(画像提供:wowkorea)
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言葉は人間の生活や歴史を反映する。1990年代、韓国で”日帝残滓”と言われていた小学校の名称を「国民学校」から「初等学校」に変更した時、韓国の近代化に対する日本の影響力に初めて気付いた韓国国民もいただろう。

 日本に観光で訪れる韓国人は、日本の古い小学校を見て、幼い時、自分の「国民学校」の追憶を思い出したり、今までは隠されていた韓国近代化の「実体」を感じたりする。

 近代化の過程で韓国語に影響を与えた日本語は数えきれないが、日本統治期の以降、韓国で日本発祥の言葉として有名なのが「宅配」である。「カラオケ」はあまりにも日本の匂いが強かったので、韓国導入の数年後には「ノレバン(歌の部屋)」に変更されたが、「宅配」は漢字の言葉がそのまま韓国で使われている。韓国はその言葉と共に日本の宅配システムを学んでいたのだ。

 その後、韓国では宅配業が独自の発展を成し遂げたが、今年は宅配業界に対して特別な年になっている。新型コロナウイルスの影響の一つは「宅配」「配送」「配達」の増加である。日本では「Uber Eats (ウーバーイーツ)」の配達や「Amazon」の素早い配送が話題になっているが、韓国では「30分配送」が話題になっている。

 宅配業界は「翌日配送」から「明け方配送」に、更に「当日配送」などに、注文後の数時間内に配送完了するシステムが流通のデジタル化と共に時間短縮を図ってきた。追い込まれた既存のオフライン流通業界は、「30分配送」に力を入れている。「30分配送」とは何か。詳しい内容を追ってみよう。

 日本のコンビニ大手「ファミリマート」が大株主としてノウハウを伝授していた韓国の「BGFリテール」社。韓国のコンビニ大手の「CU」を運営しているこの会社は、近距離30分の徒歩配達サービスを開始すると発表した。CUは昨年6月に既に「配達アプリ」事業者と協力してバイク配達を導入していた。今回の徒歩配達サービスは、これに加えて店舗から半径1キロ圏内で「30分配送」を実現したものだ。

 一方、韓国財閥「LG」と系列分離した別の韓国コンビニ大手「GS25」はCUよりも先に徒歩配達サービス「わが町デリバリー」を今年の8月から開始している。こちらは範囲がもう少し広く、店舗から半径1.5キロ圏内で「30分配送」を目指している。

 なぜこれらのコンビニは「30分配送」に参入するのだろうか。韓国の2大通信社「聯合ニュース」や「news1」、ハンギョレ新聞などによると、このサービスが新たな需要を生んでいるからだ。CUは8月のコンビニ配達注文量が7月に比べ90%増加。9月は8月に比べ約2倍増加した。新型コロナウイルスが蔓延する以前は簡易食品が中心だったが、現在は全般的なニーズの増加し、日用生活用品で注文が増えている。

 日本の「UBER EATS」がコンビニと協力していることとは違って、韓国の「配達アプリ」業界は「コンビニ」業界に勝負をかけている側面もある。「配達アプリ」が自社物流で食品や日用生活用品を30分内に配送することを始めていることだ。短距離配達需要が伸びている背景で、「配達」から「流通」全般への拡大を狙っている。

 韓国の配達アプリ「ヨギヨ」の運営会社はソウルのカンナム(江南)地域にある物流センターから半径3キロ圏内において、30分以内に食品などをバイクで配達する「ヨマート」1号店を試験運用中だ。

 「翌日配送」や「明け方配送」や「当日配送」を乗り越えて、30分以内にどんなものでも配達できる次世代物流サービスになるとのこと。AI(人工知能)を用いたデジタル化で注文から、配車、配達員の位置情報を割り出しているから実現するものだ。医療界では救急患者を救える時間を「ゴールデンタイム」と呼んでいるが、配送業界でもこの30分を「ゴールデンタイム」と呼び始めた。

 「スマート物流」や「ビックデータ」を駆使するこれらの企業は、オフライン店舗にシステムを移植したため、30分配送を可能になったと評価がある。伝統的な「配達」や「出前」が「30分配送」としてオフライン流通業界によって復活したのだ。

 その背景には、「速い配送だけが生き残る道」とするオフライン流通各社が考える戦略があるという。

 韓国の産業通商資源部(経済産業省に該当)の集計によると、今年上半期の流通業者の売上動向は、オフライン流通業者の売上が前年同期に比べ6.0%減少している。しかし、オンラインは17.5%も増加している。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、他人と会わずに商品を購入したいがうえに、「明け方配送」や「当日配送」などによって、数時間以内に商品が配送されてくるシステム。熾烈な流通競争の中、オフライン業者もこの配送競争に参入しなければいけない状況もある。
 
 流通の発達は販売されている商品がどれも似ている結果を生んでしまった。競争に勝ち抜く方法は同じ商品の販売では差別化が出来なく、速い配送で差別化をする狙いでもある。商品の選別や配送時間を考えると、「30分配送」は限界に近いと言われている。「30分配送」の継続は難しいとの見方もある。

 配送時間の短縮は膨大なコストアップを伴い、「30分配送」で生まれる需要がそのコストを賄えるのか、今はまだ試行錯誤の段階だ。現在は消費者のニーズのためというよりは、ただの業者間競争の状況との予想もある。

 バイクによる30分配送は危険だとの指摘もある。配達時間の無理な短縮のため、無理した配達員が死亡する事故もあった。日本では米国のウーバーテクノロジーが展開するデリバリーサービス「Uber Eats」配達員の交通マナーが問題視されたこともある。

 人口の約半分がソウル地域に集中する韓国ならではの便利さでもあり、消費者は嬉しいが、このサービスを提供する会社側にはキツい側面もあるだろう。競争がエスカレートした末路には厳しい現実もあるのだ。

 デジタル化によりIT技術を駆使する新しい競争者の市場参加、「無限競争」状態に入っている韓国の配送業界。日本に示唆する「競争の限度」にこれからも注目したい。

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