左から俳優ソン・ガンホ、ポン・ジュノ監督
左から俳優ソン・ガンホ、ポン・ジュノ監督
第72回カンヌ国際映画祭で、最高賞のパルムドールを受賞した韓国映画「パラサイト 半地下の家族」。12月27日からの先行公開(東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田の2館限定)を翌日に控えた26日(木)、都内にてポン・ジュノ監督と主演俳優ソン・ガンホの記者会見が行われた。

韓国映画「パラサイト 半地下の家族」のキャスト、公開日、あらすじ

 ポン・ジュノ監督とソン・ガンホが揃って来日するのは、「グエムル 漢江の怪物」以来、実に13年ぶり。しかも、ゴールデングローブ賞3部門ノミネートを筆頭に、オスカー前哨戦各賞で作品賞はじめ怒涛の受賞、アカデミー賞受賞も有力視されているなど、世界的に大ヒットを記録している作品を引っさげての来日とあり、多くの報道陣が詰め掛け、注目度の高さを伺わせた。

 大きな拍手で迎えられ、登壇した2人。ポン・ジュノ監督は「すでに多くの国で公開されていますが、やっと日本で『パラサイト』についてお話ができることになり、うれしいです」、ソン・ガンホは「3年ぶりに皆さんとお会いできてうれしいです。特に、ポン監督と一緒にごあいさつできることを本当にうれしく思っています」とにこやかにあいさつし、質疑応答がスタートした。

 これまで「殺人の追憶」(03)、「グエムル 漢江の怪物」(06)、「スノーピアサー」(13)、そして最新作「パラサイト 半地下の家族」で4度目のタッグを組んだ2人。13年ぶりに揃って来日した感想を聞かれ、ポン・ジュノ監督が「13年ぶりにガンホ先輩と一緒に来られたので、意味深く、有意義な時間になったなと思っています」と言うと、ソン・ガンホは「他の監督とも来日し、ごあいさつをした作品がたくさんありますが、皆さんはどうもポン・ジュノ監督の作品がお好きなようで、監督の作品でないと愛されないので(笑)。とにかく、ついに今回、ポン・ジュノ監督と来日できて、愛される準備ができました」とユーモラスに話し、場を和やかにした。

 世界中で高い評価を受け、話題沸騰の本作だが、そんな世界の熱狂ぶりを「全く予想していなかった」というポン・ジュノ監督。「楽しい騒動、楽しいアクシデントとして受け止めています。日本でもそのような騒動が起きてくれたらうれしいです」とし、「ガンホ先輩だけでなく、全キャストが素晴らしいアンサンブルを見せてくれた作品なので、俳優の魅力によるところが大きいと思います。俳優が表現している感情の言語、人間の感情は万国共通の言語だと思うので、その感情が表現されたことによって、同時多発的に良い反応が起きているのではないかと思います」と分析した。

 ソン・ガンホは「この物語は韓国に限らず、地球上の全ての人の物語だと思います。それをポン・ジュノ監督が温かい視線で描いたので、多くの共感を得られたのではないかと思います」とし、「先ほど俳優の手柄だと言ってくださいましたが、ポン・ジュノ監督の約20年にわたる努力、作家としての野心がこの作品で実を結んだと思います。そう考えると、ポン・ジュノ監督が一人で叶えたものではないかと思います」と監督を称賛した。

 また、すでに本作を見た観客から「ネタバレ禁止」運動が起こっているほど、先の読めない展開にハラハラさせられるが、物語は大学生の息子が、裕福な家に家庭教師に行くところからスタートする。実は、ポン・ジュノ監督も大学時代、家庭教師をしたことがあり、本作はその経験から着想を得た作品だという。「裕福な家庭の中学生の男の子を教えたことがあり、家の様子を隅々まで見る機会がありました。その仕事を紹介してくれたのが、当時の彼女でした。その彼女というのが、今の妻です。なので、なんとなく映画と似通った点があるのではないかという気がしています。でも、幸いにも2か月でクビになったので、この映画の展開のように、おぞましい事件はなかったですが、シナリオを書いていたときは、当時の記憶が蘇ってきました」と明かした。

 ちなみに、ソン・ガンホがこの作品の構想を聞いたのは4年前だったという。「貧しい家族と裕福な家族が出てくる話だと聞いたので、僕は当然、裕福なパク社長(イ・ソンギュン)の役だと思いました。年齢も年齢だし、この間、品位も高まってきたので。まさか半地下に連れて行かれるとは想像もしていませんでした(笑)」と本作では貧しい一家の大黒柱を演じたソン・ガンホ。「すみません」と日本語で苦笑いするポン・ジュノ監督に、「次は大雨が降るとか、階段が出てくる話には出演したくないです」とキッパリ話し、会場を笑わせた。

 息の合った掛け合いが楽しい2人だが、根底にはお互いへの絶大な信頼も。本作は、まずソン・ガンホと息子役のチェ・ウシクの2人にオファーをし、シナリオを書き始めたというポン・ジュノ監督。「俳優の姿や表情、話し方が分かった状態でシナリオを書いていると、その人物を描写するのにとても役立ちます。なので、ガンホ先輩には複雑な話はせず、この映画は裕福な家族と貧しい家族が出る、ヘンな映画だということだけを話し、チェ・ウシクには、“いま痩せているけど、太る計画はないよね?この体系を維持してほしい”とだけ伝えてスタートしました」と明かした。

