韓国のユン・ソギョル(尹錫悦)大統領が8日、一週間の夏休みを終えて公務に復帰した。休暇中に発表された世論調査では支持率が24%となり、レームダック(死に体)化の指標とされる30%を切った。今後も厳しい政権運営が続きそうだ。

 休暇を終えて公務に復帰した尹氏は8日朝、「ぶら下がり取材」に応じ、「私のやるべきことは、国民の意を汲み、初心を守りながら国民の意を受けることだという考えを休暇期間中に一層強くした」と述べた。この日はハン・ドクス首相と協議。国政の懸案を総合的に点検し、国民の目線に立った国政運営など、国政の刷新策について議論した。尹氏は「国民の意に逆らう政策はない。重要な政策と改革課題の出発点は、国民の考えと心を察することから始めなければならない」と述べた。聯合ニュースは「最新の世論調査で尹大統領の支持率が20%台に急落したことを受け、国民の意思を反映した国政運営を強調した発言とみられる」と伝えた。

 尹政権はこのところゴタゴタ続きで、それが支持率低下を招いている。先月には尹氏が通信アプリを通じて与党「国民の力」のクォン・ソンドン(権性東)代表代行に送ったメッセージが物議を醸した。尹氏は「わが党もよくやっていますね」「内部射撃なんかを繰り返していた党代表が後退してから変わりました」などとイ・ジュンソク(李俊錫)党代表への批判とも受け取れる文章を送信していた。李代表は企業から性的接待を受けた疑惑に絡んで党員資格停止処分を受け、現在、権氏が代表代行を務めている。メッセージ中の「内部射撃」との表現は、李氏がこれまで尹氏の側近を含む党幹部らへの批判を繰り返していたことを示すものとみられる。

 メッセージは記者団の国会の取材カメラが権氏のスマートフォンの画面を捉え、やり取りが流出した。権氏は「理由を問わず、党員同志たちと国民に心配をかけて申し訳ない」と謝罪。一方、尹氏が過去に李氏への不満などを漏らしたことは「全くない」と否定した。しかし、尹氏と李氏はもともと関係がぎくしゃくしており、今後、李氏が「反尹錫悦」を鮮明にすれば、政権にはさらなる打撃となる。

 また、今月3~4日に米国のペロシ下院議長が韓国を訪問したが、大統領室は当初、尹氏が夏休み中のため、ペロシ氏との会談は行わないと発表。ペロシ氏は米国で大統領権限を継承する順位が副大統領に次ぐ第2位の要人。尹氏側の対応に政界などから批判が高まり、最終的に尹氏は4日にペロシ氏と電話会談することで落ち着いたが、尹政権の外交姿勢を問われる事態となった。

 8日に公務に復帰した尹氏だが、初日から頭を抱えることとなった。パク・スネ(朴順愛)社会副首相兼教育部(部は省に相当)長官が同日、辞任の意向を示した。教育部は先月、少子化問題への対策や就学前の教育格差の解消などを狙いに、小学校の入学時期を現在の満6歳から満5歳に引き下げる案を推進することを決定。朴長官は先月29日、こうした内容の業務計画を尹大統領に報告したが、保護者や教師たちからは子どもの発達状況や学校現場の状況を全く考えていない一方的な政策だと不満の声が続出し、現在も批判は収まっていない。

 朴氏は8日、記者会見し「私が教育から受けた恩恵を国民にお返しするという気持ちで走ってきたが、足りない部分が多かった」とし、学制改革案をめぐる論争の責任は自身にあるとした。就任からわずか1か月余りの辞任で、尹政権発足後、閣僚が辞任するのは今回が初めて。聯合ニュースは朴氏の辞任について、「支持率が20%台に急落したユン大統領による、事実上の更迭と受け止められる」とし、「朴氏の辞任により、尹大統領が就任直後から強調してきた教育改革の推進力は弱まり、学制改革案も事実上廃案となる可能性が高まった」と伝えている。

 韓国紙の中央日報は8日付の社説で「国民の支持だけが大統領の唯一の力になる。謙虚に苦言に耳を傾け、民心と真剣に心通わせる以外に正解はない」と指摘した。

 一方、韓国メディアのイーデイリーは尹氏について「まともに休めない休暇だっただろう」と推測した。また、同メディアによると、8日の尹氏へのぶら下がり取材の際には、とある記者から「大統領ファイト!」と声が飛んだ。これに対し尹氏は、笑顔で「ありがとう」と返答したという。権力を厳しく監視するメディアからも同情を受ける事態となっている。

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