アフガニスタン韓国人拉致・殺害事件は人質19人の解放で終結したが、信徒をアフガニスタンに送り出した盆唐セムムル教会の責任論が持ち上がっている。同教会は政府の渡航自粛要請にもかかわらず安全対策もないままアフガンでの宣教活動を強行、事件発生後は「宣教活動」という事実を隠そうとしていたなど、事態の中心から逃れようという態度をみせていたと指摘されている。
 セムムル教会が信徒をアフガンに渡航させる前、すでに現地では4~5件の外国人拉致事件が発生していた。武装勢力タリバンが収監兵の釈放のため韓国人拉致を計画しているという情報も入手されていた。このため外交通商部は2月5日、「韓国人拉致の危険があるため、旅行は自制してほしい」とする公文を韓民族福祉財団などアフガンのボランティア活動団体に送付した。同財団はセムムル教会のパク・ウンジョ牧師が理事長を務めており、今回人質となった信徒たちはビザ発給が困難となったため、財団のボランティア団員としてビザを申請、発給を受けている。

 また、教会は4月1日までアフガンボランティア団員を募集しているが、このとき「アフガン短期宣教志願書」を作成しており、アフガン渡航の目的は宣教だったことが明らかになっている。アフガン韓国人会のパク・ジェボク総務は「今回の事件はビザを申請した韓民族福祉財団、セムムル教会、引率者らが所属していた団体に直接の責任がある」と話している。

 セムムル教会の送り出したボランティア団員たちは貸し切りバスに乗り、高速道路を利用しカブールからカンダハルに移動している途中、ガズニ州カラバグで拉致された。身辺の安全が保障されない高速道路を、現地の住民が利用するバスではなく華美な貸し切りバスで移動していたため、拉致の標的になったと分析される。現地専門家らは、「紛争の中心部であるカンダハルまでは7時間かかる旅となる。貸し切りバスの利用は明らかに外国人と分かる愚行」と指摘する。現地警察の話では、団員たちは身辺警護などもなく、タリバンの攻撃が頻発するカブール~カンダハル間の移動計画も警察に通知されていなかった。

 事件発生後、インターネット上にセムムル教会に対する叱咤の声が相次ぐと、教会側は「非難世論にはまったく根拠がなくデマのようなものが多い」と発言するなどしていた。人質となった団員らの家族の多くは、子どもがアフガンに渡航した事実を知らされておらず、事件発生後にもただちに連絡を取らないなど、教会の対応不備が目立った。殺害されたシム・ソンミンさんの父親は、「なぜ戦場に等しい場所に人を連れて行っておきながら、家族に一言も言わずにいられるのか理解できない」と教会側に対する怒りをあらわにしている。

 また教会は、宗教的色合いが明らかになっては人質の身辺に危険が生じるとして、教会、宣教、信徒などの言葉を使わないようメディアに要請した。事件発生直後、教会関係者は「人質となった団員らは医療ボランティアとして渡航し、多くが大学生、看護士」だと発表しているが、実際には医学部学生はおらず、現職の看護士、看護士経験者もごく少数だった。メディアに報道自制を要請しながらも、最初に解放されたキム・ギョンジャさん、キム・ジナさんと、アラブ圏を代表する放送局アルジャジーラとのインタビューを仲介したことでも、国内メディアから非難を受けている。

 さらにパク・ウンジョ牧師は、人質の生命が危ぶまれるなか敏感で危険とも言える内容の説教を行い批判を浴びた。「尊いことのために抑留されたのはイエスキリストの名を高め、栄光となることが分からないのは恥ずかしいこと」「神が国のために若い青年たちをアフガンに呼び、2人に血を流させた」などと発言している。

 一方セムムル教会関係者は、教会責任論が持ち上がっていることは承知しているとしながらも、「宣教活動かボランディア活動かというのは視点の違い」と話している。教会が間もなく責任論に対する立場を発表するようだと伝えた。

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