【ソウル聯合ニュース】ソウル中央地裁が29日、ロッテグループ創業者である辛格浩(シン・ギョクホ、日本名:重光武雄)氏の次男、辛東彬(シン・ドンビン、日本名:重光昭夫)韓国ロッテグループ会長に対する横領・背任容疑の逮捕状請求を棄却し、ロッテはトップの身柄拘束という最悪の事態を免れた。 だが、ロッテの事態を見守る国民の心情は複雑だ。オーナー家に対する容疑と疑惑は横領、背任、脱税、不当な系列会社支援、兄弟間の経営権紛争などで、韓国財閥に典型的な不正のオンパレードといっても過言ではないためだ。 検察は東彬氏の横領、背任容疑の不正金額がそれぞれ500億ウォン(約46億円)台、1250億ウォン台に上ると指摘した。また、東彬氏は兄の辛東主(シン・ドンジュ、日本名:重光宏之)氏と昨年から泥沼の経営権争いを続けている。財閥オーナー家の兄弟争いがこれほど長く続くのも珍しい。 韓国5位の財閥であるロッテは、経営権争いと検察の捜査でまさに満身創痍(そうい)の状態だ。ロッテがふらつけば、ただでさえ厳しい状況にある韓国経済が大きなダメージを受ける。東彬氏が逮捕されれば、韓国ロッテグループの経営権が日本のロッテホールディングス(HD、本社・東京)に移る可能性も懸念されていた。韓国ロッテグループの事実上の持ち株会社、ホテルロッテの株式は9割以上をロッテHDなど日本系が握っている。 検察による東彬氏の事情聴取から逮捕状請求までに6日かかり、裁判所が逮捕状請求を棄却したのも、こうした懸念を意識したためだろう。検察が経営不正の容疑で請求した財閥オーナーの逮捕状を裁判所が棄却するのは異例だ。 東彬氏をはじめとするオーナー家は新たに生まれ変わる覚悟で、透明かつ正しい経営に力を入れるべきだ。兄弟間の骨肉の争いをやめ、一日も早くグループを安定させ、支配構造の改善にまい進することで国民の信頼を取り戻してほしい。 韓国の財界では、主要グループのオーナーで不正により検察の捜査を受けなかった人、処罰されなかった人を探すのが難しい。横領、背任、脱税、裏金、特定企業への仕事の集中発注、経営権争い、不当な報酬の受領、政界・官界へのロビー活動、許認可をめぐる不正などは、企業オーナーたちが処罰を受ける定番の理由だ。その背景には、前近代的なオーナーによる「皇帝経営」がある。オーナーたちがわずかな持ち分でグループを牛耳っているのが実情なのだ。ロッテの一連の事態が、韓国の財界を正しい経営へと向かわせる契機になるよう期待する。 また、検察が無理な捜査を行ったとする批判にも耳を傾ける必要がある。裁判所は逮捕状請求を棄却した理由を「主な犯罪容疑に対する法理上の争いの余地などを考慮すると、拘束の必要性、相当性を認め難い」と説明した。今回の捜査は3カ月以上続き、500人余りのグループ関係者が事情聴取を受け、経営がまひするほどだった。それほどの捜査を行ったにもかかわらず、検察は当初の目標としていたオーナー家の裏金を見つけられず、政界・官界へのロビー疑惑、許認可をめぐる不正の捜査もきちんと進められなかった。 経済活動に打撃を与えざるを得ない企業捜査は、迅速かつ正確に行うのが原則だ。検察は、今回の捜査が原則と目的に沿って進められたかどうかを振り返る必要がある。
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