報告書は北朝鮮制裁委の専門家パネルが独自の評価や加盟国からの報告などを基に、主に2月から8月初めまでの事項を中心に北朝鮮の安保理制裁違反などを指摘した中間報告書だ。
北朝鮮制裁委は報告書で、匿名の国連加盟国の報告として、北朝鮮北西部・寧辺のウラン濃縮施設が今なお稼働していると伝えた。寧辺核施設での軽水炉建設作業が続いており、施設近くを流れる九竜江の浚渫(しゅんせつ)が継続的に観測されているとした。南部・平山のウラン精錬施設と採掘場も、依然として稼働していると指摘した。
ただ、この期間に寧辺核施設の5メガワット原子炉の稼働兆候が確認されたことはなく、多くの加盟国は制裁委に対し、5メガワット原子炉で使用した核燃料棒が再処理施設に移されたかどうかについて判断できずにいると報告したという。
北朝鮮の弾道ミサイル計画に関しては、北朝鮮が5月4日と9日に試射した新たな種類の短距離弾道ミサイルと、7月の試射後に北朝鮮が「新型戦術誘導兵器」だと発表したミサイルは、固体燃料の生産やさまざまな形態の移動式発射台を利用した機動性などを習得する能力と、弾道ミサイル防衛システムを突破する能力を示す証拠だと評価した。
特に、5月4日と9日に試射した短距離弾道ミサイルは従来の北朝鮮のスカッドミサイルに比べて飛行軌跡が平坦になり、弾道ミサイル防衛システムを突破する北朝鮮の能力が向上したと強調した。北朝鮮がミサイル誘導システムを作り出す固有の能力を手に入れたと評価している。北朝鮮が短距離弾道ミサイルの開発で得た進展は、中距離弾道ミサイル、中長距離弾道ミサイル、ICBMなど弾道ミサイル計画全体に助けとなっていると北朝鮮制裁委は指摘している。
また、北朝鮮の目下の目標はICBM用の固体燃料推進体を開発することだとの見方を示し、ノドンミサイル(液体燃料)を配備済みの北側国境付近のミサイル基地に固体燃料を使用する中距離弾道ミサイル「北極星2」(KN15)が配備された様子が捉えられたと伝えた。
北朝鮮制裁委は、北朝鮮は東部・咸興のミサイル工場などで固体燃料の研究開発(R&D)と生産を活発に行っており、短距離弾道ミサイルの推進体からICBM用の固体燃料に至るまで、明らかな開発の進展がみられると評価した。北朝鮮が分散、隠蔽(いんぺい)、地下化した弾道ミサイルのインフラ施設を継続的に改善し、保管・支援施設の建設を続けていることも指摘した。
北朝鮮が解体を約束した北西部・東倉里のミサイル発射場については、昨年12月28日の衛星写真では発射台の上部が一部解体されていたが、今年3月にはこれを再建した様子が、5月には限定的な変更が加えられた様子が捉えられたとした。また、垂直式ミサイルエンジン試験台は手入れされ、「おそらく運用可能だ」と評価した。
さらに、北朝鮮はミサイルシステム全体を輸出するよりも、技術者を派遣してサプライチェーンを構築していると指摘し、こうした活動がイランやシリア、エジプトなどで行われていると明らかにした。中でも、シリアには北朝鮮のミサイル関連の技術者らが今なお滞在しているようだと伝えた。
北朝鮮は金銭的利益を得るため、偵察総局の主導で全世界の金融機関や仮想通貨取引所などを狙ったサイバー攻撃に力を入れている。北朝鮮制裁委は、北朝鮮による17カ国を相手にした最低35件のサイバー攻撃を調査しているとし、北朝鮮がこうした攻撃で奪った金額は最大20億ドルに上るとの分析を伝えた。
北朝鮮が瀬取りによる石油精製品や石炭の取引を続けていることも指摘した。北朝鮮への石油精製品の供給上限は安保理決議で年間50万バレルに定められているが、北朝鮮制裁委は北朝鮮が今年1月から4月にかけ、上限を超える量の石油精製品を瀬取りによって取得したとする内容の米国の報告書を紹介している。米国は6月、韓国を含む国連加盟国25カ国の署名を得てこの報告書を制裁委に提出した。
また、北朝鮮制裁委は北朝鮮が今年1~4月に少なくとも127回、計93万トン(約9300万ドル相当)の石炭を輸出したとの見方を示した。安保理決議は北朝鮮による石炭輸出を全面的に禁じている。
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