2019年2月28日、ハノイで会談したトランプ大統領(右)と金委員長(資料写真)=(聯合ニュース)
2019年2月28日、ハノイで会談したトランプ大統領(右)と金委員長(資料写真)=(聯合ニュース)
【ソウル聯合ニュース】トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党委員長)がベトナム・ハノイで首脳会談を開いてから1年がたった。会談は何の合意もなく終わり、朝鮮半島を包み込んでいた融和ムードは消え、米朝関係は進展するどころか過去のような先鋭な対立に戻りかねない危機に直面した。北朝鮮の韓国に対する態度も冷淡になり、南北関係も冷え込んでいる。米国が11月の大統領選に向け選挙モードに入っている上、新型コロナウイルスの広がりも重なり、朝鮮半島情勢は当面停滞が続くと予想されるが、早ければ今年後半にも転機が訪れるとの期待もある。 昨年2月末にハノイで開かれた2回目の米朝首脳会談は、非核化とその見返りに対する具体的な合意に至るという周囲の期待に反し、物別れに終わった。 トランプ大統領は、非核化の最終段階を含めた「大きな絵」にまず合意する必要があると主張した一方、金委員長は北西部・寧辺の核施設と事実上の制裁解除を取引しようと狙った。これを巡り、十分な実務交渉もなく首脳間の談判にのみ頼った交渉方法の限界を露呈しただけとの指摘も出た。 首脳会談の決裂に失望した金委員長は昨年4月、同年末を交渉期限として提示し、「新たな計算法」を持ってくるべきだと米国に譲歩を迫ったが、米国側に原則を譲る考えはなかった。 米朝は昨年10月初めに実務交渉を行ったが、北朝鮮はそこでもきちんとした非核化交渉案を提示しないまま、敵視政策の撤回など米国の態度変化ばかりを要求した。 その後、北朝鮮は交渉に臨む姿勢を見せず、短距離ミサイルなどを相次いで発射し、大陸間弾道ミサイル(ICBM)のエンジン実験と推定される「重大な試験」を行うなど、米国の譲歩を引き出すための威嚇をエスカレートさせた。 金委員長は昨年末の党中央委員会総会で自力更生を強調する一方、「衝撃的な実際行動」に出ると述べて新たな戦略兵器による挑発を予告するなど、危機を一段とあおった。 幸いにも、今のところ北朝鮮でこれといった挑発の動きはないようだ。新型コロナウイルスの感染防止に全力を挙げているためとみられる。米国が本格的な大統領選モードに入っていることもあり、今年に入ってからは米朝間で挑発も、交渉もない状態が続いている。 そのさなか、米朝とも交渉担当の顔ぶれが変わり、交渉そのものに興味を失ったのではないかとの懸念も出ている。 米国では実務交渉代表の国務省のビーガン北朝鮮担当特別代表が副長官に昇進し、担当分野が広がったことで北朝鮮問題にばかり集中できなくなった。アレックス・ウォン北朝鮮担当特別副代表(国務次官補代理)も、国連のポストに指名された。 北朝鮮でも、ハノイでの首脳会談の際に対米外交を取り仕切っていた金英哲(キム・ヨンチョル)党副委員長が対米・対韓業務を担当する統一戦線部長を外れ、外相も先ごろ李容浩(リ・ヨンホ)氏から李善権(リ・ソングォン)氏に交代した。 外交筋によると、北朝鮮が実務交渉に臨むなら米国はいつでも応じるスタンスとされるが、米国の大統領選が近づくなか、北朝鮮が本格的な交渉に乗り出す可能性は低いとみられている。かといって、米国がレッドライン(越えてはならない一線)とみなすICBMの発射などを強行して交渉テーブルをひっくり返すことはせず、様子見を続ける公算が大きい。 米朝とも交渉に消極的な姿勢をみせているなか、韓国は対話再開のきっかけ作りに努めるとみられる。政府が今年に入り、北朝鮮への個人旅行や南北の鉄道・道路連結などに意欲をみせているのも、南北協力の進展で米朝対話をけん引したいという考えからだ。韓国に冷淡な態度を取ってきた北朝鮮も、今のところ個人旅行などに表立った反対姿勢を示していない。 政府周辺には、今年7~8月の東京五輪が平昌冬季五輪のように南北融和ムードを盛り上げる契機になるとの期待もある。18年の平昌冬季五輪には北朝鮮選手団も参加し、アイスホッケー女子で南北合同チームも結成された。
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