綱の上を跳ねるオルムサニ=(聯合ニュース)
綱の上を跳ねるオルムサニ=(聯合ニュース)
【安城聯合ニュース】韓国の伝統芸能である綱渡りをする人の頭領を「オルムサニ」と呼ぶ。数百人の観衆が、綱の上に立つ女性の演技、息づかい、足の動き、手振りなど一挙手一投足に歓声を挙げ、ため息をつき、泣いたり笑ったりする。 彼女はオペラのプリマドンナのように美しく優雅な姿で観衆を魅了したかと思うと、ハラハラする妙技で手に汗を握らせる。彼女の片頬につけられた無線マイクは綱を渡りながら荒くなる彼女の息づかいまで生々しく伝え、観客の焦燥感をあおる。 広場の上に張られた高い綱の上をひょいひょいと渡る女性オルムサニは、今度は片足で飛び始めた。 緊張しながら写真を撮り、カメラのモニターを拡大すると、彼女がポソン(韓国の足袋)を履いた足でかろうじてバランスを保っているのが見えた。 オルムサニは下でチャング(韓国伝統楽器)を叩く人に「メホッシ、今日はお客さんが拍子を上手く合わせますね」と言う。メホッシとは、プク(太鼓)やチャングを打ち、オルムサニの言葉に相づちを打つ役割をする人だ。 風物(プンムル)団の公演は、このように観客の反応が最も大きい伝統公演のうちの一つだ。 特に1本の綱の上で数十種類の技を見せる女性オルムサニには観客、特に多くの男性の心をつかむ美しさがあり、朗々とした声と綱を渡るしなやかな姿で最高の人気を得ている。◇王族にも愛された伝統芸能 公演を行っているのは、ソウル近郊の京畿道・安城市立男寺党パウドギ風物団だ。 パウドギという名は、朝鮮時代後期の実在のオルムサニの名前にあやかってつけられた。 物語は約100年前にさかのぼる。 本名は金岩徳(キム・アムドク)、韓国語で岩を指す「パウ」から「パウドギ」と呼ばれた。 朝鮮中に名声を広めたパウドギは、1848年に安城の貧しい小作農の娘として生まれ、貧しかったために男寺党(旅芸人の集団)に預けられて様々な芸を磨いた。 優れた美貌と才能は、彼女を15歳で男寺党の団長であるコクトゥセの座に押し上げた。彼女は満場一致でコクトゥセに選ばれたという。 朝鮮王朝第26代国王の高宗の父である興宣大院君が、景福宮の再建を担った人夫のために公演を行った際にパウドギは優れた芸を披露し、興宣大院君は彼女に玉貫子(官吏がつける装飾物)を下賜した。 このような伝統は現在も続いており、プリマドンナのような存在のオルムサニは、公務員に準ずる待遇を受けているといわれる。 この日公演を行ったオルムサニはソ・ジュヒャンさん(25)。若いソさんのしなやかな動作を見込んだ隣家の主人が、粘り強くソさんの父を説得したという。 風物団にはソさんを含めて女性オルムサニが2人、男性オルムサニが1人いる。 パウドギの公演が行われる間、演技者は安城の由来を聞かせてくれる。◇産業の中心地だった安城 大邱、全州地域と合わせて大きな市場が立つ産業の要衝地だった安城は、各地から集まる物産が豊富で、むしろソウルの市場より質の良いものもあった。 特に、安城には良質な真ちゅうの器が多かった。 裕福な家庭は安城で真ちゅうの器をあつらえて使ったことから、韓国語で「ぴったり」「おあつらえ向き」を意味する「安城マッチュム」という慣用句が生まれた。 安城市に位置する安城マッチュムランドには、男寺党伝授館や工芸文化センター、天文科学館などがある。 工芸文化センターに立ち寄ると、京畿道教育庁の「学校の外の学校」プログラムに参加した生徒らが工芸実習を行っていた。 週末に行われるこのプログラムでは、生徒らが教師の指導を受けながら金属を切断したり、溶接したりして金属芸術作品を作っていた。もう片方では女子高生らが刺繍の実習を行う姿も見えた。 すぐ横には四季そり場があり、その隣にはオートキャンプ場もある。冬にも関わらず、キャンプマニアらが家族と一緒に立派な施設でキャンプを楽しんでいる。温水が利用でき、シャワーや洗い物も可能だ。 キャンプ場には保温施設を備えたグランピング施設やキャラバンもあり、キャンプ用品を持っていない市民も楽しめるようになっている。 ◇安城以外の観光スポット 受験シーズンを迎え、受験生のいる家族なら七長寺を訪れてみたい。 七長寺は朝鮮時代後期の文官で、暗行御史(国王の命で地方に派遣され、悪政を摘発した特使)のモデルとして知られる朴文秀(パク・ムンス)が渡ったとされる橋があり、初冬の趣を味わいに訪れる価値のある場所だ。 安城市一竹面の大規模農園に足を伸ばすのもよい。 2000個を超えるチャンドク(かめ)が並び、醤油や味噌が熟成する様子を見ることができる。◇安城のグルメ 農園が運営する韓国料理店では、安城の水や豆を使って漬けられた味噌、醤油、コチュジャン、漬物などで作った食事を味わうことができる。 味噌のチゲとチョングッチャン(発酵させた大豆のペーストで納豆と風味が似ている)のチゲが1万ウォン(約1040円)未満だ。農園で栽培した豆で作った豆腐や、2年以上熟成させた古漬けのキムチで作った緑豆キムチジョン(チヂミ)も人気だ。
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