コミュニティを熱くした日本の“節約漫画”で見る「インフレーション」=韓国報道(画像提供:wowkorea)
コミュニティを熱くした日本の“節約漫画”で見る「インフレーション」=韓国報道(画像提供:wowkorea)
1か月のこづかい、2万1000円。韓国ウォンで約20万ウォンを少し超えるこづかいで生活している日本の家長を描いた漫画が日本で大きな人気を集めている。韓国ではまだそのような定義は存在しないが、「日本の節約漫画」や「日本の家長の現実」だとして、一部の漫画がインターネットコミュニティを転々としていた。

 吉本浩二氏の「定額制夫のこづかい万歳」には、日本人の涙ぐましい節約習慣がそのまま盛り込まれている。主人公は作家本人だ。タバコも吸わず、お酒も飲まないが、甘いお菓子を買って食べることで余暇を満足しながら生きている。常に金欠状態であるため、妻にこづかいの増額を哀願するが、きっぱりと断る妻。そんな妻のこづかいは月額7000円、韓国ウォンで6万7000ウォンくらいだ。

 漫画では吉本氏のほかにもいろいろな“節約家”が登場する。夏はテニスを、冬はスノーボードを楽しんでいた吉本氏の同窓であるタケダさんは、自身の青春が込められたホビーグッズを中古販売店で3千円で処分し、1100円で古いゲーム機『ファミコン』を購入する。そんなタケダさんの1か月のこづかいは1万円だ。彼らは漫画でお互いの節約方法を共有し、翌月にはさらに節約することを誓う。

 最近、日本でもインフレーション(以下、「インフレ」)への懸念が相当なものであるため、この漫画は大衆の共感を多く得た。テレビ東京のような在京キー局の番組でもインタビューが紹介され、Amazonでは「1巻を読んでいた時には飲酒などで毎月5万円を使う極度の浪費をしていたが、4巻を読んでいる今では3万円以内で生活している。今の方が幸せを感じる」という評価も見られる。

◇世界中での超インフレにも日本は笑う
 庶民の切ない努力もむなしく、世界中では“高物価への一途”をたどっている。ところが、日本政府はこのインフレに対して「むしろいい」という反応を見せている。

 日本銀行の黒田東彦総裁は先月6日、「家計の値上げ許容度が高まっている」として物価上昇を肯定的に表現した。少し荒く表現すれば、日本の家計は物価上昇に耐えられるということだ。むしろ、日本政府の「物価上昇率2%」という目標値を持ち出して、日本の物価上昇が「重要な変化」とまで述べたのだ。

 この発言に指摘を受けて謝罪はしたが、インフレ阻止のために世界各国が孤軍奮闘する中で出てきた発言としては行き過ぎたものだと言える。黒田総裁はなぜ日本のインフレを歓迎しているのだろうか。

 理由は、日本が慢性的なデフレーションに陥っているためだ。物価上昇率2%という目標値は2012年に安倍晋三元首相が日本の景気低迷を克服するために掲げた目標値だ。いわゆる、“アベノミクス”で長期間にわたって財政緩和政策を展開してきたが、それでも改善させられなかった日本の物価が今になって上がり始めたのだ。

 実は、日本は他の国よりもインフレの影響を大きく受けていない。5日(現地時間)にOECDが発表したところによると、今年5月のOECD38カ国の消費者物価指数(CPI)上昇率の平均は9.6%と集計された。それに対して、日本は2.5%の上昇にとどまり、安定的な水準を維持している。黒田総裁も日本のインフレが思ったよりひどくないため、マクロ経済学者の立場から「耐えられる」と見たのだ。

 米国の有力シンクタンクである「ピーターソン国際経済研究所」(PIIE)のジョセフ・E・ガニョン先任研究員も先月30日(現地時間)、世界主要国のインフレの原因を指摘しながら「インフレにおいて、これまで日本はグローバルパターンに当てはまっていなかった」として、「日本は緊縮通貨または財政政策が必要ではない」と診断した。

◇死んでも使わない、日本人の「強制貯蓄」
 黒田総裁が「耐えるに値する」と見たもう一つの理由は、日本の家計が着実に積み上げた「強制貯蓄」だ。「強制貯蓄」は日本銀行が昨年4月の報告書で初めて使った表現だが、新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)によって消費を減らし、貯めておいたお金のことだ。日本政府は強制貯蓄額が今年3月基準で55兆円まで増加したと推測しており、このような貯蓄を新型コロナの拡散が落ち着いたことによる“報復消費”で市場に供給されることを期待しているのだ。

 しかし、このような観点は楽観的すぎるという批判もある。日本の家計はバブル経済崩壊以降、物価上昇に敏感に反応してきた。日本の長期不況の大きな原因として挙げられるもののうちの一つとして、消費低迷がある。

 実際に新型コロナによる制約が解除され始めた今年上半期には、思ったよりも日本の家計支出が大きく増加しなかった。総務省の発表によると、今年1月に6.9%(前年同月比)上昇した実質家計支出(2人以上の世帯)は、2月には1.1%上昇にとどまり、3月には2.3%上昇、4月には1.7%上昇と減少傾向にある。物価上昇と歴代級の円安現象で不安を感じた日本国民がさらに財布の紐を引き締めたということだ。

 一方で、日本政府が期待する物価上昇は“悪いインフレ”だという指摘もある。家計賃金の引き上げや経済成長など肯定的な要因によるものではなく、国際原材料価格上昇など海外の衝撃によって引き起こされたものであるためだ。しばらくは吉本氏の“節約生活”が続きそうだ。
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