 ソン・ガンホは「ポン・ジュノ監督とはかれこれ20年ぐらい作品を撮っています。監督のファンとして、同志として、同僚として、一緒に作品を作ってきました。初めてポン・ジュノ監督の作品に出演したのは『殺人の追憶』でしたが、監督のデビュー作『ほえる犬は噛まない』を見たとき、非凡で独特で、作家としても素晴らしい芸術性を持っている芸術家だと思い、20年間ご一緒してきました。だから、いつも期待を寄せています。同僚として、同志として、新しいポン・ジュノ監督の世界を見たい、深まっていく作家としての野心を見たい、と俳優として心待ちにしていました。でも、いまは違います。雨が降ったり、半地下が出てきたら、考え方が変わるかもしれません(笑)」と念押しすると、ポン・ジュノ監督は「来年、シナリオをお渡ししようと思っているんですが、そのタイトルが『梅雨時の男』です」と応戦。思わず、ソン・ガンホは「ありがとうございます」と感謝し、「シナリオを受け取ったら、考え方が変わるかもしれません」と返すなど、絶妙なコンビネーションを見せ、会場を爆笑させた。

 改めてお互いのすごいと思ったところを聞かれると、ソン・ガンホは「韓国で『パラサイト』の記者会見をしたとき、この作品はポン・ジュノ監督の進化の形だと話しました。この20年間、監督として、作家として、この社会を鋭い視線で見詰めています。時には、その視線が温かかったり、冷淡であったりするんですが、いずれにしてもそういう状況を抱えて生きていかなければいけないという叫びを感じました。そして、監督の世界がどんどん深まっていき、拡張していくという状況を見守って20年になります。『パラサイト』という作品は、ポン・ジュノ監督の芸術家としての一つの到達点であり、一つ彼が成就した地点に達したと思いました。だから、次にポン・ジュノ監督の進化の終わりはどこなのだろうか、『パラサイト』の次に来るリアリズムの発展はどんなものになるのだろうか、それを考えると、怖くもあり、楽しみでもあります。ドキドキさせてくれる唯一の監督だと感じています」と絶賛した。

 それを受け、ポン・ジュノ監督は「ソン・ガンホという俳優の演技をこの世界で一番早く、モニターやカメラを通して、目撃できる立場にいます。予想だにしていなかった細かい演技や、動物のような本能的な生々しい演技が目の前で繰り広げられたとき、その瞬間を真っ先に目撃できるので、本当にゾクゾクさせられます」とし、「『パラサイト』のクライマックスで議論にならざるを得ないシーンがありますが、そのシーンのシナリオを書いているとき、観客を説得させられるのか、観客は受け入れてくれるのか、ということを考え、悩み、シナリオを書く手が止まる瞬間もありました。でも、このシーンで演技をするのはガンホ先輩だと考えると、安心感がありました。ソン・ガンホなら観客を説得できるだろうという信頼があったからこそ、シナリオを書き進めていくことができました。なので、シナリオを描いている段階から、恐れや躊躇を乗り越えさせてくれる、この俳優なら観客を説得できるという信頼を与えてくれる、ということに気付き、自分にとって、そういう存在である俳優だと改めて気付かされました」と全幅の信頼を寄せた。

 現場でのポン・ジュノ監督の演出は、実際にこういう演技をしてほしいと手本を見せてくれるので、やりやすいと話すソン・ガンホ。「ユーモアにあふれていて、持っている雰囲気が他の監督さんとは違うと思います。だから、多くの俳優がポン・ジュノ監督と一緒に仕事をしたがるのではないでしょうか。現場で俳優、スタッフと一緒に作品を作り上げていく姿勢というのが、感動を覚えます。他にも素晴らしい監督はたくさんいらっしゃいますが、作品に臨む姿勢が特別な監督だと多くの方に知られていると思います」とし、「ポン・ジュノ監督は俳優に対して、できない注文はしません。でも、なぜか太ってほしいということを望んでいらっしゃるようです。本人が太っているせいでしょうか?普通の監督だったら、俳優に痩せてほしいとか、シャープに見せてほしいという注文をしますが、ポン・ジュノ監督は俳優に太ることを望まれることが多いです。本人がどんどん太っていくからかもしれませんが、そこが理解できません(笑)。だから、ポン・ジュノ監督の一番いいところだと思いますが、痩せろと言わない、唯一の監督だと思います」と監督に向け、拍手を送った。

 最後に日本の観客に向け、ソン・ガンホは「日本の観客の皆さんがどう感じるのか気になるし、ドキドキしています。まさに、万感胸に迫る思いです。この映画を深く楽しんでほしいです」と話し、ポン・ジュノ監督は「ついに日本で公開されることになり、興奮しています。映画のタイトル通り、不滅の寄生虫のように、観客の皆さんの体、頭、胸に長く留まり、永遠に寄生する映画になったらうれしいです」とメッセージを伝えた。

 すでに本作を見た多くの著名人が「とにかく見てほしい」、「最高傑作」と口を揃える「パラサイト 半地下の家族」は2020年1月10日(金)の全国公開に先駆け、12月27日(金)よりTOHOシネマズ日比谷、TOHOシネマズ梅田にて特別先行公開される。


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