韓国のムン・ジェイン(文在寅)大統領が、就任から丸4年を迎えた10日、大統領府で特別演説を行った。後1年で任期が終わる。

経済に関して文大統領は「韓国経済は1~3月期に経済開発機構(OECD)諸国より早くコロナ危機前の水準を回復した」、「家計、企業、政府が一体となって成し遂げた国家としての成就であり、国民の誇り」と述べ、成果を強調した。

文大統領が強調するように、最近、韓国経済は明るい話題が多い。2月に発表された、経済協力開発機構(OECD)の統計による、2020年の韓国の実質経済成長率はマイナス1.0%で、中国(2.3%)、ノルウェー(マイナス0.8%)に続いて3番目に高く、米国(マイナス3.5%)や日本(マイナス4.8%)を上回った。

先月27日に韓国銀行(韓国の中央銀行、日本銀行に相当)が発表した、今年1~3月期の実質国内総生産(GDP)は前期比1.6%増で、3期連続プラス成長。新型コロナウイルス流行直前の19年10~12月期は1.3%増で、韓国メディアは「『コロナ禍以前』を超えた韓国経済」(先月28日、革新左派系の韓国紙・ハンギョレ新聞)などと伝えた。

こうした状況に、韓国政府系シンクタンク、韓国開発研究院(KDI)は10日に発刊した「経済動向」で「新型コロナウイルスの感染拡大が続いているのにも関わらず、製造業を中心に景気が緩やかに回復している」と評価した。新型コロナの流行後、「回復」の表現を使ったのは初めて。

経済回復をけん引しているのは輸出だ。韓国の通商産業資源部(部は省に相当)が1日に発表した4月の輸出額は、前年同月比41.1%増の511億9000万ドル(約5.5兆円)で、6か月連続で増加。伸び率は2011年1月以来の高水準となった。

半導体や自動車、石油化学製品の輸出が好調で、半導体は前年同月比30.2%増となり、10か月連続の増加。自動車は73.4%増、石油化学製品は82.6%増だった。

OECDは先月発表した経済見通しで、今年の韓国のGDP成長率を昨年12月時点で示した2.8%から3.3%に上方修正した。そのほか韓国銀行は3.0%、韓国政府は3.2%、IMF(国際通貨基金)に至っては3.6%の見通しを示している。

こうした状況を受け、文大統領は10日の特別演説で、「今年の韓国経済が11年ぶりに4%以上の成長率を達成するよう、政府の力を総動員し、民間の活力を高める」と決意を示した。

一方で、新型コロナの感染拡大により、雇用の創出効果が大きい対面サービス業が大きな打撃を受けたことから雇用が減り、国民は経済の回復を実感できない状況にある。そのため現在の経済成長について「雇用なき成長」との懸念も出ている。

3月に発表された、世論調査機関モノリサーチが全国の満18歳以上の男女1000人を対象に行った調査結果によると、今年の雇用状況がコロナ禍以前(2019年)と比べ「悪化するだろう」と答えた人は77.3%に上った。

文大統領も特別演説で「『完全な経済回復』に向けた最優先課題は、雇用の回復だ」と述べた。その上で「足元の景気回復の流れが雇用回復につながるよう、政策的支援に力を集中していく」との決意を示した。

また、「デジタルやグリーン産業など、未来の有望分野において大規模な雇用創出が見込めるよう、投資拡大と共に人材養成や職業訓練など強力な支援策を実施していく」とした。必要ならば財政支出をさらに拡大して雇用の増加を図る考えも示した。

特別演説で、「4%以上の成長」を掲げたムン大統領。任期が残り1年となる中、コロナ禍という難しい状況下に雇用政策で成果を上げ、自らが口にした大きな成長目標を達成できるのか注目される。

次期大統領候補として「文在寅の辛口バージョン」と言われているイ・ジェミョン(李在明)知事が革新左派政権を引き継ぐにはこの「4%成長」が試金石になりそうだ。

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