英ロンドンの著名な安保分野シンクタンク、国際戦略研究所（IISS）のフィッツパトリック所長は21日、北朝鮮分析報告書でこうした見解を示した。報告書は約200ページにわたり、北朝鮮の軍事力や北朝鮮が直面した内外状況を詳細に分析している。
◇核・ミサイル能力
北朝鮮は現在、核兵器を製造するのに十分なプルトニウムを確保しているが、その量を正確に見積もるのは難しい。およそ4～12個の核兵器を製造できるプルトニウムを保有していると見込まれる。
また、北朝鮮が信頼でき発射が可能な核兵器の開発を完了したとは断定し難い。それにもかかわらず、北朝鮮は追加核実験を通じ、十分な軌道再突入技術を備えた弾道ミサイルに装着するための弾頭を開発すると予想される。
北朝鮮はしばしば、国の防衛のために核兵器を使用できると言及してきたが、実際には主に政治的切り札としてこれを活用してきた。ただ、最近は政治的、経済的利益を得る代わりに核兵器を手放すという国際社会との交渉に出席していない。
北朝鮮のミサイル開発計画も同様に、外交カードとして使われている。北朝鮮は世界でも有数の規模を誇る弾道ミサイル工場を建設し、ミサイルを各国に輸出している。また、長距離ミサイルとこれに転用できる衛星の打ち上げ実験も行ってきた。だが、ファソン、ノドン、ムスダン、Kn－02短距離弾道ミサイルなどのパーツは外国からの輸入に頼っている。そのため、こうした貿易を断つか、減らすことができれば、北朝鮮はミサイルの大量輸出が難しくなる。
◇南北の軍事力比較
国防費を見ると、北朝鮮は対国内総生産（GDP）比22～24%の82億ドル（2008年基準、約6400億円）、韓国は対GDP比2．6%の250億ドル（2010年基準）と、大きな差がある。地上軍は北朝鮮が120万人、韓国が65万5000人（在韓米軍2万8000人含まず）、戦車は北朝鮮が4100台、韓国が2400台。空軍戦闘機は北朝鮮が820機、韓国が460機、ヘリコプターは北朝鮮が300機、韓国が680機だ。
海軍力を見ると、満載排水量が1500トン以上の艦艇は北朝鮮が3000隻、韓国が19隻と大きな開きがある。1500トン以下の艦艇はそれぞれ383隻、111隻。潜水艦は北朝鮮が70隻、韓国が23隻と、やはり北朝鮮が多い。
◇北朝鮮の4つの危機
北朝鮮は一見、金正日（キム・ジョンイル）総書記から三男・正恩（ジョンウン）氏への権力継承がスムーズに進んでいるように見えるが、正恩氏は経験不足、ぜい弱な権力基盤、軍部の干渉など大きな弱点を抱えている。北朝鮮の内外環境は、金総書記に権力が移されたときよりもはるかに悪化しているため、北朝鮮は軍事的挑発や大量破壊兵器に依存するなど、さらに危険な国になる可能性もある。
北朝鮮政権は国際社会に対抗し、核保有国としてのポジションを固めてきたが、今の北朝鮮が直面した危機はさまざまな要因が絡まり合っており、深刻な水準に達している。そのため、北朝鮮政権は今、劇的な変化のピークにいるとみることもできる。
北朝鮮の危機は4つの側面からみることができる。まず、権力継承は独裁政権のアキレスけんだ。故・金日成（キム・イルソン）主席はこれを考慮し、金正日総書記への権力継承を30年かけて入念に準備してきた。だが、金総書記は正恩氏の後継者指名が遅かった。金総書記の死期が早まるほど、権力がスムーズに引き継がれる可能性は低くなる。
経済事情の悪化も大きな危機要因だ。北朝鮮はこの20年間、経済が後退し、住民は旧ソ連の援助を受けていた1989年よりも貧しい生活をしている。
国際社会との関係も危機に陥っている。北朝鮮はこれまで、韓国とアジア、世界に好戦的な姿勢を見せることで緊張状態を作り出すという戦術を取ってきた。だが今では、国際社会がそうした北朝鮮の態度にうんざりしている。昨年の仁川・延坪島砲撃と韓国海軍哨戒艦「天安」爆沈事件は、北朝鮮が再び軽はずみな行動をすれば、韓国が強く対応せざるを得ない状況を作り出した。
最後に、これよりはるかに実質的な危機は、北朝鮮内部にみることができる。北朝鮮は常に正当性を備えた政権だと強調してきたが、中国からの援助と政治的支援に依存するようになり、自らが誇ってきた主体思想を放棄している。貧困に苦しむ住民の間で、「うらやましがることはない」という主体神話は空虚な言葉に変わりつつある。
北朝鮮が韓国を侵略する可能性は今や低くなっている。長期にわたり経済が衰退を続けているうえ、韓国が戦力を増強したためだ。ただ、北朝鮮は韓国を侵略することはなくても、韓国に危害を加え、テロを敢行するさまざまな手段を有している。
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