映画監督で俳優のヤン・イクチュン=2日、ソウル(聯合ニュース)
映画監督で俳優のヤン・イクチュン=2日、ソウル(聯合ニュース)
封切りを控えるイ・ハ監督作品『家を出た男たち(原題)』に出演した、監督兼俳優のヤン・イクチュンに、ソウル市内のカフェで会った。写真撮影のため席を移してほしいと求めると、「インタビューしているところを撮るのではだめですか?どうせ服も同じだし」と照れながら答えた。

ヤン・イクチュン の最新ニュースまとめ

 言われてみれば、ヤン・イクチュンが着ていたシャツとジャケットは1年前、監督作品『息もできない』公開時のインタビュー記事で見たようだった。すると、「あのときと同じものですよ。服を買う余裕がなくて」と。昨年下半期まで、全財産が30万ウォン(約2万5000円)。この服も美術監督に譲ってもらったものだと明かした。

 チ・ジニら人気俳優と肩を並べ映画に出演しながら、俳優のように衣装を何着も準備するどころか、1年前のインタビューの服装そのままでやって来た彼は、俳優というより、近所の青年のような印象だ。

 『家を出た男たち』では、とぼけた演技を自然に披露したヤン・イクチュン。演出も演技も、自由な雰囲気の中でこそ表現できるタイプだと自らを評価した。『息もできない』の撮影時も、俳優らにリハーサルをさせなかったという。イ監督も『家を出た男たち』の撮影では、自由に表現する余地を残してくれたと語った。

 せりふを完璧に覚えず撮影現場に向かい、その日のシーンの状況と感情が理解できれば、余白部分が自然に別の言葉に置き換えられていくのだという。演じたのは、チ・ジニと長い付き合いの友人役。日常でもチ・ジニと親しく、そうした部分が自然とせりふにもにじみ出たようだと振り返った。

 ヤク・イクチュンは、2002年からこれまで短編を含む22本の映画に出演し、4本を演出した。『私たちの幸せな時間』など商業映画にも出演したが、登場したのはわずか2~3シーンだ。今回の作品では、試写を楽しくみたが、「最初の5分くらいは自分の顔が映るのが恥ずかしかった」という。

 個性ある俳優として跳躍するチャンスを迎えたが、ヤク・イクチュンはまだ、自身の名を知らしめた独立映画『息もできない』とともにある。1月にはプロモーションのため、日本を訪れた。日本だけではなく英国、フランスでも上映され、カナダでも公開が予定されている。ヤン・イクチュンが脚本、監督、主演を努めた同作品は、ロッテルダム国際映画祭、ドービル・アジア映画祭など、海外の映画祭で23の賞を受賞した。観客13万人を動員し、スタッフにギャラを払い、投資家に収益金も配分した。ヤン・イクチュン自身は、借金を返済し、家も取り戻した。

 ドキュメンタリーを除き、独立映画としては最も多い観客を集めた『息もできない』だが、ヤク・イクチュンは「違法ダウンロードが多かった」と、ため息を漏らした。映画館で30万人が見てくれたなら、スタッフ40人に今回の倍はギャラが払えただろうと、独立映画制作の厳しさを吐露した。

 「結局、自分自身では制作できない環境なんです。金を借りて家を明け渡したり、商業システムのなかで商業映画を作らなきゃならない。金が稼ぎたいわけではないが、収益が入ってこなければ次の創造ができない。飯も食べて、家賃分くらい稼がなければ」。

 監督と俳優を行き来するヤン・イクチュンにとって、映画とは何か?そう問うと、「もどかしさを排出できる通路が必要だった」と答えた。自分に合わない役では排出ができないため、自然に演出に目を向けたのだという。

 昨年は『息もできない』で最高の1年を送り、ことしは『家を出た男たち』で顔を知ってもらうチャンスをつかんだ。ただ、ヤン・イクチュンはこうしたムードに巻き込まれたくないと話す。

 「時がくれば、映画を作り、演技をすればいい。今はあまり刺激がないが、やりたいという欲がわいてくれば取りかかる。商業映画、非商業映画と区分するのは無意味。可能性はすべて開いておいています」。



Copyright 2010(C)YONHAPNEWS. All rights reserved. 0