【ソウル1日聯合】北朝鮮・金剛山で発生した韓国人観光客、パク・ワンジャさん射殺事件を調査中の政府合同調査団は1日、パクさんが停止またはゆっくり歩いている状態で100メートル以内の距離から撃たれたとする模擬実験結果を発表した。北朝鮮軍はパクさんが何者か確認することができる状態だったにもかかわらず銃撃した「意図的な射撃」という推論を可能にし、北朝鮮側の過剰対応の疑惑も高まった。
 北朝鮮側は先月訪朝した現代峨山の尹万俊(ユン・マンジュン)社長に対し、北朝鮮軍兵士がパクさんを発見し「動けば撃つ」と制止したが、パクさんが逃走したため威嚇射撃を1発撃った後、3発の照準射撃を加えたと説明した。しかし調査団は、距離別射撃実験やパクさんの太ももに残った傷などを基に、最初の銃弾がパクさんの足元に着弾し、はじかれた砂や貝殻などが太ももに当たったためパクさんは立ち止まり、その後にでん部と背中に銃撃を受けたと推定した。これが事実であれば、パクさんは最初に逃走したとしても途中で立ち止まっており、北朝鮮兵士はパクさんを確認できる状態だったにもかかわらず銃撃を止めなかったという推論が可能となる。

 また、北朝鮮軍当局の調査報告書には、兵士がパクさんを追撃する過程で、双方の距離が徐々に広がったと記されていたと伝えられるが、模擬実験の結果では、追撃中だった場合の射程距離は60メートル程度にすぎない。この程度の近さであれば、最初の銃撃後に立ち止まったパクさんに相次ぎ銃撃を加える必要があったのかという疑惑も持ち上がる。特に、事物識別実験の結果、午前5時ごろでも70メートルの距離で男女の識別が可能だと判明している。北朝鮮兵士が、相手が韓国側観光客だということに気づいた可能性も排除できないとの指摘される。

 射撃方向に関しては、パクさんの前か後ろどちらか一方にそれぞれ2発を撃ったか、前後にそれぞれ1発ずつ撃った可能性のいずれも成立するとし、銃撃を加えた兵士が1人以上だった可能性を示唆した。

 パクさんの移動経路、正確な銃撃時刻、銃撃を加えた兵士の数など、事件の真相を解明する核心的な手がかりは依然として究明されていない。現場調査が行われない以上、限界があることを改めて確認させた。

 調査団は今回の実験で、パクさんと身体条件が類似した50代の女性が現場と同じ距離の砂浜や散策路を歩いたり走ったりした場合の所要時間を測定した。調査結果を総合すると、宿泊していたホテルからフェンスまでの距離、1.1キロメートル程度を歩くのに16分46秒、北朝鮮側の説明通り、フェンスを通り過ぎ北朝鮮側の見張り所の方向に向かい砂浜を歩いて800メートル移動した後、再び500メートルを速い速度で走って移動するのに14分59秒、合計で31分5秒ほどかかったと分析された。

 先に発表された北朝鮮側の主張と調査団の中間調査結果では、パクさんは37~58分間かけて2.4~3.2キロメートルを移動したとの予測が可能だった。しかし、パクさんの正確な移動経路が把握できないためいつ境界フェンスを越えたのかが分からず、この結果だけでは移動距離と時間に対する北朝鮮側の主張の妥当性について判断することは困難だと、調査団は説明する。今回の事件が意図的なものだったかどうかについても、調査団は判断を留保した。

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