺人依頼を計画した。Aは2018年11月にインターネットで検索した「便利屋センター」にメールで「自殺を装って殺人できるか」と依頼した。

 便利屋センターから「可能だ」という回答をもらったAは、その後1か月の間に母親の自宅住所、自宅のパスワード、母親の生活習慣などの情報を提供し、計6500万ウォン(約690万円)を送金した。便利屋センターの経営者Bが金を受け取っても特に動かないでいると、同年12月に「2日以内に終えたら1億ウォンを払う」と追加の提案をしたりもした。

 Aは12月初め、キム・ドンソンと暮らすために契約した江南のマンションの契約残金支払い日程や母親の葬式の日程などについて言及し、犯行を催促した。しかし初めから金だけを受け取って殺人の計画はなかったBは、あれこれ言い訳をして実行しなかった。その間、Aの男関係を疑ったAの夫がメールをこっそり見たため、犯行がばれてしまった。

 当時、事件は世間に大きな衝撃を与えた。江南のマンションを持っているほど財力がある現職の中学校臨時教員が、一人で育ててくれた母親を殺害しようとしていたという点で大きな波紋を呼んだ。キム・ドンソンもAの母親から連絡をもらって犯行について知ったという。

 尊属殺人の被害者になるところだったAの母親は、捜査機関と法廷に娘の嘆願書を数回提出した。母親は嘆願書で「私の過干渉と暴言、暴行など強圧的な規制で娘がこのような犯行をしてしまった」と善処を訴えた。そしてほぼ毎日、拘置所に収監された娘に会いに行った。

 Aは「幼いころから母から非常に多くの抑圧と規制をされてきた。私が付き合う彼氏を全て好ましく思わず、そういう部分で母がいなければつらくないだろうという気持ちだった」と日頃から母親に不満があったことを認めた。

 続けて「母は道徳的な物差しが高いので、キム・ドンソンと付き合っていると言ったら殺そうとすることは分かっていた。殺人依頼がキム・ドンソンのためだとは言い難いが、違うとも言えない。しかし殺人依頼は単純な好奇心レベルだった」と主張。

 ただ母親に関しては「罪は私が犯したのに母が自責の念に駆られているようだ。面会に来た母が『私が受けるべき罪を私の代わりにあなたが受けたのね』と言いながら泣いた。母が面会に来ない日があったが、私のことをあきらめたのだと思ってとても怖かった」と涙を見せた。

 キム・ドンソンはAと内縁関係ではないと主張し、Aも「私の片思いだったような気もする」と言ったが、裁判所は内縁関係だと認めた。

 1審は「積極的に被害者の情報を提供し、巨額の金を渡した点を鑑みると、Aの殺人依頼の意思は非常に真剣で確固たるものだった。犯行の背景には単純に母親との葛藤だけでなく、相続という金銭的意図もあったとみられる」と判断した。

 そして「被害者であるAの母親が犯行の背景が強圧的な規制など自分の過ちによるものだと善処を嘆願している点などを考慮した」として懲役2年を言い渡した。Aは「量刑が重い」と上訴したが刑はそのままで確定した。

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