米国など主要国の首脳と相次ぎ電話会談する文大統領(青瓦台提供)=4日、ソウル(聯合ニュース)
米国など主要国の首脳と相次ぎ電話会談する文大統領(青瓦台提供)=4日、ソウル(聯合ニュース)
【ソウル聯合ニュース】 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領とトランプ米大統領が4日夜に電話会談し、北朝鮮の6回目核実験への対抗措置として韓米ミサイル指針で定められた韓国軍のミサイル弾頭重量の制限を解除することで合意したと、韓国青瓦台(大統領府)報道官が書面で発表した。韓米両国は1979年に初めてミサイル指針の取り決めに合意してから38年で、韓国軍の弾頭重量の上限が外されることになった。有事発生時に韓国軍が北朝鮮の挑発に対し独自の報復能力を備えるという点で重要な意味を持つ。 韓国は2012年の韓米ミサイル指針改定で、弾道ミサイルの射程を最大800キロに延ばしたものの、射程800キロのミサイルの弾頭重量は500キロまでに制限されたままだった。韓米首脳はこの上限を500キロから1トン程度に引き上げると見込まれていたが、制限自体を外すことにした。弾頭重量を大幅に増やせることになる。 韓国軍が保有する弾道ミサイルには、射程300キロの「玄武( ヒョンム )2A」、500キロの「玄武2B」、800キロの「玄武2C」などがある。玄武2Aと玄武2Bはそれぞれ実戦配備済みで、玄武2Cは先月24日に最後の試験を終え実戦配備を控える。 玄武2Cは韓国南部に配備しても北朝鮮全域を攻撃可能な弾道ミサイルながら、弾頭重量が500キロまでに制限されているため威力に限界があった。軍事専門家によると、飛行場の滑走路を破壊する程度にとどまる。北朝鮮が核・ミサイル関連施設をはじめとする主要施設を地下に構築した点を踏まえると、重要な標的を実質的に攻撃するには力不足だ。 しかし、弾頭重量を1トン以上に増やす場合、地下数十メートルにある施設も破壊することができるといわれる。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長ら北朝鮮指導部が有事発生時に首都・平壌を捨てて白頭山近くの三池淵など北朝鮮北部の地下施設に潜んでも、韓国軍の弾道ミサイルによる精密打撃から逃れられなくなる。 韓国軍は玄武2Cをはじめとする弾道ミサイルが大きな重量の弾頭を搭載できるよう、性能改良に着手する見通しだ。威力の強い新型弾道ミサイルの開発もあり得る。 シンクタンク「韓国国防安保フォーラム」のシン・ジョンウ分析官は「韓国はミサイル指針に従い一定水準以上の弾道ミサイルを開発しなかっただけで、基本的な技術は持っている。破壊力と精度に優れた新型ミサイルの開発に長い時間はかからないだろう」との見解を示した。 韓米首脳の合意により韓国軍ミサイルの弾頭重量制限がなくなったことで、北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対抗する韓国軍独自の3軸体系の一つ、「大量反撃報復(KMPR)」)の実効性も高まりそうだ。KMPRは北朝鮮が韓国を核攻撃する場合、韓国が北朝鮮指導部をはじめ主要施設に弾道ミサイルを大量発射して破壊する強度の報復であり、北朝鮮の挑発を抑止する効果を持つ。 韓国が朝鮮半島非核化の原則に基づき核兵器を保有していない状況で、通常兵器により一定の威嚇のバランスを取る概念といえる。通常兵器の威力は核兵器に及ばないが、軍事技術の発達により、高度の破壊力と精度を備えた通常兵器を多数発射すれば核攻撃に準ずる効果を発揮できるというのが専門家の見方だ。1トン以上の高威力の弾頭を搭載した玄武系列の弾道ミサイルを北朝鮮の特定地域に降り注ぐように発射すれば、地上、地下とも焦土化という水準まで破壊することができるという。 韓国軍の弾頭重量制限の解除は、実質的に弾道ミサイルの射程を延ばす技術の開発へ可能性を開いたとする見解がある。射程は弾頭重量に反比例することから、射程800キロの弾道ミサイルに1トン以上の弾頭を搭載する技術を開発することができれば、弾頭重量を減らすだけでも射程を大幅に延ばすことができるためだ。韓国軍が射程1000キロ以上のミサイル技術を確保することにつながるとされる。  韓米ミサイル指針上ではまだ射程制限が残されているように見えるものの、弾頭重量制限が外されることで韓国は「ミサイル主権」をある程度回復したとも評価される。こうした制限は、韓国や日本など北東アジアの同盟国を保護する米国が域内の軍拡競争による緊張の高まりを防ぐために設けた措置といえるが、北朝鮮が弾道ミサイル技術を誇示するたびに韓米ミサイル指針への批判も強まっていた。 今回の韓米首脳の合意を機に、韓国軍は米国の保護にばかり頼るのではなく、北朝鮮の核・ミサイルの脅威を独自に抑止する力を伸ばすものと見込まれる。
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