【ソウル23日聯合ニュース】北朝鮮が23日午後、黄海上の軍事境界線と位置付けられる北方限界線(NLL)に近い仁川・延坪島一帯に向け、砲撃を行った。これまで韓国領土に北朝鮮の砲弾が着弾した前例はなく、北朝鮮専門家らは「衝撃的かつ深刻な状況」との反応をみせている。
 また、韓国軍が延坪島の沖合いで22日から実施している「護国訓練」に対する反発と伝えられているが、「今回の海岸砲攻撃が偶発的に発生した可能性はない」と、専門家らは口をそろえた。
 予想外の北朝鮮の挑発は、背景にまず、南北関係と対米関係のこう着状態に揺さぶりをかける狙いがあるとみられる。ウラン濃縮施設を公開するという「切り札」にも、韓米両国に従来の基調を変える兆候がみられず、軍事的挑発という極端な手段を用いたとの分析だ。
 韓国国防研究院の金泰宇(キム・テウ)責任研究委員は、北朝鮮は韓国政府に対し、金剛山観光と北朝鮮核問題をめぐる6カ国協議の再開を求めていたが、韓国側にこれといった態度変化がなく、軍事的圧迫に乗り出したものだろうと指摘した。深刻な経済難など、解決が急がれる国内問題を反映した挑発という可能性もあると述べた。
 西江大学のキム・ヨンス教授も、金剛山観光再開の提案に韓国が応じなかったため、軍事的危機を高め、突破口を開く狙いだろうと話した。
 今月に北朝鮮を訪問した米国の核専門家に北朝鮮側が何度も強調したとされる2000年の「米朝共同コミュニケ」の内容に注目する専門家らもいる。コミュニケに盛り込まれた「朝鮮戦争休戦協定の平和体制への転換」と関連し、朝鮮半島の軍事的不安定を浮上させることで、平和体制の構築が急がれているというメッセージを米国に伝えようという考えだとの見方だ。
 キム教授は、「国際的争点のNLL問題に絡めてこそ、米国が食いつくことを北朝鮮は知っている」と指摘。米国を対話のテーブルにつかせるための、ウラン濃縮施設公開に続く布石だと分析した。
 北朝鮮内部の政治的必要に伴った砲撃という見方も出ている。金正日(キム・ジョンイル)総書記から三男の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党中央軍事委員会副委員長に権力を継承する過程にある北朝鮮が、住民の結束を図るため、軍事的危機感を高めているとの指摘だ。
 高麗大学の柳浩烈(ユ・ホヨル)教授は、後継構図を構築する過程では内部管理が必須なだけに、強硬な軍事的対応で危機感を作り上げ、住民の結束を図る狙いだろうと話した。
 そのほか、可能性は高くないが、一部強硬勢力の過度な忠誠が原因だとする分析も出ている。

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