「カムイ外伝」の崔洋一監督=(聯合ニュース)
「カムイ外伝」の崔洋一監督=(聯合ニュース)
在日韓国人2世の映画監督、崔洋一氏が9日、松山ケンイチ主演作「カムイ外伝」が17日に韓国で封切られるのに合わせ、プロモーションのため来韓した。訪韓は2008年の釜山国際映画祭以来、3年ぶりだ。

 また、ソウル・梨花女子大学構内の映画館「アートハウスモモ」で10日から16日まで、韓日映画フェスティバルが行われ、その一環として、「カムイ外伝」を含め7作品を上映する特別展も開催される。崔監督はこれにも出席する予定だ。同映画館で9日にに話を聞いた。

 大島渚監督の助監督を経て、1983年に「十階のモスキート」でスクリーンデビューした崔監督は、「月はどっちに出ている」(1993年)、「マークスの山」(1995年)、「血と骨」(2004年)などを手がけ、日本映画を代表する存在となった。
 これまで主に、社会を鋭く見据えた作品を制作してきた崔監督。「カムイ外伝」は白戸三平の漫画が原作の忍者映画だが、負担に感じなかったかと尋ねると、「まったくそんなことはない。新しいチャレンジなので楽しかった」との答えが返ってきた。

 主人公カムイ(松山ケンイチ)は絶壁を上り下りし、分身の術など不思議な術を使う。コンピューター・グラフィックス(CG)を多用し、ワイヤーアクションのシーンもある。これまでの作品でもCGはよく使ったが、ここまで思い切り使ったのはこれが初めてだという。一方で、もっとCGに時間と手間をかけたかったとも話した。
 映画俳優で監督のクリント・イーストウッドも80歳を過ぎてから、映画「ヒア アフター」で予想外に大胆なCGを見せた。「新しい挑戦はとても大切なもの。僕も新しい映画に絶えず挑戦していく」と話す。

 「カムイ外伝」は商業アクション映画だが、社会の底辺を描くという点では、これまでの作品と通じるものがある。カムイはただ生きるために刀を取る。周りの人間を守ってやることもできず、ヒーローらしい気概も見えない。
 「身分が低かった忍者は、暴力を通じて人間扱いを受けることができた集団でした。カムイは、人間らしく生きるため暴力を使うしかない人間。暴力のむなしさを知りながら、生きるためには暴力を使うしかない。そんな矛盾した部分が、ヒーローのようでいてヒーローでない忍者を作ったんです」。
 忍者が登場するアクション作品ながら、冷たいものを感じさせる映画だ。観客の心を温かくするような作品を撮る考えはないかと尋ねてみた。

 「若かったころ、将来どんな監督になりたいかという質問に、『ローマの休日』や人間のペーソスを描くビリー・ワイルダー監督の作品のような映画を撮りたいと答えたことがあります。今振り返ってみると、全部うそでした。温かい映画を見るのは好きですよ。でも、見終わって誰もが幸せになれる映画を果たして自分が撮れるだろうかと自問すれば、正直、自信はないですね」。
 韓国で自分の作品を紹介する特別展が開かれることについては、「新しいものを考えよという激励だと受け止めています」と話した。「新作にもっと力を入れないと」。

 日本映画監督協会の理事長という顔も持つ。「監督は映画の著作権者である」と訴える著作権確保運動を展開するとともに、表現の自由を広げていくことにも力を入れている。
 「日本映画の命綱は多様性です。監督協会に600人の会員がいるということは、600の思想があるということ。カラーの異なるジャンルと表現は、映画を豊かにします。日本映画が多様性を失えば、質、量、すべての面で力を失うでしょう」。

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