チョン・ホンウォン国務首相
チョン・ホンウォン国務首相
旅客船「セウォル号」が韓国の南西方向にある「珍島(チンド)」付近の海上で沈没した事故で日韓が悲痛の声を挙げている。「セウォル」とは、日本語の「歳月」である。「珍島」は演歌歌手の天童よしみの名曲「珍島物語」や「奇跡が起きる島」として日本でも知られている場所だ。

 乗客のほとんどは済州(チェジュ)島への修学旅行に向かう高校生で、現在の行方不明者は200人以上である。

 まだ事故原因は究明されていないが、「人災」による大惨事の可能性が高く、旅客船(クルーズ)の管理会社だけでなく、海洋警察庁や航海士育成機関、そして最終的には政府の管理や対応にも国民の怒りが爆発している。

 事故当日、行方不明者関連の情報を待つ乗客の家族らを慰問に訪れた韓国のチョン・ホンウォン国務首相は家族らから罵声を浴びせられ、数名の家族からは水をかけられる場面もあった。
その後、朴槿恵(パク・クネ)大統領が訪れた際にも家族らの怒りは収まらず、現場は騒然とした雰囲気の中、大統領を罵る声が渦巻いていた。

 また、テレビのニュース番組の生中継で事故現場の様子を伝える女性リポーターの後ろから、行方不明者の家族と思われる男性の怒鳴り声や罵声が混入されたこともメディアを賑わせている。

 このように、現場付近は修羅場に化しており、日本のネット上には「管理能力不足」や「民度の低さ」として皮肉るコメントも寄せられている。

 しかし、「人間の死」など、「悲しみ」に対する日韓両国民の違いを理解すれば、家族らの態度も理解できるはず。あるいは、事件や事故の前で怒り狂いながら泣き崩れるシーンの多い韓国ドラマを見慣れている人ならこの辺の文化の違いは気づいているはずだ。

 韓国人が日本人より短気で喜怒哀楽の表現がずっと激しいことはよく知られているが、それは今回のような「極端な悲しみ」の前でも言えることだ。

 韓国のお葬式では「アイゴー、アイゴー」などと言った掛け声を大声で発しながら悲しみの感情を爆発させることはよくある光景だが、日本は悲しみを堪えながら慎むことが礼儀とされている。

 同じ辛さでも韓国のコチュジャン(口内が熱くなり体外に発散される辛さ)と日本のワサビ(鼻に凝縮され体内に飲み込まれる辛さ)が違うように、同じ「悲しみ」の前でも両国民のリアクションは正反対になることがある。

 また、韓国では葬式の際に家族らが棺を墓場まで運ぶのに使う「喪輿」(サンヨ)の文化が、日本では「神輿」文化であり、両国のこの文化は死や神との共感の象徴であるとの主張もある。なお、日韓の歴史学者の間でも祭りでの掛け声である「ワッショイワッショイ」の語源は韓国語だと主張する人もいる。

 命をかけて海を渡ってきた古代朝鮮半島からの渡来人たちによって日本に持ち込まれた風習は数多くあるが、中には彼らの渡航中の不安や絶望的な気持ちが列島上陸成功後に「喜び」となって大変貌を遂げたものも多い。

 一方、両国民の気質においても根本的に異なるところがいくつか存在する。

 「韓国人は感情的、日本人は理性的」という言葉は良く使われるが、学校教育の基本方針から異なっているので、ある意味自然な結果なのかもしれない。

 韓国の道徳教育では、儒教思想の重要な徳目の1つである「孝」が別の徳目の「忠」よりも優先されてきたので、韓国人の中にはそこから生まれる「情」に左右される人が多い。
情熱的で細かいことを気にせず、キャパシティの広い対応力などはそのメリットだが、逆に他人に迷惑をかけても身内さえ助かれば良しとする傾向はその歪みとも言える。

 そして実は、朝鮮半島との交流が盛んだった江戸時代の日本も、儒教思想の影響を強く受けてはいる。しかし、韓国と違って「孝」よりも「忠」が大事だと考えられるようになった。

 「忠」は、君臣間において重要とされる徳目で、その後の「武士道」に影響を与える事になる。武士道でいう「上を敬い、下を導く」といった上下関係の根幹を成す倫理観として日本人のDNAに定着したのだ。
会社(昔の主君)に尽くしながら、「努力」と「忍耐」を続けることが今の日本の最大の美徳とされている。

 さらに、明治維新による文明開化で天皇を頂点とする新しい倫理観が生まれ、朝鮮半島経由で持たされた伝統道徳は、やがて日本独自の倫理観に進化したと考えられる。

 こうした思想的な背景から、「社会性」や「協調性」が必要不可欠となり、「感情を抑制し論理的に考える」、「他人を思いやる」、「他人に迷惑をかけない」と言った、現代日本人の気質が生まれたのかもしれない。

 同じ儒教から枝分かれした韓国の「孝」と、日本の「忠」には相容れない性質があるため、その国民性にも似たようで違う性格が存在するのではないだろうか。

 今回の韓国旅客船沈没事故で、日韓両国民の災難に対する姿勢を改めて考えさせられた。何より大切なのは、3年前の3.11東日本大震災の時、韓国の大衆が見せてくれた国境を超えた友情や人間愛を思い出したことである。そこには、歴史問題や領土問題よりも遥かに高い価値を持つ「個人の幸せ」と「人類共栄」の鍵があるからだ。

 亡くなった方々の冥福を祈る。そして、天童よしみの「珍島物語」のとおり、「家族の出会い」があることを祈る。



珍島物語・神秘の海がわれる。
珍島物語・神秘の海がわれる。




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