(画像提供:wowkorea)
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韓国メディアは30日、米国から韓国に向け、米製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンの医療用医薬品部門、ヤンセンファーマのワクチン100万人分が提供されることになったことを伝えた。今週中に韓国に届くという。

同日、このことを発表した韓国のキム・ブギョム(金富謙)首相は「韓米同盟が強固であることを示したバイデン米大統領と米国政府に深く感謝する」と述べた。

「100万人分のワクチン提供」に大いに喜びたいところだが、実際のところはどうなのか。

今回提供されることが決まったワクチンは、30歳以上の予備役や国防・外交関連の従事者、民防衛(民間防衛)隊員といった主に軍関連事業者向けのものである。先ごろ開かれた米韓首脳会談でバイデン大統領は韓国軍55万人分のワクチン支援を約束したが、今回の100万人分の提供は、この約束分が約2倍に増えたということだ。軍人の家族や、公務などで緊急に海外を訪問する必要がある人などはこの接種対象に含まれるものの、一般国民向けに提供されるものではない。

これにチョン・ギソク前疾病管理本部長からは、ヤンセンのワクチンが1回接種で済むことから「(遠洋漁船の船員など)接種を1回で終わらせる必要のある人に先にこのワクチンを接種すればいいと思うが、米国側の提供趣旨があるから難しいだろうと思う」(ハンギョレ新聞)との声が上がった。

チョン氏から「米国側の提供趣旨」との言葉が出たが、米韓首脳会談で約束した米国のワクチン提供で、対象者が一般国民ではなく軍人向けとなった背景には何があるのだろうか。

韓国保守系の野党「国民の力」のキム・ソクキ(金碩基)議員は、28日に開かれた国会外交統一委員会全体会議で、外交部(日本の外務省に相当)のチョン・ウィヨン(鄭義溶)長官に対し、「韓国政府が新型コロナを理由に韓米合同演習をやろうとしないから(米国は)ワクチンを供給するのではないのか」と質問した。(中央日報)

チョン長官は否定したが、米国のシンクタンク、ランド研究所のブルース・ベネット専任研究員は25日、米政府系の短波ラジオ放送局、ラジオ・フリー・アジアに「55万人全ての韓国軍兵士が8月までにコロナワクチンを全員接種すれば、8月にコロナの感染拡大のリスクなく実機動による米韓合同軍事演習をすることが可能になる」と話したという。

米韓合同軍事演習をめぐっては、2018年の米朝首脳会談などを受けて、ムン・ジェイン(文在寅)政権は北朝鮮を刺激することを避けるため2019年以降、兵力を動員した野外訓練を行っていない。バイデン政権発足後、米韓合同軍事演習が従来の訓練に戻るのではとの見方もあったが、新型コロナウイルスの感染拡大がこれを阻む形となっている。

中央日報は「こうした状況の中で韓米軍の将兵に対しワクチンを接種するということは、訓練を(従来の形に)再開できる物理的な条件が整うことを意味する」と報じている。

韓国政府は「米国から韓国軍へのワクチン供給は、軍事演習とは無関係」と否定しているが、それならばなぜ米国は「軍関係者向け」と強調しているのか。何とも腑(ふ)に落ちない。

どうにか北朝鮮の顔色を伺っている事を否定したいところであろうが、隠された真実は予想外の形で公になるものだ。
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