<W解説>サッカーW杯、北朝鮮も試合放送し関心見せるも露骨な「韓国排除」(画像提供:wowkorea)
<W解説>サッカーW杯、北朝鮮も試合放送し関心見せるも露骨な「韓国排除」(画像提供:wowkorea)
20日に開幕したFIFA(国際サッカー連盟)ワールドカップ(W杯)カタール2022の試合の一部分は北朝鮮でも視聴できるようだ。聯合ニュースは「FIFAが韓国の地上波放送局3局(SBS、KBS、MBC)から朝鮮半島での放映権を譲り受け、北朝鮮の住民が視聴できるようにしたことが24日、分かった」と伝えた。韓国の放送局の関係者は、聯合の取材に「FIFAから要請があり、地上波3局が合意し、北での中継権に対する権利を譲渡した」と明らかにした。

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 北朝鮮ではサッカーは人気競技で、普段からテレビでの試合放映も多い。今大会に北朝鮮代表チームは出場していないが、大会の試合を視聴したい住民は相当数いるとみられる。ただ、生中継はなく、録画を編集した上で放送している。

 また、朝鮮労働党の機関紙、労働新聞は22日、大会の開幕を伝え、開会式後のカタール対エクアドル戦で、エクアドルが2-0で勝利したことを報じた。国営の朝鮮中央通信も21日、同様に報じ、朝鮮中央テレビは21日夜に、開会式の一部の模様とエクアドルのゴールシーンを放映した。

 開会式では世界的な人気を誇る韓国の男性音楽グループ「BTS」(防弾少年団)のジョングクが大会の公式ソング「Dreamers」を熱唱した。しかし、朝鮮中央通信は21日に開幕式について報じる際、この事実に言及しなかった。記事は「大会の主題歌が鳴り響く中、大会の公式シンボルが登場した」とだけ伝えた。

 試合の録画中継でも「韓国排除」がみられる。朝鮮中央テレビは23日夜に1次リーグD組第1戦のフランス対オーストラリア戦の一部を録画で放送した際、観客席にかけられた各国の国旗のうち、韓国のテグッキ(太極旗)はモザイク処理した。また、スタジアム内の広告で、韓国の自動車メーカー現代自動車の電気自動車「アイオニック5」と「アイオニック6」は文字を消去する編集が施された。同日夕に録画中継したグループリーグC組第1戦のサウジアラビア対アルゼンチン戦でも、中国の不動産大手「ワンダグループ」の広告はそのまま放映した一方、現代自動車の広告についてはやはり文字を消去した。

 朝鮮中央テレビはこれまでも、イングランド・プレミアリーグの試合をハイライトで放映する際、トッテナムに所属する韓国代表主将ソン・フンミン(孫興民)選手が出場する試合はカットしてきた。

 これらの措置は、北朝鮮が敵対する韓国が国際的に存在感を示したりする内容を北朝鮮の住民に見せないようにするためだ。

 北朝鮮はサッカーW杯にはこれまで2回出場経験がある。初出場は1966年のイングランド大会。しかし、このイングランド大会で北朝鮮は初出場にしてチリに引き分け、強豪イタリアに1-0で勝利。ベスト8に入る大活躍を見せ、世界を驚かせた。W杯アジア戦初勝利でもあるイタリア戦での偉業は、現在でも「W杯史上、最大級の番狂わせ」と言われている。

 その後、北朝鮮は長く低迷が続いたが、2010年の南アフリカ大会に44年ぶり2回目の出場を果たした。初戦のブラジル戦では1-2で敗れたが、強豪のブラジル相手に善戦したとして評価された。2戦目のポルトガル戦では、朝鮮中央テレビが史上初となる実況中継で試合を放映したが0-7で完敗。グループリーグ敗退が決まった。

 キム・ジョンウン(金正恩)総書記はサッカーの振興に力を入れており、2013年にはサッカー学校を開校。サッカーエリートの育成を進めている。2017年にはすべての児童・生徒にサッカーボールを1個ずつ、計100万個を支給するよう指示したこともある。

 今大会のアジア予選では、2次予選で韓国、トルクメニスタン、レバノン、イエメンと同組になった。順調に勝ち点を重ね、第6節終了時点で2勝1分1敗のグループ3位につけていた。しかし、2020年4月、アジア・サッカー連盟(AFC)に対し、新型コロナウイルスに対する懸念から残りの試合出場を辞退すると表明した。

 住民の関心も高いことから、国家が統制した上で今大会の試合の模様を連日報じている北朝鮮。だが、やはりというべきか、24日の韓国の対ウルグアイ戦を朝鮮中央テレビが放送することはなかった。

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