【ソウル聯合ニュース】北朝鮮では先ごろ、北東部の咸鏡北道地域で大規模な洪水が発生し、現地では十分な装備もないまま住民たちが復旧作業を続けているという。だが北朝鮮当局は住民の苦痛に目を向けず、9日に5回目の核実験を強行し、数日後には事実上の長距離弾道ミサイルを再び発射する可能性を示唆した。正常な国なら到底ありえないことだ。核とミサイルの挑発を繰り返す金正恩(キム・ジョンウン)政権に、住民の疲弊した生活をまず何とかしろと言っても、もはや全く届かない。 北朝鮮メディアは20日「静止衛星運搬ロケット用の新型大出力エンジン」の燃焼実験に成功したと報じ、金正恩朝鮮労働党委員長が「衛星発射場」を視察したと伝えた。 韓国軍当局は、長距離ミサイルに使用可能な高出力新型エンジンの性能実験を行ったとみている。北朝鮮は「衛星運搬ロケット」と主張するが、ロケットの発射角度を調節し、大気圏再突入技術を搭載すれば、すぐに長距離ミサイルに転用できるという。 金委員長は視察の場で「衛星」の打ち上げ準備を急ぐよう指示しており、来月10日の党創建記念日を前後して北朝鮮が再び長距離弾道ミサイルを発射するとの見方が出ている。 今回の実験を大陸間弾道ミサイル(ICBM)のエンジン実験だと指摘する専門家もいる。北朝鮮が主張した通り新型エンジンの推進力が80重量トン(tf)だとすれば、4基を束ねて使う場合、米国本土全域を狙える十分な威力のICBMの開発が可能になるという。北朝鮮による核弾頭の実戦配備が近づいているのに加え、ICBMの脅威までもが目前に迫っているのだ。 こうした状況のなか、韓国政府は北朝鮮を変化させるため国際社会の先頭に立って一層の圧力をかけていくべきだ。国連総会が開催中の米ニューヨークで、外交力を総動員して既存の北朝鮮制裁の「抜け穴」を埋める努力をしてほしい。 結局のところ、鍵を握るのは中国だ。これまで北朝鮮制裁の問題点と指摘されてきた中国の手ぬるい対応は、韓米民間機関の共同研究結果にも表れている。韓国の峨山政策研究院が先ごろ発表した資料によると、北朝鮮の企業などと直接的または間接的に関わりを持ちながらも国際社会の制裁を免れた中国の企業、個人、船舶はこの5年間で562に達する。 また、核開発関連物資を数年にわたり北朝鮮に輸出していた疑いのある中国の遼寧鴻祥実業集団に対し、中国当局は米国の要請を受けて捜査に着手したと伝えられる。そんな風では、北朝鮮政権に圧力をかけるための制裁決議を何度採択しても役に立たないだろう。 表では対北朝鮮での協力を口にしながら、裏では金正恩政権に「出口」を開いてやるという矛盾した態度は、朝鮮半島の安定を望むと公言する責任ある大国が取るべき姿勢ではない。北朝鮮制裁の実質的な履行を中国当局にあらためて求めたい。
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