政界のフェミニズム論争に再び火がつく=韓国(画像提供:wowkorea)
政界のフェミニズム論争に再び火がつく=韓国(画像提供:wowkorea)
韓国では相次いで発生した凶悪犯罪が、政界のフェミニズム論争に再び火を付け、物議をかもしている。

 韓国メディアのマニートゥデイは23日、最近起こった凶悪犯罪が、政界のフェミニズム論争に、再び火をつけたと報じた。この論争に火をつけたのは、30代の男性が恋人を凶器で刺してマンションから突き落とし殺害した事件と、警察の身辺保護を受けていた30代女性が、暴力ストーカーの恋人に殺害された事件だ。

 これらの事件について、左派系野党の政治家が意見を述べたところ論争になった。「正義党」チャン・ヘヨン(張恵英)議員が、自身のフェイスブックで男性の性差別意識を指摘したところ、保守系野党「国民の力」のイ・ジュンソク(李俊錫)代表が、張氏の指摘をこう批判した。

 李氏は自身のフェイスブックに、「個別の事件にすぎないのに、ここにフェミニズムの物差しをあてるのは行き過ぎだ」とコメントした。

 すると評論家のチン・ジュングォン(陳重権)元東洋大教授がこの論争に加勢し、「明白なジェンダー殺人なのに、李代表は本質を見たり改善したりしない」と李氏を強く批判した。3人ともに、SNSや世論に影響力を持つインフルエンサーであったため、波紋が広がった。

 こうした李氏の批判に対し、張氏も負けずに強く反論した。

 22日、ソウル新聞によると、張氏は20日、フェイスブックに「別れ話をしたからといって刃物で刺され、19階から突き落とされる世の中だ。女性たちがフェミニストにならざるを得ない」とし、「フェミニズムが嫌いなら女性を殺すな」と書き込んだ。

 それに対し李氏は翌日、フェイスブックを通じ「選挙の時になると、さまざまな犯罪をフェミニズムと結びつける試みが始まる」とし、「過去の反ユダヤ主義から人種差別など、すべての差別的談論が、こうしたステレオタイピングと扇動から始まる」と主張した。

 また、李氏は元夫を殺害した「コ・ユジョン事件」に言及し、「コ・ユジョンの殺人事件も今回の殺人事件も、男女差にとらわれないジェンダー・ニュートラル(gender-neutral)と見るのが正解なのに、これをジェンダー問題として捉えるのが、まさに「性を対立させる行為」と述べた。張氏は「ジェンダーを基盤とした暴力に対する観点がなく、アンチフェミ扇動にだけ関心があるので、本質が捉えられない」と反論した。

 23日、韓国日報の社説では、李氏の発言を痛烈に批判した。

 「国民の力」の李俊錫代表が、デート暴力から女性を守ることを求めた「正義党」張恵英議員の主張に、21日「犯罪をフェミニズムと結びつける試み」とし、「男性が潜在的加害者というフレームは、とりはらうべきだ」と主張した。 しかし、女性を殺すなと言ったことが、「ジェンダー葛藤」であり「扇動」だとは、こうしたぎ弁もないだろう。いくら20代男性の反フェミニズム感情を基盤に誕生した野党代表だとしても、悲惨なデート殺人を前にして、フェミニズムを攻撃するとは度が過ぎる。嘆かわしい政治の後退だ。

 23日、国民日報の社説では、政治家がフェミニズムを利用することについて、警戒の声を上げた。

 李代表は連日、フェミニズムをめぐって口論に近い論争を繰り広げている。デート暴力の末、殺人事件が起きたという理由で、全ての男性を犯罪者に追い込んではならないという論理を展開している。しかし、夫を殺害した後、遺体を遺棄した女性の例をあげ、不必要なジェンダー対立を招いた。犯罪の解決策を男女平等の観点だけで探すこと自体が無理な発想だ。このような発言は、与野党を問わず一度や二度ではない。例えば、与党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)大統領選候補は「狂気のフェミニズムを止めろ」とフェイスブックにコメントを上げている。野党「国民の力」のユン・ソンニョル(尹錫悦)候補は、性犯罪の虚偽告訴罪処罰強化を両性平等公約として上げた。理由は明白だ。浮動層の多い20、30代男性を攻略するということだ。

 韓国社会で両性平等はまだまだ遠いが、重要な事案だ。しかし、すべてのことにフェミニズムを適用し、両者に分かれて争うことは、正しい政策方向を決める上で妨害になるだけだ。政界は、ジェンダー問題という名目で、国民を二分し、利益を貪る考えを捨てなければならない。そんな薄っぺらな考えは結局、選挙にも役に立たない。
Copyrights(C)wowkorea.jp 104