<W解説>韓国側、元徴用工問題の早期妥結に意欲も、解決の道を阻む日韓双方の「譲れない一線」(画像提供:wowkorea)
<W解説>韓国側、元徴用工問題の早期妥結に意欲も、解決の道を阻む日韓双方の「譲れない一線」(画像提供:wowkorea)
韓国の大統領室の高官は16日、ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領と岸田文雄首相との間で13日に行われた日韓首脳会談について、両首脳が両国の最大の懸案である元徴用工問題を早期に解決することで意気投合したとの認識を示した。また、外交部(外務省に相当)は15日、この問題の解決策を模索するため、「被害者や各界の意見を取りまとめる手続きを進めている」と明らかにした。

 早期の解決に向け、韓国側が動きを一段と活発化させている様子がうかがえるが、決着には韓国側が日本に求める謝罪や資金拠出といった「日本の呼応」が不可欠だ。しかし、日本政府はそもそも元徴用工への損害賠償を含む戦後賠償問題は1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決された」との立場で一貫している。かねてから「ボールは韓国側にある」との姿勢を貫いてきた日本側にとって韓国に安易に譲歩すれば国内の反発を招きかねず、首脳会談で両首脳が一致をみたとされる「早期解決」が図れるかは不透明だ。

 両首脳は13日、カンボジアの首都プノンペンで日韓首脳会談を行った。会談は、プノンペンで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議に合わせて設定された。日韓首脳会談は、「戦後最悪」と言われるほどの両国の関係悪化を受けて、2019年12月に当時の安倍晋三首相とムン・ジェイン(文在寅)大統領が会談して以降、約3年にわたって開かれなかった。

 韓国で政権が変わり、今年5月に大統領に就任した尹氏は日韓関係改善に意欲を見せ、早期の日韓首脳会談の実現を希望してきた。9月、両首脳はニューヨークで約30分間にわたり対話した。当時、両首脳は元徴用工問題などを念頭に懸案を解決し、日韓関係を健全に戻す必要性を共有した。しかし、日本政府は「元徴用工問題で進展がなければ首脳会談はしない」との立場からこの時の対話を「懇談」と位置付けた。一方、韓国メディアは「略式会談」との表現を使って報じた。

 そして今月13日、約3年ぶりに正式な「会談」が実現した。元徴用工問題については、外交当局間の協議が加速していることを踏まえ、早期解決を図ることで一致した。しかし、大統領室高官によると、解決策について具体的な話は出なかったという。一方、大統領室高官は「徴用問題の解決策について密度ある協議が進められており、協議の進行状況について両首脳がしっかり報告を受けていることを確認した。解決策が一つ二つに絞られているとの報告を受けたという意味だ」と説明した。

 元徴用工問題をめぐっては、2018年に韓国の大法院(最高裁)で日本企業に賠償を命じる判決が確定。韓国の裁判所で賠償に応じない日本企業の韓国内資産を差し押さえて売却する「現金化」の手続きが進んでいる。仮に現金化されれば日本政府は制裁措置を取る構えで、そうなれば日韓関係は破綻するとさえ言われている。そのため、現金化は絶対に避けなければならないという認識では日韓両政府とも一致している。

 大統領室高官は、13日の日韓首脳会談について「協議をよりスピーディーに進め、徴用問題の解決だけでなく、韓日関係の改善をもたらす方向で両首脳が注意を払って力を集めようという雰囲気だった」とし「両国の隔たりが縮まったため、早期に解決できる方策を模索し、問題にけりをつけようという雰囲気だった。肯定的かつ積極鄭な意気投合、そのような意味で解釈しても良いのではないかと思う」と述べた。

 韓国政府は現在、日本企業の賠償金を韓国の財団が肩代わりする案を軸に最終調整を進めている。しかし、一方的な譲歩と映ることを避けたい韓国側としては、原告側の意向を反映し「被告企業による謝罪と財団への寄付」を求める考えだが、日本としては日本企業の賠償責任を認めることになることから、これは受け入れがたい要求だ。

 さらに、韓国政府は、公開討論会の開催のため、原告側や各界各層の意見の取りまとめを行っていることを明らかにした。しかし、討論会の具体的な時期や方法については決まっていない。また、原告側は日韓関係改善に意欲を見せるユン・ソギョル(尹錫悦)政権の対日姿勢に「弱腰だ」と不信感を募らせており、討論会への参加に応じるかは不透明だ。

 ここまでの過程を見てくると、元徴用工問題に関して、日韓双方には「譲れない一線」があるようだ。両首脳はそれぞれの国内世論も意識しながら妥結を見出そうとしているが、両氏とも目下、低支持率にあえいでいる。この点も、問題の早期解決を阻む一因となっていると言えそうだ。

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