デマに苦しんだ末、釈明記者会見を開いた歌手のナ・フナ
デマに苦しんだ末、釈明記者会見を開いた歌手のナ・フナ
「人気を博し活発な活動をしていたが、根も葉もないうわさを流され悔しいと、しばらく芸能活動を中断しています」――。

チェ・ジンシル の最新ニュースまとめ

 デマに苦しんでいる、ある有名歌手の弁護人は28日、匿名を条件に「当事者は乗り越えようとしたが、家族までが苦しめられ、耐え難い様子だった」と伝えた。

 あふれる才能とカリスマを持ち、大衆の前では常に堂々としている芸能人も、悪質なデマの前では無力となる。
 一度つくられたデマは、インターネットや短文投稿サイト「ツイッター」などを通じ、瞬く間に広がる。根拠がないとの証拠を提示しても、人々の脳裏に焼きついたデマのイメージを正すことはたやすくない。一部の芸能人は、デマによる悪質な書き込みや周囲の冷ややかな視線に耐えられず、「極端な選択」をしたりもする。

 2008年10月に自ら命を絶ち、韓国社会に衝撃を与えた人気女優チェ・ジンシルの自殺の原因は、「金貸し説」の悪質なデマだった。
 チェ・ジンシルから多額の金を借りた俳優のアン・ジェファンが、返済の催促に苦しめられ自殺したとの内容。このデマはアン・ジェファンが自殺した後に、「チラシ」と呼ばれる証券街の情報誌から発信され、インターネットのメッセンジャーなどを通じ、急速に広まった。
 当時、チェ・ジンシルはデマや悪質な書き込みに大きな衝撃を受け、気苦労の末、極端な選択をしたと、知人らは証言した。

 同年1月には歌手のナ・フナがさまざまなデマに苦しんだ末、釈明の記者会見を開いた。闘病説、日本の暴力団関連説、女優とのスキャンダルなどのデマについて1時間にわたり、一つ一つ事実ではないことを説明した。

 昨年5月には、歌手ク・ジュンヨプが根拠のない「麻薬服用説」のため、捜査機関から7年間にわたり3回の調査を受けたと告白。家族と人権を守りたいと悔しさを吐露した。先月は俳優のヨン・ジョンフン、ハン・ガイン夫妻が突然「離婚説」に巻き込まれたりもした。

 人気芸能人は多くの人の関心の対象となり、彼らの私生活まで一挙手一投足が好事家の話題となる。
 一部の中高生は、より多くの情報を求め、好きな芸能人の通う美容室、食堂や宿所などを追っかけるほど病的に執着したりもする。

 2005年には、ある広告企画会社が芸能界関係者の話を基に有名芸能人に関する私生活情報をまとめた文書「芸能人X-ファイル」が流出し、社会的に波紋が広がったことがある。
 リストに名前の挙がった芸能人は「根拠のない話」と悔しさを訴えたが、そんななかでも多くの人はさまざまなルートで文書を手に入れようと血眼になっていた。当時、政府は悪質なデマの震源地とされた「チラシ」を大々的に取り締まるなど努力を傾けたが、その後も芸能人の未確認情報を盛り込んだ第2弾、第3弾の文書が登場し、多くの人が目を通している。

 ある30代の会社員は、「うわさを聞いて、内容が気になり友人から文書を手に入れた。当時、友人らは文書の内容が事実だと信じる雰囲気だった」と話した。
 一般的にデマに初めて接すると、「事実ではない可能性もある」と思う一方で、「火のないところに煙は立たぬ」という見方も同時に生じる。うわさはほとんど根拠のないものだが、たまに事実の場合もあり、すべてデマと見るのは難しい。

 ある20代のOLは、「デマだと思ったことが、後に事実だったと明かされる場合もあり、無茶な話も『もしかしたら』という思いで耳を傾けてしまう」と話した。

 実際、ことし5月に結婚したチャン・ドンゴンコ・ソヨン夫妻の場合、昨年証券街の情報誌を通じ初めて熱愛説が浮上し、事実と確認されたケースだ。
 うわさの大半は、スター個人の異性関係や恋愛話、金銭関係など極めて私的な領域に含まれたものが多く、すべて釈明するにも限界がある。ある女性芸能人のマネジャーは、デマと関連し真実を説明しても信じない場合が多く、対応しないケースが多いと話した。

 ソウル峨山病院のホン・ジンピョ教授(精神科)は、多くの芸能人は毅然(きぜん)としているように見えるが、情緒的に敏感で感情の起伏が激しい場合が多いと指摘する。そううつ病にぜい弱なグループに属し、ストレスにも強くないと診断した。また、芸能人も一般人と同じ人間で、人前に出なければならない職業的な苦もあり、こうした面を理解すべきだと付け加えた。

 ある芸能界関係者は、ネット上で匿名性の陰に隠れ、デマを流す人がいるが、自分の家族に対してもそうできるかを一度考えてほしいと強調。一部のネットユーザーらはデマの真実をめぐる攻防を、まるでゲームのように楽しんでいるようだが、当事者はもちろん、その家族にまで苦痛を与えていると話した。また、一部メディアも事実関係の確認をせずに、すぐにうわさを記事にし、スポーツ中継のように報じているが、デマを拡大し新しく生み出す報道の慣行はなくなるべきだと指摘した。

 ソウル大学の林玄鎮(イム・ヒョンジン)教授(社会学科)は、根拠のないうわさは善良な人も悪人にしてしまう可能性があるだけに、一日も早く最小限の法的保護装置を講じるべきだと強調した。

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