【ソウル聯合ニュース】日本の安倍晋三首相が先ごろオバマ米大統領とともに米ハワイの真珠湾を訪問したことは、両国の同盟関係の強さをアピールするための高度な「政治イベント」と見なせる。オバマ大統領が演説で述べた通り、「戦争の傷を友情に変えられ、かつての敵同士が同盟になれる」ことを満天下に示した格好だ。真珠湾は両国間の太平洋戦争の始まりとなった場所だ。1941年の旧日本軍による真珠湾攻撃では、民間人を含め米国人2403人が犠牲になった。 安倍首相は27日(日本時間28日)、攻撃で沈没し、今も犠牲者と共に海底に沈む米戦艦「アリゾナ」の真上に建つ犠牲者追悼施設「アリゾナ記念館」を訪れた。日本の現職首相の訪問は初めてだ。 安倍首相は演説で「戦争の惨禍は二度と繰り返してはならない」と述べ、戦後の日本が「不戦の誓い」を貫いてきたと強調した。また、戦争を戦った米国と日本が「希望の同盟」になったとし、「世界中の人々が真珠湾を和解の象徴として記憶し続けてくれることを願う」と述べた。 米国との和解を口にする一方で、過去の侵略戦争に対する謝罪や反省には予想通り言及しなかった。後ろ向きな歴史認識を示しただけで、真摯(しんし)な歴史の省察はなかった。これをめぐり、米国とさえ和解すれば日本のアジア侵略は忘れ去られるのか、との批判が強まっている。中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報は社説で「日本が本当に歴史問題の和解を追求するのなら、真珠湾ではなく中国と韓国を訪れるべきだ」と指摘した。また、米国と日本の歴史学者ら50人余りは25日、安倍首相への公開質問状で、真珠湾攻撃で亡くなった米国人を慰霊するのであれば「中国や朝鮮半島、アジア諸国の戦争犠牲者も慰霊する必要があるのでは」と問いただした。 韓国は安倍首相の歴史認識を批判しつつも、素早いフットワークで外交面での実利を得る、その動きを注視せざるを得ない。安倍首相はトランプ氏が米国の次期大統領に決まるや、どの国の首脳よりも早くニューヨークに飛び、トランプ氏と会談した。一見すると、今回の真珠湾訪問は今年5月のオバマ大統領の被爆地・広島訪問に対する返礼とも受け取れる。だが、来年1月に就任するトランプ氏に両国関係の重要性をあらためて示す狙いもあったはずだ。 トランプ氏は、安倍首相が発効を目指してきた環太平洋連携協定(TPP)からの離脱を宣言し、在日米軍駐留経費の日本側負担に不満を示すなど、両国関係を見直そうとする動きを見せてきた。米中関係の土台となってきた、台湾を中国の一部とみなす「一つの中国」政策に縛られない姿勢も示した。中国を揺さぶるため、ロシアとの関係を改善しようとする動きもある。トランプ政権の発足を目前に控え、朝鮮半島を取り巻く情勢が激動している今、韓国外交・安全保障当局の緻密な対応がいつも以上に求められている。
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