岸田文雄首相は所信表明演説で北朝鮮による拉致問題について、「拉致問題は最重要課題。全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現すべく、全力で取り組む」とした上で、「私自身、条件を付けずにキム・ジョンウン(金正恩)総書記と直接向き合う決意だ」と述べた。

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北朝鮮の外務省は、ホームページに日本研究所のリ・ビョンドク研究員名義の論評を掲載。拉致問題について「既に全て解決され、完全に終わった問題だ」と主張した。

北朝鮮の外務省はこの日本研究所の研究員名義でしばしば日本に向けた談話を発表している。

同研究所の存在が初めて確認されたのは2016年12月のこと。在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の機関紙「朝鮮新報」が研究所の運営について報じた。当時の報道によると、運営には北朝鮮内の社会科学の専門家や出版、報道機関などの関係者が参画。日本の政治、経済、軍事、外交などに関する研究を進め、発表しているという。

今回、名前が出てきたリ・ビョンドク研究員は2000年代の日朝首脳会談に関わったベテラン外交官だ。日朝首脳会談は2002年と2004年の2回、小泉純一郎首相(当時)とキム・ジョンイル(金正日)総書記(当時)との間で行われた。

2002年の会談でキム総書記は北朝鮮が日本人を拉致した事実を認め謝罪。同年10月、拉致被害者5人が帰国し、家族との再会を果たした。2004年の会談で、北朝鮮側は2家族計5人の帰国に同意。安否不明の拉致被害者について、北朝鮮側が真相究明に向けた調査を再開することを約束した。

その後、日朝実務者協議や日朝政府間協議などが行われてきたが、大きな進展はない。

菅義偉前首相は拉致問題の解決を「最重要課題」と位置付けてきたが、目立った成果を上げられなかった。北朝鮮外務省は昨年9月、菅前首相が就任した際にも日本研究所研究員名義で「拉致問題はわれわれの誠意と努力で既に完全無欠に解決された」と今回の岸田首相就任を受けた論評と同様の主張を展開していた。

岸田首相は6日、拉致被害者家族らと電話で話したことを明らかにした。首相は拉致被害者家族会代表の飯塚繁雄さんらに電話し、「家族会の皆さんの思いを胸に、一日も早い全ての拉致被害者帰国に向けて全力で取り組みたい」と話した。

1977年の拉致被害者・横田めぐみさんの母親の早紀江さんは2日、「拉致問題が国の最重要課題と言うならば、新しい総理大臣には解決に向けて日朝首脳会談の実現をお願いしたい」と述べた。

2002年の日朝首脳会談から更に19年が経った。拉致問題に対する岸田新首相の本気度が試されている。日本人の拉致問題に関しては、韓国の情報機関が大きな情報を掴んでいたとされる。1987年、大韓航空機爆破テロの実行犯で、韓国で捜査を受けた元死刑囚キム・ヒョンヒ(金賢姫)の存在は大きかった。

彼女はテロ事件の直後、バーレーンで逮捕され、日本の協力で韓国に押送された。彼女の捜査過程で、北朝鮮の工作員に日本語を教えていた横田めぐみさんの1984年の行跡が分かった。

一方、1977年に横田めぐみさんを拉致した実行犯の1人であり北朝鮮の国際工作員シン・クァンス(辛光洙)が1985年、日本公安の情報により韓国ソウルで逮捕されていた。シン工作員は韓国で死刑判決を受けた。

14年間にわたり服役していたシン工作員は、1999年、南北融和の雰囲気の中で当時のキム・デジュン(金大中)大統領の恩赦で釈放された。2000年には「非転向長期囚」として北朝鮮に送還されたシン工作員は北朝鮮で「英雄」とされていた。

「思想犯」でもなく、「人権犯罪」を起こしたシン工作員が韓国で「非転向長期囚」扱いをされることがそもそも納得のいくことではないが、シン工作員の逮捕やキム元死刑囚の押送に協力した日本とは対照的に、韓国側は日本側の捜査に積極的ではなかった。

横田めぐみさんが自殺したと北朝鮮が主張する時点は1994年。北朝鮮が2004年に日本に送った遺骨のDNAは、横田めぐみさんのものではなかった。シン工作員が逮捕されたのが1985年2月で、キム元死刑囚が逮捕されたのが1987年12月だった。日韓の情報交流や協力体制が綿密であったならば、横田めぐみさんの帰国は1980年代に既に可能だったかもしれない。

韓国情報機関は、1995年から1997年の間、横田めぐみさんが金正日の子どもらに日本語を教えたと把握している。北朝鮮の主張とは違って、横田めぐみさんが生きていて、今の北朝鮮の最高権力者キム・ジョンウン氏やキム・ヨジョン(金与正)氏の日本語先生を務めた可能性もあるのだ。

これからでも韓国の文政権が日本との約束を守り、日韓関係が回復することを期待したい。「GSOMIA(日韓秘密軍事情報保護協定)」などの軍事情報の交流を含め、韓国と日本の情報交流が活発になることは両国の安全保障や日本人拉致問題の解決にも大きな力となるはずだ。

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