【ソウル聯合ニュース】北朝鮮と日本が29日発表した日本人拉致問題の再調査合意と調査開始後の日本による独自制裁の一部解除について、韓国政府は朝鮮半島情勢への影響を注視しているようだ。
 日朝合意発表から約5時間後に韓国政府当局者が表明した政府の立場は、人道的な次元で日本人拉致問題に対する日本の立場を理解するとしながらも、北朝鮮の非核化問題に関しては対北朝鮮協調を持続させる必要性を強調するものだった。 
 北朝鮮では4回目核実験を準備する動きが観測されている。こうした微妙な状況で日本が拉致問題の解決を理由に北朝鮮との関係改善に向かおうとしていることに、韓国政府内では韓米日の対北朝鮮協調への悪影響を懸念する声が少なくないとされる。
 韓国政府は、日本の発表直前に外交ルートを通じ合意内容を知らされたもようだ。合意内容そのものはおおむね予想されていた水準だが、突然の妥結と合意発表のニュースに当惑した。そのため、韓国が日本に「不意打ち」を食らったのではないかという指摘も一部で出ている。
 韓国はこれまで、「日本人拉致問題など日朝協議も北朝鮮の核・ミサイル問題と同様に、韓米日間の緊密な意思疎通と協議の下で対応すべきだ」と強調してきた。外交の専門家からは「北朝鮮核問題が大変微妙な時期での日朝合意が、国際協調、韓米日協調の弱体化につながらないことを願う」との意見もある。
 北朝鮮核問題の解決に向け国際的に団結すべき重要な時期での安倍内閣の独断行動に、韓国政府は心中穏やかでない。ある政府筋は「日本の北朝鮮制裁は拉致問題でなく、北朝鮮の核・ミサイル問題に対し取られた措置」と指摘した。核・ミサイル問題に進展がない状態で北朝鮮制裁が緩和されることを警戒する発言といえる。
 政府内では、北朝鮮が拉致問題に対する日本の高い関心を利用して対北朝鮮協調を乱し、さらには経済的な支援を得る思惑で合意したのではないかとの分析がある。別の政府筋は、北朝鮮としては制裁が大きく緩まることはなさそうで、むしろ日本のほうが国内の政治状況もあって積極的に動いたのではないかと話している。
 一方、北朝鮮は今回、対話に向けたシグナルを明確にしておらず、この合意に対話攻勢が伴うとみるのは難しいとの分析が多い。
 日朝合意が今後実質的な関係改善に進展するかについても、韓国政府内では慎重な意見が多い。拉致問題に対し双方の立場に隔たりがあり解決が容易でない上、日本の独断的な行動に米国などが歯止めをかけようとする可能性もあるためだ。
 韓国だけでなく米国も、北朝鮮核・ミサイル問題という枠組みの中で拉致問題も進展させる必要があるとの立場だ。
 ある北朝鮮問題の専門家は「究極的には日本も、北朝鮮核問題の進展がないまま拉致問題だけを進めることはできないだろう」との見解を示した。

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