【ソウル13日聯合】米国で牛海綿状脳症(BSE)が発生すれば牛肉の輸入を即刻中断するという韓国政府の方針を米国が受け入れたことから、韓米牛肉交渉の当初の妥結内容に比べ「検疫主権」面の補強が可能になった。米国は韓国で牛肉交渉結果をめぐる疑惑と批判が激しさを増すのをみて、これを鎮めるために韓国の検疫主権をひとまず口頭で認めた。米国産牛肉に対する韓国の世論が悪化し続ける場合、米国が牛肉を輸出するとしても強い抵抗に遭い実益は無いためだ。しかし現時点としては、両国の上層部関係者がこの部分で口頭で合意したという水準のため、これを新たな輸入衛生条件の告示内容に確実に反映させようという野党側の交渉やり直し要求が強まる公算が大きい。
 米通商代表部(USTR)のシュワブ代表は12日(ワシントン時間)、韓昇洙(ハン・スンス)首相が8日に声明を通じ、米国産牛肉輸入に関し国民の健康保護を政策で最優先で考慮すると明らかにしたとし、「米国は韓首相の声明を受け入れ支持し、他のいかなるものも要求しない」と述べた。関税および貿易に関する一般協定(GATT)と世界貿易機関(WTO)の衛生植物検疫措置の適用に関する協定(SPS)で、各国政府が自国民の安全と食品安全を保障することができる主権を保護していると言及し、韓国の検疫主権を認めた。また、李明博(イ・ミョンバク)大統領は13日の閣議で、米政府が韓国首相の談話文内容を受け入れ、問題が生じる時には韓国による牛肉輸入の中断を受け入れ、GATT第20条も認めたと話している。

 しかし、こうした韓国政府の検疫補強策は、先月18日に妥結した衛生条件の合意文と相反する内容で、実効性について問題提起が続いていた。合意文の第4、5条は米国でBSEが新たに発生した場合について、「国際獣疫事務局(OIE)がBSEのステータス分類で米国に否定的な変更を認める場合、韓国政府は牛肉輸入を中断する」と定めている。つまり、米国でBSEが発病したという理由だけでは韓国政府は直ちに牛肉輸入を防ぐことはできず、米国をBSEリスクを管理できる国としたOIEのBSE関連ステータスが下げられる場合にのみ輸入を中断できることになる。

 これに対し韓国政府は、WTOの前身であるGATTの規定を用いれば輸入中断が可能との論理をかざしてきた。GATT第20条b項には、人や動植物の生命・健康保護のために必要な措置は適用例外としており、この措置に輸入・交易の中断が含まれる。

 シュワブ代表の発言をそのまま受け取れば、米国でBSEが発生し韓国政府が衛生条件には盛り込まれていない輸入中断措置を取ったとしても、これを問題視しないという意味と解釈できる。韓国政府としては、これまで「屈辱交渉」「検疫主権の喪失」という非難の根本に挙げられていた交渉内容について、米国の助けで申し開きができることになったわけだ。米国としても輸入衛生条件の原文にこだわるよりは、「韓国の検疫主権を尊重する」というメッセージを伝えることで米国産牛肉に対する韓国社会の抵抗を一掃することが、この先の牛肉貿易に有利と判断したものと考えられる。

 しかし、BSE発生時の輸入中断措置に対する両国の合意が明文化していない状態で、米国で政権が交代しても実行を担保できるかという問題が残る。米国でBSEが発生していない現時点では韓国政府の方針に米国が異議を唱えないことはありえるが、実際にBSE問題が起きて韓国が国民に約束した通りに輸入を中断し貿易上の打撃が長引く場合、米国が衛生条件違反を主張して協議を要請してくる可能性は十分あるためだ。シュワブ代表の発言も、GATTの規定などを引用しながら韓国が輸入禁止措置を取る権利を持つという点だけを認めたもので、その措置に対し今後も米国が何の対応もしないということなのかは明瞭ではない。

 こうしたことから野党側は、15日に予定された新たな輸入衛生条件の告示を先延ばしにし、この部分を明確に条件に入れようと要求するものと予想される。その場合は事実上再交渉となる。

 また、検疫主権問題がある程度おさまったとしても、米国産牛肉開放とBSEリスクをめぐる問題全体が落ち着くかどうかも未知数だ。最近では米国側の不十分な動物性飼料措置の内容を韓国政府が誤訳するというミスがあり、新たな論争の火種となっている。

Copyright 2008(C)YONHAPNEWS. All rights reserved. 0