SBS「主君の太陽」
SBS「主君の太陽」
過去のドラマを見てみると、主人公は特別な能力をもっていなくても、諦めることを知らない性格や人を一度に引きつける眼差しをもっているだけで十分だった。能力があっても、ライバルを上回る水準がほとんどだったのだ。

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 しかし、最近のドラマでは、これだけでは不十分。霊が見えたり、人の心を読み解いたり、一度目にした物を絶対に忘れなかったり…。そんな特別な能力が必要なのだ。

 普通の人々とはかけ離れた能力の所有者たちが、最近のドラマでは前面に出ている。

 以前は、超能力がフュージョン時代劇やファンタジードラマの占有物とされていたならば、いまはジャンルを選ばない点も特徴的だ。

 ■”特別な”主人公たち
 放送を控えているtvNドラマ「Who are you?」とSBS「主君の太陽」は、両作品とも魂を見通す能力をもったヒロインが登場する。
 「Who are you?」の主人公ヤン・シオン(ソ・イヒョン)は6年間こん睡状態に陥り、その後目を覚ますと魂が見えるという力をもっていた。

 一方、「主君の太陽」の主人公テ・ゴンシル(コン・ヒョンジン)もやはり、事故で植物人間となり、その後目覚めてから霊を見る能力をもつことになる。2人の主人公が、霊たちが抱える過去の悲しいエピソードを解決し、助けるという設定も似ているようだ。

 2作品の制作会社は「キャラクターは似ているが、展開と表現方法に差がある」と説明した。

 2つのドラマはホラーの要素をもっているが「Who are you?」はシオンの職業が警察官であることから、魂の悲しい過去を解く過程を緊張感いっぱいに描く計画だ。また、「主君の太陽」はテ・ゴンシルが傲慢な社長チュ・ジュンウォン(ソ・ジソブ)の女性秘書になることで、2人の間のおもしろい関係が繰り広げられ、これをコミカルに描く予定だ。

 tvN関係者は「『Who are you?』は担当プロデューサーが人気米国ドラマ『ゴースト~天国からのささやき』の韓国版を作ろうと考え、1年間企画を続けてきた作品」とし「サマーシーズンを目的とした作品であるため、設定が重なっているようだ」と語った。

 現在放映中のSBS「あなたの声が聞こえる」のスハ(イ・ジョンソク)も他人の心の声が聞こえるという能力をもつ。幼い頃から心を読む能力をもっていた彼は、国選弁護士ヘソン(イ・ボヨン)の手助けをしながら、事件を解く核心的な役割となる。

 来月5日から放送がスタートするKBS「グッドドクター」にも、超能力ではないが平凡とはいえない能力をもった人物が登場する。

 主人公パク・シオン(チュウォン)は”サヴァン症候群(savant syndrome)”で自閉傾向のある発達障害の青年だ。”サヴァン症候群”というのは、自閉症や知的障害をもった人々がごく特定の分野に限って、優れた能力を発揮することをいう。映画「レインマン」でダスティン・ホフマンが演じた役柄が代表的だ。

 「グッドドクター」のシオンは、医学知識を習得する能力に長けているが、社会性や精神年齢は10歳のまま。ドラマは、パク・シオンが世間の偏見を克服し、小児科の専門医として成長していく過程を描く。

 ■保護本能を刺激する”スーパーマン”、劇的ロジックが重要
 これらキャラクターのまた違った共通点は、彼らが保護本能を必要とする存在だという点。特別な能力をもつことによって、苦しい状況に陥ることが多いのだ。

 「あなたの声が聞こえる」のスハは、心を読む能力のせいで孤独な人生を生きてきた。他人の心が読めてしまう彼の能力は、時に恋愛の障害にもなる。彼が記憶と能力を失えば、ヘソンの心を開くことができた、という点は特別な能力が人生の”障害物”だったということを意味する。「Who are you?」のヤン・シオンもやはり、魂を見る能力をもったことで、それまでは不必要だった人生へと飛び込むことになる。

 「グッドドクター」のパク・シオンは、一人で道を渡ることさえ躊躇(ちゅうちょ)する人物。しかし、使命感の強い小児科専任のチャ・ユンソ(ムン・チェウォン)の助けで、徐々に世界へ目を開いていく。

 ある地上波ドラマのプロデューサーは「能力は秀でているが、誰かの助けを必要としてるキャラクターは、超能力がファンタジージャンルを超えて、現実的な要素と融合する過程で出てくる設定」とし「何でも解決する”スーパーマン”的なキャラクターは、一般の人々の共感を得るのに限界がある」と語った。

 ”特別な主人公”の登場には、米国ドラマの影響でドラマを見る視聴者の趣向が多様化している点も関係しているという。

 ドラマ評論家のユン・ソクジン忠南大学教授は「既存のドラマが日常的な映像芸術であることから、現実性に対する基準が厳格だった。しかし、最近は視聴者がドラマと現実を分離して考えるようになった」とし「ドラマ自体を楽しむ人々が増えたことで、超能力をもっているという設定であっても劇的ロジックを身に付ければ(ドラマへの)没入に対して邪魔にはならない」と分析した。

 ストーリーの制約を飛び越えることができるという点も、魅力的に考慮される。劇実的な蓋然性を理由にこれまではできなかった話も、いまはチャレンジできる。

 「あなたの声が聞こえる」で、ヘソンは明確な証拠がない状況でもスハのおかげで真犯人を見分けることができ、「Who are you?」でシオンは死んだ恋人の魂に会うことができるのだ。

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