脱北者強制送還の国際問題化　北朝鮮家族は懸念

【ソウル聯合ニュース】「南朝鮮は何で大げさに騒ぎ立てているのか。南朝鮮の新聞で息子が（韓国に）行こうとして捕まったと報じられた。もうあいつは死んだ」――。
　北朝鮮の咸鏡北道に住むチョンさん（仮名）は北朝鮮を脱出し、ソウルに居住している娘に電話でこう話した。
　20代過ぎのチョンさんの息子は今月初めに脱北して中国入りしたが、瀋陽で公安当局に摘発され、中国吉林省・図們に移送されているという。
　数年前、韓国に入ったチョンさんの娘は弟を韓国に呼び寄せるため、ブローカーに金を渡したが、ブローカーから「弟たちが中国公安に逮捕された」との報告を受けた。
　脱北者らによると、北朝鮮に送還された脱北者は単純な越境者と韓国行きを企てた者に分類される。韓国を目指した者は咸鏡北道の保衛部に移送され、3～5年の教化（懲役）刑を受けるという。
　だが、今回送還される脱北者らは金正日（キム・ジョンイル）総書記の哀悼期間に脱出したのに加え、国際的に知られたため、10年刑を言い渡される恐れがあると指摘する。「教化所（監獄）は政治犯収容所より恐ろしいところだ。10年の刑期を終え、生きて出た人は一握りしかいない」と話す。
　自身のいとこが18日ごろ、北朝鮮に送還されたことをメディアに伝えたキムさん（仮名）は23日、北朝鮮にいるいとこの兄から電話をもらった。保衛部で調べを受けている妹を助けるため、同部の幹部を買収しようとしたが、「今回は上でも南朝鮮に行こうとしたと判断しているので、われわれも手の施しようがない」と難色を示されたという。
　「韓国では今回逮捕された人たちは銃殺されると大騒ぎだ。韓国メディアも連日のように大きく取り上げている」と話すキムさんに対し、いとこの兄は「もういい加減にしてほしい。本当に死刑にされれば、責任取ってくれるのか」と激怒した。
　ある脱北者は「中国の脱北者送還はいまさらのことではない。韓国メディアがいくら騒ぎ立てても中国はびくともしない。韓国政府も中国を刺激してはならないと戦々恐々としているのに、何が変わるのか」と嘆いた。　　
　北朝鮮消息筋らは中国が毎年数千人の脱北者を北朝鮮に強制送還していると推定している。脱北ブローカーは「北朝鮮に送還される予定の脱北者が吉林省の国境部隊のデータだけでも約200人に上る」との話を買収した看守から聞いたと伝えた。
　脱北者の救出事業を行っている人権団体関係者は「今回送還される脱北者は加重処罰を受けるだろうが、国際社会が中国の脱北者強制送還に関心を持つようになったのは大きな成果だ」と話した。同関係者は「いつかは問題化されなければならいことだった。今後、脱北者の送還を防ぐためには、この問題をさらに多くの人に広げなければならない」と強調した。