子どもたちに日本語を教える中鶴美砂子さん(国際家庭文化院提供)=(聯合ニュース)≪転載・転用禁止≫
子どもたちに日本語を教える中鶴美砂子さん(国際家庭文化院提供)=(聯合ニュース)≪転載・転用禁止≫
【ソウル聯合ニュース】「昨年から韓日両国間の関係が冷え込んでいますが、韓国人と日本人まで仲たがいする必要はないと思います。互いの文化を理解できるように積極的にサポートすれば、いつかは両国にも春が来るのではないでしょうか」――。  韓国女性家族部が「家庭の月」の5月に発表した政府の褒章受章者約70人に日本人として唯一選ばれた南部・済州島の国際家庭文化院講師の中鶴美砂子さん(46)は4日、聯合ニュースのインタビューで「16年前に韓国に移住して苦労した私のように、初めて韓国を訪れた外国人が適応できるよう助けたい」と語った。 韓国について知っているのは日本に近い国ということだけだったという中鶴さんに対し、2004年に出会った韓国人の夫は自身の故郷である済州島で一緒に暮らそうと提案した。中鶴さんは「韓国で暮らすことは考えたこともなかったが、夫と一緒ならどこでも大丈夫だろうと信じて済州島に新居を構えた」と説明する。 故郷の長野県では東京や大阪とは異なり、韓国人に出会うことは難しかったが、移住した済州島では反対に日本人を見つけることが難しかった。地元住民は見知らぬ異邦人を敬遠し、中鶴さんもそうした視線を負担に感じた。 中鶴さんは「今のように海外の観光客が多くなかった時代なので、外国人への警戒心が大きくなるしかなかったと思う」としながら、「今は皆友達のようだ。韓国人が異邦人を見る視線もはるかに寛大になった」と話す。 日本に戻ることも考えたが、2人の子どもの母になったことで地域に適応する必要性をより切実に感じた。 12年に済州島の外国人雇用あっせん事業に応募し、結婚移民者の定着をサポートする国際家庭文化院に勤務することになった。 中鶴さんは「私が定着する過程で経た試行錯誤が、他の移民の役に立つのではないかと思った」とし、「誰でも最初は大変だが、隣に案内役がいれば少しはましではないか」と話した。 幼稚園、小学校、高齢者福祉施設などを訪問して日本文化を紹介し、日本語を教えたほか、地域行事にも積極的に参加した。十数年を経て感じた韓国生活の感想や韓日の文化の違いは、それ自体が受講生の興味を引く教材だった。 中鶴さんは「過去と比べて多文化家庭(国際結婚家庭など)や外国人への差別や偏見などが薄れたことを実感する」とし、「多文化2世が私たちの世代よりもっと自信を持って社会に進出するのを助けようという気持ちで講義に臨んできた」と語る。 女性家族部の関係者も「中鶴さんが外国人でありながら済州島民として、8年近く地域社会の多文化への理解度を高めるために努力した点を高く評価し、表彰した」と説明した。  だが、昨年から重荷に感じていることがある。日本政府による対韓輸出規制強化を受けて韓国で日本製品の不買運動が続くなど韓日関係が冷え込んでいる現状だ。 「私が隣人に真心を持って接すれば、日本人にもよい姿があると考えてもらえると信じている。政治問題で両国関係が悪化したといっても、市民社会にまで憎しみが広がってはならないと思う」 中鶴さんは「故郷に住む父ががんで闘病中だが、新型コロナウイルスの感染拡大で航空便が途絶え、今年に入って会えていない」としながら、「2時間で到着する近い国だが、解決すべき問題がたくさんある」と話す。 社会福祉士の資格を取るために準備しているという中鶴さんは、「もっと多くの多文化移住女性を助けたい。さまざまな家族が差別や偏見なしに生きていける済州島を作りたい」と力を込めた。
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