日本の文部科学省は8日、「従軍慰安婦」という用語について、複数の教科書会社から記述の削除や変更の訂正申請があり、これを承認した。文科省が同日、発表した。

これに先立ち日本政府は今年4月、「従軍慰安婦」という用語について「誤解を招く恐れがある」として、「『従軍慰安婦』または『いわゆる従軍慰安婦』ではなく、単に『慰安婦』という用語を用いることが適切」との答弁書を閣議決定していた。

2014年の教科書検定基準の改正により、中学の社会科や高校の地理歴史・公民の教科書は、政府の統一見解を踏まえた記述とするよう定めている。

閣議決定を受け文科省は5月、教科書会社を対象に異例の説明会を開き、訂正申請を「6月末まで」と求めていた。当時のNHKの報道によると、説明会では教科書会社から「訂正申請をしなければ勧告の可能性もあるか」との質問が出たのに対し、文科省側は「そうした措置もあり得る」と回答したという。

朝日新聞の報道によると、「従軍慰安婦」の記述について訂正申請があったのは山川出版社、実教出版、清水書院の3社だという。

山川出版社は、中学社会科や高校の日本史の教科書から「いわゆる従軍慰安婦」との記述や「従軍」との表現を削除した。清水書院は高校の「歴史総合」の教科書で「いわゆる従軍慰安婦」との記述を維持するも、「政府の談話などを含めてこのように表現されることも多かったが(略)現在、日本政府は『慰安婦』という語を用いることが適切であるとしている」とする注釈を加えた。

教科書会社による申請を文科省が承認したことについて、韓国の外交部(日本の外務省に相当)の当局者は10日、「大変遺憾だ」とした。当局者は「旧日本軍の慰安婦動員、募集、移送の強制性は否定できない歴史的な事実で、被害者の生々しい証言こそがどんな文献よりも、日本軍による慰安婦動員の強制性を立証する明らかな証拠」などと強調した。

韓国メディアも、文科省による承認のニュースを伝えた。朝鮮日報は「日本の教科書から『従軍慰安婦』の記述が消える」とし、「日本政府が従軍慰安婦問題について謝罪するという内容の『河野談話』は28年目にして事実上、死文化したとの声が上がっている」などと伝えた。

河野談話は1993年8月、河野洋平官房長官(当時)が発表した談話。慰安婦問題について「いわゆる従軍慰安婦」との表現を使用し、「(日本)軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた」と謝罪した。

前述のように、2014年に改正された教科書検定基準では、中学の社会科や高校の地理歴史・公民の教科書は、政府の統一見解を踏まえた記述とするよう定めている。これに関しては、バランスの取れた内容の教科書が求められる中で、画一的な見解の押し付けにつながる恐れもあるとの声もある。

約30年前の河野談話は、慰安婦報道の嵐の中、日本首相の韓国訪問や韓国との関係改善を見込んだ当時の日本政府・河野洋平氏の決断であった。その後の20年間、韓国は日本に対する「道徳的な優越感」を満喫してきた。

「白衣を着て平和で道徳的に暮らしていた半島。異民族の日本に統治されたあげく、20万人の純潔な少女たちが日本軍の関与の下に、慰安婦になって戦場に連れて行かれた」とのストーリーが完成したからだ。

自ら同族の40%を奴婢として所有・売買・相続していたことや、併合までの国際情勢や、日本による半島の近代化は全てが否定され、半島の被害や不幸の全てが「道徳の欠片もない日本の責任」とされてしまったのだ。

韓国伝統の儒教的な世界観で日本を韓国より格下と位置付ける「小中華の意識」にみると、日本による朝鮮半島統治は序列秩序を違反だった。その上、日韓の経済格差で自尊心に傷が付いていた韓国に、この「道徳的な優越感」は劣等感を克服するきっかけとなった。

その間、韓国経済も日本経済を追いつけるかのような勢いを見せた。浦項製鉄(ポハン製鉄・POSCO)や現代自動車(ヒョンデ・HYUNDAI)やサムスン電子(三星・SAMSUNG)などの躍進は、韓国に「道徳」だけでなく「経済」でも優越感を期待させた。

しかし、韓国はその基盤作りに貢献した日本の存在を忘れ、むしろ行き過ぎた反日行動に走った。2010年代からの慰安婦訴訟や2015年の日韓の約束に対する反故は、韓国を自ら嘘つきとしてしまった。これで20年間以上の「道徳的な優越感」は大逆転となった。

2021年の日本は1993年の日本とは違って、韓国に譲歩する「大人の対応」はもうしない。その間のインターネットやSNSの発達で、日本の政治は韓国の被害者意識を撫でることをやめたのだ。

今回の自民党の総裁選で河野太郎氏が首相となる可能性が出来た。1965年、「日韓国交正常化」のために河野太郎氏の祖父・河野一郎氏が決断していた「竹島・独島密約」。そして、1993年、河野太郎氏の父親・河野洋平氏が決断していた「河野談話」は、それぞれその時代の日韓関係に大きな役割を果たしてきた。

何とか「道徳的な優越感」のマウントを取り戻そうとする韓国と、これ以上は韓国に譲歩しない日本。1965年にも1993年にも2021年にも変わらないものは北朝鮮の脅威である。この難しい時代に、河野太郎氏の「決断」は如何なるものになるのだろうか。

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